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第8話:列伝!和屋杏子!!

第7話からいきなり話が飛びますが、繋がっています。とりあえず、杏子と旦那の今昔物語り!






最初の出逢いは高校時代。最初に旦那と出逢ったときに感じた感覚はとても『変』な感覚だったことを覚えている。



「結婚しよう」




これが私、和屋杏子の人生を大きく変えた一言であった。その言葉が言われたのは、旦那である和屋宗一郎が当時、大学二年生で私は高校を卒業するかしないかに差し掛かった所の時であった。




旦那との出逢いは、別にロマンチックでも何でもないただの家庭教師と生徒の関係。私が部活に夢中になるばかりに勉強の方が全く着いていけず、高校二年生の時に留年をしそうになった為に、家庭教師として旦那がやってきたのだ。




初め、旦那はやる気のあるのかないのか分からないといった感じで私に勉強を教えていた。まぁ、その時の私もその方が楽でいいやと思っていたのだが、突然、旦那は私に聞いてきた。




「君、夢ってある?」



当時の私の反応は『何、言ってんだ、このジジイは…?』て感じ。しかし、旦那はかなり本気だったらしくしつこく私に夢があるかと聞いてきたのだ。



どうやら、当時の旦那は私がやる気のなさそうに勉強をしていたから、自分もそんな私のペースに合わせ勉強を教えていたらしいのだが、あまりにも私がつまらなさそうにしていたのが気になったらしく。私の興味を引くために、夢はあるかと聞いてきたらしいのだ。




当然、当時の私には夢などなかった。目標としては高校の空手大会で三年連続優勝を目指していたが、留年するとなると話が別になってくる。そのために私には確たる将来の夢というものがなかった。




「まっ、そうだな。あたしに好きな事をやらしてくれて、食わしていってくれる旦那でも見つけることが夢かな?」




これが、あまりにもしつこく夢について聞いてきた当時の旦那へ言った言い訳の夢である。




「なるほど。でも、そんな奇特な男性は地球のどこを探したっていないだろうね?」




「はん、どうかな?あたしは今はガサツに見えるかもしれないけど、ちゃんとすればそこそこの女に見えるのさ!だから、ちゃんとすれば、あたしを食わしていってくれる旦那なんて、すぐ見つかるさ!?」




「いつ?」




「あっ?だから、ちゃんとすれば現れるって言って」



「そうじゃなくて!いつ、君はちゃんとするんだいってこと?留年してから?空手大会で優勝してから?それとも、人生の最後でひとりぼっちになって死んでしまう時!?」




「はっ?何、言ってんのアンタ?」




「いつかする、いつかする、そんな事を言って何もかも後回しにしていたら人生は暮れてしまうよ?ちゃんとすれば、君の好きな事をさせて食べさせくれる旦那さんは現れる。でも、つまりそれは、ちゃんとしないと現れないって事だろ?勉強だってそう。いつか、いつかって後回しにしていたら物覚えの悪い年寄りになってしまう。今なんだ、するべき時は!思い立ったらとまでは言わないでも、早めにしておいて損することは少ないと思う。逆に後回しにすればするほど、人生を損することになる」






驚いた。今までやる気のない家庭教師だと思っていたら、実はその逆。この旦那は熱血教師だったのだ。




それ以来、私と旦那はよく口喧嘩をするようになる。価値観も違えば、性別も、生活の場も違う。だけど、当時の私にとってそんな口喧嘩の出来る旦那はとても安心出来る存在だった。



真面目に私の事を考えてくれて、真面目に私と正面切ってぶつかってきてくれる。気付いた時には私は旦那に恋をしていた。




いつからなのか。当時の私には分からなかった。と、いうか、まず当時の私は恋という感覚すら知らなかったのだ。最初に会った時の『変』な感覚がどんどん大きくなってきて、次第に私の心臓の全てを押し潰そうとしていた。



これは、あとから妹の七海に聞いた話なのだが、私が旦那と初めて会った時から、どうやら私は初対面の旦那に対してかなり高圧的だったようだ。これは私が思うに最初に感じた『変』な気持ちが恋という感情だということを理解できなかった当時の私が、ただただ、そんな思いをさせる旦那に噛み付いていっていたのではないか。


そして、そんな私がその『変』な思いが恋だと気付くのには、かなりの時間がかかった。そして、それが恋だと気付くきっかけを作ったのが、旦那のプロポーズの言葉であった。




成績もそれなりの物になり、ちゃんとした大学にも推薦で入れて貰えることにもなった高校三年の夏。皆が必死に受験勉強をしているなか旦那のプロポーズに私は顔を真っ赤に俯いていた。



シュワシュワシュワとセミが鳴く、暑いあの日。




「なんで?なんで、あたしにそんな事を言うの?」




「なんでって…いや、その、杏子ちゃんの事を好きになってしまったから…。いや、本当は言うべき事じゃないって分かってる。大学二年生にもなって女子高生にプロポーズなんて非常識だし、犯罪だし、変態だって事も分かってる。……でも」




「でも?」




「君と一緒にいる内に気持ちが抑えられなくなってしまってきて…。ははっ、実はさ、今だからついでに言っちゃうけど……一目惚れってやつなんだ……」


「そんな素振り、一度も見せなかった……のに?」




「いや、そんな素振りを一度でも見せたら、俺は杏子ちゃんの家庭教師をクビにされちゃうよ!?だから、一生懸命バレないように隠してた…出来れば、杏子ちゃんが成績を上げて、大学に推薦で受かるくらいになるまではって…。それで、それが出来たら、そのまま、家庭教師を止めて…」




「止めて、あたしの前から居なくなろうって!?」




「……うん」




「ふざっ、ふざけんなよ、テメェ!?止めて居なくなる?あたしに何も言わずに?そんな事したら、お前をどこまでも追っていってギッタギッタのボッコボッコの」




「いや、だから言ったじゃん。まぁ、結局、俺は君にこの気持ちを伝えずに消えることが出来なかっただけの話なんだけどね。はははっ、君に毎回毎回、偉そうなこと言って、結局俺が一番駄目な人間だった……。ゴメンね、俺の言ったこと、全部忘れて。家庭教師も君のお母さんに今日限りで終わりにしますって言ってあるんだ」




「はぁっ?何、勝手なこと言ってんだよ?あたしの事が好きなんだろ?あたしと一緒に居たいんだろ?だったら、居ればいいじゃないか?私と一緒に居ればいいじゃないかっ!?」




「それが出来たら、俺はこんなに悩まないよ…」




正直、今でもあの時の旦那の気持ちが理解出来ない。好きならば、迷わずに好き合ってしまえば良いのに…。ただ、当時の旦那はそれを良しとせず、そのまま、私の前から姿を消してしまった。




「ふざけんな。ふざっけんなよ、あの野郎!?一目惚れのくせに、ヘタレのくせに、臆病者…臆病者…臆病者ぉぉおーっ!!思い……知らせてやる。思い知らせてやるんだから、あの馬鹿に…あたしは、あたしはっ、あたしはーっ!!」



さぁーっ、その後が大変、大変。

ちゃんとした大学の推薦が決まっていた当時の私は、なんと、その大学への進路を蹴ってしまう。もちろん、母親にも頑固一徹寿司親父にも怒られる始末。しかし、当時の私には確たる将来の夢があった。だから、真っ直ぐ真っ直ぐ、夢に向かって突き進んでいく覚悟なのであった。えっ?どんな夢かって?そりゃあ、決まってるでしょ!?




「あたしの夢は、あたしの好きなようにさせてくれて、あたしを食わしていってくれる、素敵な旦那さんをゲットすること!!さしあたり、あの馬鹿のいる大学に合格することが、あたしの目標だぁあーっ!!」




うん、後半に続く!!っと(笑)



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