第5話:浮気とは…
浮気とは…
・心がうわついていること。心が落ち着かず変わりやすいこと。
・陽気で派手な気質。
・男女間の愛情が、うわついて変わりやすいこと。多情なこと。他の異性に心を移すこと。
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「浮気?お兄さんが?」
「…うん」
綺麗に掃除された部屋。フローリングの床には地味ながら高級感溢れる絨毯が敷かれている。そして、いまだ片付けられることの無い、冬特有のコタツ。綺麗に掃除された部屋であるものの、4月になったばかりだというのに和屋家には春らしい部屋模様は一切見られない。
「ま、またまた〜?お兄さんが浮気だなんて杏子お姉ぇわ〜…。だっ、だってだって、お兄さんはお姉ぇにいっつもベッタリだったじゃないですか?もう、そりゃ、ウザイくらに…」
セーラー服を着た少女はそう言いパタパタと手を振る。しかし、杏子は俯いたまま一言も話しをしようとしない。どうやら、冗談ではないようだ。
「な、なんでそう思ったですか…というか、浮気(?)してるって気付いたですの…?」
「…けぇーたい」
「けぇーたい?…携帯電話?」
「旦那のケータイを見てたら…スケジュールのとこに『アイミちゃんと、はーと』って書いてあった…」
「(アイミちゃん?何、その名前?本名?本名なのですの?かなり、そちら系の名前なんじゃ!?はっ、フーゾク!?まさか、お兄さんフーゾクに通っちゃってるです?えっ、え?お兄さんお兄さんお兄さーん!?)」
セーラー服の少女は杏子に聞こえないように小声で何やらぶつぶつと呟く。姉の旦那はかなりのオタクだ。だから、アニメやゲームの女性に現を抜かすことはあっても、まさか、現実の女性に現を抜かすことは無いと姉も自分も思っていた。
と、いうか。姉と結婚する際に自分たちの父親である頑固一徹寿司屋のヤクザ親父に初対面で殴られ、結婚の挨拶で日本刀を突き付けられ、式後で視線だけで人が殺せそうな睨み付けを喰らうという、障害を越えてまで手に入れたはずの姉を裏切るなんて……自分も含めて誰も思ってみなかったことである。
(んん〜、でも、これで分かったです。何故、いつも明るくて幸せいっぱいだったお姉ぇの家が、こんな冬越えが出来てないような位に暗くなっているのか…)
少女はコンビニで買ってきた板チョコをパリッと一口食べるとスクッと立ち上がる。
(私が…。私が明るくて幸せできらきら輝いていた杏子お姉ぇとお兄さんの結婚生活を守らなくちゃっ、です!!そうなのです、この私、柏木七海が 私の理想の夫婦であるお姉ぇ夫婦を守るですのヨ!!)
和屋家の妹・柏木七海16歳。只今、探偵見習い・修行中。