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転生少年、勇者を救う  作者: 新崎 勉
第一章 転生編
6/7

第6話 魔物

お待たせしました!

本当に申し訳ありませんでした!

あと今回は解説じゃないです。

大きく森の空気を吸い、呼吸を整える。

右手には純白の剣、左手には普通の剣。

二本の剣を持つ手は恐怖故か、震えている。

目の前には、恐らく3メートルはあるであろう巨大な熊の魔物。

そして俺の後ろにはリアナを含めて俺と年のあまり変わらない子供四人が走って村の方へと逃げている。

うまくいけば、もう少しで森の外まで出られるだろう。

これなら安心して戦える。


剣を握りなおし、イメージする。


イメージするのは、目の前のバケモノを倒す自分の姿

それから体に魔力を通し、俺は地を蹴った。




事の発端は、俺とリアナに友達が出来たことだった。

剣術や魔術の鍛錬のために外に出る以外あまり外出しない俺たちには友達がいなかった。

この時点で俺は8歳、リアナは7歳であるにもかかわらずだ。

そんな俺たちを心配してか、母さんは言った。

「友達が出来るまで魔術の訓練は禁止します」と…。


その翌日、なんと三人も友達が出来た。しかも全員リアナから紹介された。お兄ちゃんはそのコミュ力が羨ましいです…。

まあ、そんなわけで、ジョージ、アル、アリスの三人が友達になった。それにしても三人中二人が男か…。後でお話が必要だな。


そんで、その三人が剣術や魔術の鍛錬を見てみたいというのでいつも鍛錬をしている場所に行こうとしたところ、熊の魔物に襲われて今に至る。

なんとかみんなを逃がすために囮になったのはいいのだが、相手は魔物の中でも強い部類に入る熊の魔物だ。大人でも蹴散らされてしまうような強さを持つ敵を相手にして、剣術を少しかじった程度の俺ははたして生きて帰ることができるのだろうか?


「クソッタレ…、生きて帰れるか、じゃねぇだろ…!」


そうだ。

もう一度美咲に会うために俺は転生したんだ。

ここで死んでしまったらすべてが無駄になる。

もう一度美咲に会うためにも俺は・・・


「こんなところで…死ねるかよ!」


そう叫びながら、俺は地面を思い切り蹴った。

魔力で強化された体は、風を切りながら敵の懐へ向かって一直線に突き進んでゆく。

敵までの距離はあと5メートル。

恐らく、このまま突っ込んでもあの熊は俺をあの鋭利な爪で切り裂くだろう。

だったら真っ直ぐ突っ込まなければいい。そんなのは当たり前だ。

両者の距離が4メートルほどとなった瞬間、熊は鋭い爪を超高速で振り下ろす

当たれば間違いなく即死、そんな一撃が俺の頭へ向かって振り下ろされる。

だがその一撃は、俺に当たることなく空を切った。

なにが起こったか、簡単だ。俺が横に方向転換しただけだ。

大振りの攻撃を外したことによって、大きな隙を晒す事になった熊。その熊に向かって俺は、両手の剣を振り下ろす。超高速の突進と魔術による身体強化を施した剣の合わせ技だ。今の俺に出来る最大の攻撃力を持った一撃。

その一撃は、熊の体の半分ほどを切り裂いて止まっていた。


「ハァ・・・ハァ・・・やった・・・のか・・・?」


息を切らしながら呟き、熊の巨体を切り裂いた剣を引き抜く。

その瞬間だった。

鮮血が舞い、右わき腹に激痛が走る。

気づけば俺は数メートル吹き飛ばされ、地面に転がっていた。


「う・・・何・・・が・・・起きたんだ…?」


そう言って見上げた俺の視線の先には、肩から心臓の付近まで切り裂かれたにも関わらず、ピンピンしている巨大な熊の魔物がいた。


「クッソ…ッ」


立ち上がろうとするが、出血が酷い上に激痛が走り、なかなか立てない。無詠唱で治癒魔術を使うが、止血するのがやっとだ。この状態じゃ満足に剣も振るえない。


(このままじゃ、本当にヤバイ・・・)


このままじゃ待っているのは死だけだ。だが、もうどうしようもない。

それでも・・・


(死にたくない、美咲に会えないまま死ぬなんて絶対に嫌だ)


剣を握る手に力を込め、立ち上がる。腹部の痛みなんて気にしない。

治癒は大体終わったので、すべての魔力を身体強化にまわす。


そんなことをしているうちに、いつの間にか熊が近寄ってきている。

距離はおよそ三メートル。リーチの長い熊は、この辺りから攻撃してくる。

振り下ろされる豪腕。

かすりでもすれば死ぬだろう。


残り二メートル

完全に向こうの射程範囲内に入った。

間違いなく当たる、そう油断しているはずだ。

どこかで聞いたことがある。相手にトドメを刺すとき、一瞬油断すると。

相手の警戒が薄れる一瞬。

その一瞬、俺の意識は加速する。

空気の粘度が増したような感覚とともに、熊の動きが遅く見えてくる。

そして、俺の足元で魔術が炸裂する。

発動させた魔術は火属性爆発系統魔術の中でも初級の魔術である『ボム』だ。

こいつを足元で爆発させることによって爆発的な推進力を得た状態で、さらに魔力による身体強化による踏み込みにより、距離を詰める。

どうやら熊は、瞬間的に加速して懐に入った俺を見逃したようだ。もはや五十センチもないような距離で俺は、右手の剣に風属性魔術の『ウインドカッター』付与し、全力で振りぬく。

その剣は熊の肉や骨を断ち、心臓を完全に破壊した。


「やった・・・」


倒した。

大人ですら手を焼くような化け物を、一人で倒した。

その事実は、俺が少しずつだが着実に強くなっていることの証明としては十分だ。

嬉しさのあまり俺は、思いっきり右手を掲げ、そして…


「あれ…目の前が…暗く…?」


意識を失った。




side タクト父


身体強化を全力で使用し、森へ向かう。

娘のリアナから事情を聞き、俺はタクトの救出へ向かっている。

状況は最悪だ。恐らくだが、タクト達が熊の魔物と遭遇して、もう十五分は経っているだろう。

タクトには才能がある。頭はいいし、剣術の吸収も早い。

だがそれでも、まだタクトは子供だ。いくら才能があっても、それを生かすには鍛錬や実戦での経験が必須だ。

しかし、タクトにはその二つが不足している。そんな中途半端なあの子が、魔物の中でも最強格の熊の魔物と戦えば、殺されてしまうだろう。

それだけは絶対にあってはならない。


「頼む、無事でいてくれよ…」


そう言った直後、森の少し開けた場所に出た。

そこにあるのは、胸の辺りで両断された熊の死体、そして…


「タクト…?」


地面に突っ伏したタクトだった。


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