第4話 この世界の魔術
文章力が欲しいです・・・。
吸い込んだ息を吐きながら、全身の力を抜いていく。
それと同時に、身体の中を流れている『魔力』の流れを整える。
そして魔力の流れを前に突き出した右手に向ける。ここまでの作業を0.03秒ほどで終わらせなければ一流とはいえないが、俺の場合は0.5秒近くかかっている。
ある程度魔力が流れてきたところで、
「ファイアーボールッ!!」
と叫ぶ。
すると、俺の右手から直径20センチほどの火の玉が放たれた。そして火の玉は15メートルほど先にある的に直撃し、爆発を起こした。
魔術
この世界では一般人でも簡単なものなら使えるのが当たり前なものだ。俺は最初は選ばれた人しか使えない高等技術かと思っていたが、どうやら違うらしい。
使い方はいろいろあるが、一般的に知られている方法は3つある。
一つ目は、詠唱を行い発動するタイプだ。
魔術の元となる魔力を自身の身体のどこか(俺の場合なら右手)に集め、詠唱を行い、魔術名を唱える。
このとき、詠唱の際に魔術の効果をある程度イメージしておかなければならない。
ちなみにだが、魔術名というのは、前世でいえばゲームの技名にあたる。
二つ目は、詠唱を行わないタイプだ。
この魔術は、詠唱を行うタイプよりも強いイメージを必要とするのと、魔力を少し多めに消費するので人を選ぶが、声を出せない状況でも使えるという利点がある。というか、そんな場面があるのかよ・・・。
ちなみに、先ほど俺が使った魔術もこれだが、この『無詠唱』と呼ばれる魔術は、魔術名を言っても言わなくてもどちらでもいいそうだ。俺が魔術名を唱えたのは、ただ気分が乗るからだ。
三つ目は少し特殊で、あまり使う機会は無いが、陣を使って発動するタイプだ。
よく儀式などで強力な上級魔術を使用するときに使われる。恐らくだが、勇者召喚はこのタイプの魔術を使うだろう。このタイプの利点は陣に魔力を込めれば魔術が発動するという点だが、それ以上に、正確な陣を描かなければムダな魔力を消費してしまうという点やこの世界では今はほとんど使われていない古代言語を覚えなければ陣を描けないなど、欠点が多い。だから、この魔術は一般的にはあまり使用はされない。それになんか陣を見てたら数学の図形を思い出しそうになって憂鬱になる。俺は前世では図形は苦手だったのだ。
さて、使い方以外にも、魔術には様々な種類がある。
たとえば、属性や、等級がある。
属性は、火、水、土、風、雷、聖、闇、無の7種類がある。
そして火、水、聖、闇の属性は、反対の属性で打ち消すことができる。どこのRPGだよ。
等級は弱い等級から、初級、中級、上級、精霊級、神霊級に分かれている。
先ほど俺が使った『ファイアーボール』は、初級の火属性魔法だ。
ちなみにだが、等級が高くなるほど詠唱が長くなり、魔力消費も激しくなる。
そしてこの世界の魔術には特徴がある。
それは、等級が高ければ高いほど、魔力量などによる魔術の強さに差が無くなっていくという点だ。
その理由は、この世界の魔術の原理にある。
この世界の魔術には、見えない魔法陣とでも言えばいいのかわからないが、魔術組成というものが存在する。この魔術組成は、高い等級になるほど複雑になり、複雑になると、魔力を魔術の威力に変換して、威力を底上げする効率が下がってしまうらしい。なので、無理に魔力を流し込んでもうまく威力に変換できないので、魔力がムダになってしまうそうだ。ちなみに、等級の低い魔術は、込める魔力量によってかなり威力に差が出るらしい。俺の魔力は多いほうなので、ファイアーボール程度でも、やろうと思えば上級魔術に匹敵する威力をもつそうだ。以外に俺ってチート性能だったんだな。
さて、魔術の練習を終えた俺とリアナは、帰る前に頼まれていた買い物を済ませることにしたのだが、その途中で俺達は、ちょっと面倒なことに巻き込まれた。
「どけぇ!どきやがれぇッ!」
普段から人が多く騒がしい昼間のレイト村の商店街に、そんな声が響いた。
声の感じからして10代後半くらいの少年だろうか。
その少年が、野菜や果物が大量に入った袋を持って、商店街のど真ん中を疾走していた。恐らくは盗んだのだろう。後ろから八百屋の店主らしき男が追ってきている。
そしてその少年は、よりにもよって俺達のほうに向かって走ってきた。
面倒ごとに巻き込まれたくは無いが、リアナが見ているので、無視するわけにもいかないだろう。
そこで俺はその少年を止めることにした。
「止まれ」
見た感じたかだか6歳ぐらいの子供に命令されるように言われてキレたのか、少年は
「うるせぇ!そこをどけ!!」
と叫びながら殴りかかってきた。
普通の子供なら怖がってしまうだろうが、生憎俺は前世では殴られるなんて事は日常茶飯事だった時期がある。だからなのかわからないが、そんな脅しに屈することなく、冷静に右手を前に突き出す。俺から少し離れたところにいるリアナも手を前に突き出していた。
「「ストーンバレット!」」
二人同時に土属性魔術のストーンバレットを、同じ威力、同じタイミングで放った。
相手を殺さないように加減したが、かなりの威力だったのか、岩の弾丸が腹部に命中した瞬間、少年は3メートルほど吹っ飛び気絶した。
辺りを静寂が包む。
少しやりすぎたかと思った瞬間、周りの人々は盛大な拍手を俺とリアナに送った。
「よくやってくれたよ、坊や達。もしよかったらだが君達の名前を教えてくれないか?」
八百屋の主人が訊いてきたことに俺は答えた。
「俺はタクト・アーウィン、そっちの子は妹のリアナです」
「アーウィンって、あのアーウィンさん家のお子さんかい」
「アーウィンさん家っていえば、あの天才夫婦のいるアーウィン家か、そりゃあ、こんなすごい子供が生まれるわけだ。」
「この二人、将来的にはすごい騎士か魔術師になるんじゃねぇか?」
「そうなったら、街の皆でお祝いでもしようぜ!」
その結果、俺達は町中の人たちからものすごく注目され、町の人々の話の話題になっていた。ちなみにリアナは大勢の大人が怖いからか、俺の後ろに隠れている。俺もどこかに隠れたい・・・。
そのあと、俺達は買い物を済ませて家に帰った。
その日から俺達は、この町の天才魔術師兄妹として街の人々に知られるようになったことを、ここに記しておくとしよう。
今回も解説回でした。
恐らく次回も解説回ですが、お付き合いいただけると幸いです。