プロローグ
とある家にて稀有な生まれ方をしたものがまた生まれた。
「ほら、ドラグーン。 あなたの可愛い妹よ?」
「わ、かわいい!」
エルフの女性はそう言って赤ん坊を息子に見せると息子のドラグーンは満面の笑みを浮かべていた。
彼女は彼の母親であり、赤ん坊の母でもあるようだ。
「あう~♪」
赤ん坊はにこにこ笑顔で笑っていて、ドラグーンがその小さな手にふれると握られる。
このとき、この妹を守ろうとドラグーンは決意を新たにしたとか。
「ミオーレ、娘が生まれたって、本当かい!?」
そう言って入ってきたのは第一の父のハイエルフの男性のアルフレッド。
とても背が高くて美形といえよう。
だが、ふつうのハイエルフと違い、どこか特殊な雰囲気というか血を感じる。
そう、彼はマナという精霊の一種との混血児なのである。
「おとーさん、おそーい」
「すまない。 これでも魔術転移で急いだんだけどね」
「そんなにすねないの」
ぶーたれるドラグーンの頭を優しく撫でる顔は父親の顔をしていた。
それを見て母のミオーレが窘める。
「これが僕たちの娘なんだね。 とても高い魔力をもっているみたいだね」
「そうね、あなたの血を引いているからかも」
とても感動したように言うアルフレッドにミオーレはにこにこ笑顔である。
ドラグーンは首をかしげながらそれを見ていた。
「いつかドラグーンにもわかるよ」
「うん、わかった!」
そうアルフレッドが言うとドラグーンは笑顔でうなずいた。
それは彼なりの予感がそうさせているのかもしれない。
「すまねぇ、遅くなった!」
「遅いよ、おとーさん」
竜の角と翼をもった人物が遅れて現れると近寄りながらさらにすねながら言うドラグーン。
この人はドラグーンの父親であり、赤ん坊の父でもある。
つまり、この家庭には父親が二人で母はひとりという事態なのだ。
「悪い悪い、ちいっとばかし遅れてよぉっ」
「どうせ、またフラグでも立てつつもスルーしながらここに来たんでしょ」
頭をかきながら言うハーレイにミオーレはじと目で見つめていたようだ。
ドラグーンはその会話を聞いて不思議そうに首をかしげていた。
どうやら、娘の方はハイエルフとエルフとマナと竜の血をひいているようである。
結構特殊な生まれ方といえるであろう。
「そういえば、名前はハーレイが決めたんだったよね」
「ああ、その子の名前はトゥラーシュだ。 よろしくな」
アルフレッドの問いに彼はうなずいて名前を発表し、赤ん坊の頭を優しく撫でるのであった。
「トゥラーシュ、良い名前ね」
「うん、ハーレイながらに良い名前をつけたよね」
アルフレッドとミオーレはそういうと笑顔でトゥラーシュの頬をつついていた。
トゥラーシュはくすぐったそうにしながらも笑顔で笑うのであった。