第13話:ヤバい予感?
アニメやゲームの世界を現実の世界に持ち込む者がいる。それが、少年少女ならば世間は文句を言うまい。では、それが大人ならばどうか?大人がコスプレをして憧れのヒーローになっていたとしたら世間はどう思うだろう。大人が、魔法を使えるんだと言っているならば世間はどう思うのだろうか…
「どう思う?」
「別にいいんじゃない?他人に迷惑をかけなきゃ?」
そう、たぶんそれは良くも悪くも、その人次第である。趣味を保つ人が居る一方で、犯罪に走ってしまう人もいる。要は、どうあるかが問題なのだ。
「まぁ、奥さんにコスプレ強要するのは、犯罪だよな?」
「いつから!?」
ただの変人なのか、子供のころの思い出が忘れられないだけなのか…。きっと、この時代が重なるごとに増えていくだろう。ゲームを忘れられない大人。アニメを手放せない大人。
「う~ん、俺は止められないなぁ…50になっても……」
「そこはやめとけ人として…」
「…いや、お嫁さんへのコスプレ強要の方じゃないよ!?」
「なんだ…」
「……」
本来は子供向けである筈の娯楽を手放せない大人。だが、それは問題ではないのだ。面白いものは面白い。子供向けだって、大人はむかし子供だったのだ。大人になるに連れ、そういうものが必要で無くなっていく人もいる。
でも、逆に必要になって来る人もいる。それが、現実。では、そんな世の中、彼ら、または、彼女らはどうあるべきか?
「和屋クンは、どう思うのかね?」
「ワタシは、世間の言う所の問題を起こさなければ多少の自由は良いかと思うよ、狭間クン?」
「ほう?」
つまりは、夢を忘れずに現実を忘れずに、節度ある行動を…ということ。働いて、アニメ見て、働いて、ゲームして、働いては趣味をする。コスプレしたって、成りきったって、趣味だもの。社会のルールに大きくはみ出さず、犯罪に手を出さなければ、ちょっとやそっとは自由なのだ。大人が子供の玩具で遊んじゃイケないなんて法律は無いのだから…。
「まぁ、最近は大人向けの玩具がいぱーいあるけどね…」
「狭間クン、それ言葉がなんか危ないよ」
…
…
…
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…
…
…
…
さて、どうしたものか?和屋家の旦那を尾行していた、その義妹・柏木 七海。先ほどから見ていると、何やら姉の旦那は友人と、ゲームセンターで待ち合わせをし、二人並んでアーケードゲームをしている模様。しかも、そのゲームをしながら何やら意味不明な会話を繰り広げていた。
「…あ、阿久津くん…か、解説を…」
七海は先ほどボコボコに殴って、ぐんにゃりとゲームセンターの一角でうな垂れている阿久津 当夜に今の会話の通訳を促す。
「……ぐふっ…」
しかし、もはや風前の灯の阿久津は痛々しい擬音と共に落ちていった。
「あぁ、もう。役立たずです」
更なる問答無用の無能のレッテル。阿久津の口から再び痛々しい擬音が放たれる。
「むぅ、見えませんねぇ…お姉ぇの言うには、今日、お義兄さんは浮気相手と会うはずなのに…なぜ、ゲームセンターなんかに来たのでしょう?」
もはや完全にボクサーもびっくりのグロッキー状態の阿久津だが、七海は無視してゲームセンターの奥に居る義兄の様子を伺う。
ゲームセンターという場所は特殊な場所。特に、ある一定の人には好ましくない一面のある場所である。
「尾行は、ややアレでしたが…いまだ完璧です。なので、お義兄さんが女の人と出会う場面はまだないはずです…やはり、腑に落ちませんね」
そう、七海の義理の兄である和屋 宗一郎は、まだ浮気相手である女性とは接触してはいない。そして、今日出会うという姉の言葉を信じれば、この後その問題の浮気相手と出会うはずなのだ。なのに、何故に、和屋 宗一郎は、ゲームセンターなんかに訪れたのだろうか?
この後のイベントを考えれば、男子たるものこういった行為は避けなければならないはず…。ゲームセンターとは即ち、立ちこめる匂いのする場所。つまり、多かれ少なかれ、タバコの匂いという異臭が服についてしまう場所なのである。
「女性と会うという時、わざわざタバコの匂いを付けていく馬鹿が居るのでしょうか?喫煙者ならともかく、お義兄さんは、そういった類は吸いません」
ならば、尚のこと、そのクリーンなイメージを押し出すのが恋愛の定石では無いか?もしや、相手はタバコの匂いが好きな女性?いや、しかし、それにしてもあのオタク丸出しの恰好でタバコの匂いがする男を待っている女性など…
「…ぐふっ、まぁ、いまから起こることを見ていれば分かるんじゃないすかねぇ?部長…」
と、そんな謎が謎を呼ぶ意味不明な義兄の姿を見て、阿久津がゲームセンターの入口付近を指差す。その阿久津の指さす方向を見て七海は驚く。そこに居たのは、紛れもなく柏木 七海の―――
「あれ、部長のお姉さんでしょう?」
「パパ!?」
「ぐふぇえい!?」
予想外の七海の言葉に、芝居がかった血反吐の擬音を思わずただの噴き出しにしてしまった阿久津。だが、そんな、阿久津の事など構わず、七海はタラリとその額から一筋の汗を流す。
ゲームセンターの入口付近。そこに居るのは和屋家の旦那の嫁・和屋杏子。旦那の携帯追跡システム・GPSで場所を特定したのだろう。きょろきょろと旦那を探して辺りを見回している。そして、問題はその隣にいる人物。姉がやや青い顔をしているが、手に取るようにその気持ちが分かる七海であった。唐草模様の布に入れてあるが、その細長い形から、もはやそれが何であるか七海は想像できていた。あぁ、場合によってはとてもマズイ事が起きる。七海は、未だ青い顔で辺りを見回す姉の隣で、憤怒の表情で唐草模様の布切れに隠した凶器を振り回している実父を見て、そう思わざる居られなかったのであった。
何やら述べてありますが、流して貰って結構です(笑)
さて、メンバーが揃って来ました。旦那とその友人。七海と阿久津。そして、杏子とその父親・柏木竜ノ丞。何やらヤバい予感?
…未だ、続くアイディアは無し。何やらヤバい予感?