第六話 痴女と触手と使役獣~触手プレイはありません~
更新ペース落ちすぎだろ……とりあえずサブタイ通り触手プレイはありません。
「――……」
計画を狂わされた挙句バイオロードによって吹き飛ばされたグリーンセンチピードことアイル・ア・ガイアー。
咄嗟の事で魔術を使う隙もなく町の外れにある廃墟の看板に大きくめり込んでしまっていた。
「……っ、くぅ……」
ともすれば彼はほぼ死んだも同然なほどの重体である筈なのだが、然しグリーンセンチピードとしての装備はそうであることを良しとせず、自動的に主を衝撃から守っただけでなく、自身を修復しながら主の治療も進めていく。
「――ふ、はぅ……何とかなったみたいね。ともかく町に戻らないと」
凹んだ看板から抜け出たアイルは、得意の魔術で背に六枚の翼を生やし猛スピードで現場へと向かう。
「……っ」
アイルが看板にめり込んだまま治療されていた頃、触手だらけの女幹部・キメラE操る頭足類の怪物・ラブリールに捕らえられ全身の自由を奪われてしまった紀和室見は、首と顔だけが辛うじて動く状況下で無言のまま不気味な敵幹部を睨み続ける他無かった。
「シギゥギュギゥ? ギュシギゥゥゥ?」
「んふふ……まだよ、ラブリールちゃん。まだ本番に入る時間じゃないわ」
「シュギ?」
「ええ、そうよ。だってこいつったら、こんなに美人でスタイル抜群なんだもの。これは上玉の中の上玉、言わば極上玉って感じの逸材だわ。だからね? こういう手合いは、まずはこうして縛り上げて動けなくした上で、じぃ~~~っくり……たぁ~~~っぷり……可愛がってあげるように"下準備"をするの。そして色々なものをしっかりほぐして、柔らかぁぁぁぁくしてから本番に入るのよ。まずは視姦――下見がてら目で楽しむ所からね」
「ギギッシュ!」
キメラEは書いている作者でさえ虫唾が走るようなことを力一杯語りながら、嘗め回すように紀和の身体を隅々まで凝視していく。それに続くように、怪物ラブリールも全身の至る所――主には触手の側面や先端部であったり、吸盤等の部位――からヒトとも巻貝ともつかない目玉を無数に出しては一斉に紀和の全身至る所をまじまじと凝視する。それも、まるで紀和の恐怖心を煽り立て泣き叫ぶのを促すかのような仕草で。
並みの女ならばここで悲鳴を上げるなり喚き散らすなりしそうなものであるが、然しそこは流石に生後より死して臨母界へと下るまでの24年間、また下って以降の数年間あらゆる苦難に耐えてはそれらを乗り越え今に至る紀和室見。一切表情を変えず、ひたすら反撃の機会を伺っていた。
「(この程度、私が過去に受けた苦痛や屈辱に比べればどうということはないわ……ともかく待つのよ。今はとにかく、こいつ等が調子に乗りきってあと少しで頂点に上るというその瞬間まで……)」
紀和が反撃の機会を伺い続けている事など露程にも知らないキメラEは、嬉々として次のステップに移ろうとする。
「さあラブリールちゃん、視姦はこのくらいにして次の――あら?」
然しここでキメラEは、ラブリールの様子が妙であるのに気が付いた。何やら妙に落ち着きがなく、無数の目玉で辺りをキョロリキョロリと見回しているのである。
「どうしたのラブリールちゃん? 何かあった?」
「シュギ、ギギュギギ」
「え? 何か変なものが近づいてくる? それって一た――」
「咬、旋、連、牙ぁぁぁぁぁっ!」
「――いいいいぃぃぃぃぃいいいい!?」
「ギュシュギィィィィ!?」
突如として叫び声を伴いながら飛び込んできた緑色の細長い物体――もとい、グリーンセンチピードことアイル・ア・ガイアー――は一瞬にしてキメラEとラブリールの触手や胴体を細切れにし、紀和は図らずも拘束から脱することとなる。視界から消えていたアイルが戻ったことは紀和や柵木、そして彼の忠臣である永谷を安堵させ、士気を向上させた。一方、細切れにされた痴女怪人と触手塊は再起不能でこそないもののそれなりに重傷であるらしく、再生にも若干手古摺っているらしかった。
「紀和、大丈夫? 怪我とかない?」
「ええ、お陰様でこの通りピンピンしてるわ」
「そう、それはよかった。それじゃ早速二人であの変態どもを――」
「グゴアアアアッ!」
アイルの台詞を遮るように飛び込んで来たのは、それまで(巨体と怪力の所為で単独戦闘専門故に)対戦相手が居なくなった為クイーンDCDの護衛を勤めていたバイオロードであった。
「ちょっ、またあんたなの!?」
「さっきまでまるで動いてなかったのに何で今更!?」
アイルと紀和は同時に別方向へ跳躍しバイオロードの攻撃を回避しつつ距離を取る。一方のバイオロードは『グリーンセンチピードをブルージェリーフィッシュより引き離した上で確実に始末しろ』という命令を実行すべくアイルを睨みつけながら唸る。
「ゥグゥルルルァルルルルル……」
「……何よ? まさかあたしに気があるっての? だとしたら悪いんだけど、正直あんたってタイプじゃないし、最近バイのケが急激に薄れてて雄の子単品じゃ今一タたなくなっちゃってんのよね。今話題の更年期障害って奴かしら。だからあんたの申し出は断らざるを得ないわ。……ま、あんたみたいなのがホモなわけないってのは解りきってることだけどね」
等と軽口を叩きながら、アイルは巨獣バイオロードと向かい合いふと思う。
「(そういえば今まで忘れてたけど、突入前に見掛けた灰色タイツに仮面をつけたような雑魚戦闘員達はどこ行ったのかしら)」
「……」
TBCのギターヴォーカルであるレッドヴァイパーことガラン・マラン。虚空へと消えた彼は、見知らぬ屋内円形闘技場で目を覚ました。観客席には様々な服装や髪形(但し全て白・黒・灰色のカラーリングで統一)をした女達が所狭しと座っている。女達の顔は簡素な仮面で覆われており表情は窺い知れなかったが、その視線は闘技場中央で意識を失っていたガランに向けられているようだった。
「(あの宝石ジャラつかせた女の魔術で異空間に飛ばされたか。しかも身包み剥がされ申し訳程度の褌一丁でこんな所に放置たぁ……奴ら、とんだ変態らしい)」
ひとまず起きて立ち上がったガランは、改めて自分の置かれている状況を確認していく。
「(……さて、改めて確かめてみたわけだが……まぁ容赦なく褌だなこりゃ。少なくともビキニパンツなんかじゃねぇのは確実だ。キツ過ぎずユル過ぎず尻尾の動きも阻害せず……ただまぁ、俺って普段ボクサーブリーフだから幾らフィットしようが違和感ありまくりなんだけどな。色にしても普段は紺やら黒なもんで白ってのはどうも落ち着かねぇ……)」
続いてガランは観客席に目を向けた。
「(どいつもこいつも女ばかり……歳や髪型、身なりこそ千差万別だがどいつもこいつもモノクロで変な仮面つけてやがるもんで気味悪いったらねぇや。つうかあの仮面どこかで……そうか。突入前に現場周辺でウロついてた、所謂"雑魚戦闘員"どもだな? そういやあんだけ数居る筈なのに全く襲って来ねぇし、いつの間にか居なくなってたし、薄々妙だとは思ってたが……こんな所に隠れてやがったのか。然し何故だ? 普通あのテの雑兵は初っ端から敵に特攻さすもんだろうに――)」
褌姿のまま真顔で考え込んでいたガランの独白を遮ったのは、闘技場に備え付けられているスピーカーからのチャイム音であった。
『大変長らくお待たせ致しました。只今"ショー"の準備が完了致しました。選手の皆様は係員の指示に従って所定の場所まで移動して下さい』
ジェム・ザ・ソーマによる場内放送が響き渡るのと同時に、観客席に座っていたモノクロの女達――ジェム・ザ・ソーマの指示により姿を変えたワールドショック戦闘員"グーレイ"――の一部が席を立ち姿を消していく。
「(いよいよ始まるか……さあ、ドンと来やがれ!)」
次回、褌姿のガランが暴れまわる『褌竜無双~それでも最後は服を着る~』の予定でしたが扱い偏ってもアレなんで先送りになりました。