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第四話 日暮れのトウコーマン~いつもの如く尺延びです~




戦闘開始!

「「「「「毒殺戦隊 パイレンジャイ!」」」」」


 クイーンDCDを筆頭とする悪の組織『ワールドショック』及び彼らに襲われている『エスカレンジャー』の面々は揃って、突如自分達の眼前に姿を現した『毒殺戦隊パイレンジャイ』なる得体の知れない集団(然しその正体は単にコスプレしただけのバンドマン四人と白蛇一匹)の存在に困惑せざるを得なかった。

 特にクイーンDCDは五人(より厳密には四人と一匹)に対し突っ込みたい事が山ほどあったが、状況が状況なので突っ込みたい気持ちをぐっとこらえることしかできなかった。


「……何なのよあいつ等……まあいいわ。あんた達、やぁーっておしまいっ!」

 どこかで聞いたことがあるような気がするクイーンDCDの掛け声に対する部下達の返答は様々であった。

「畏まりました」

 白衣を羽織った細身の猫男"ギア・クライム"はその真面目な性分を現すかのように堅苦しく。

「はいな~」

 星空を思わせる黒い中華風の道着に逆立つ青髪、桃色の瞳といった風貌の小柄な格闘家"流星ルーシン"は軽妙に。

「お任せ下さいまし」

 全身を宝石で着飾った際どい身なりの女幹部"ジェム・ザ・ソーマ"はゆったりと、

「……了解です」

 左半分が黒、右半分が白のメイド服を思わせる衣装を着た格闘家風の女幹部"シェイドエッジ"は物静かに。

「畏まりっ。さぁ行くわよラブリールちゃん」

 頭足類の化け物を改造し手懐けた張本人であり自身も触手を持つ異形の女幹部"キメラE"は不気味な容姿に反して陽気に。

「ガグルァッ!」

 身体に植物が埋め込まれた狼風の巨獣"バイオロード"は獣じみた咆哮という形で。


 部下達は何れも大真面目であり、必ずや眼前のふざけたコスプレ集団を抹殺すると心に決めていた。クイーンDCDもその点については部下達を信じ切っていたが、然し彼らの返答に対し不満が無いかというとそうでもなかった。その不満というのは――

「(あんた達、真面目なのは結構だけど『やっておしまい』と来たら『アラホラサッサー』でしょうが!)」

 実に下らないものであった。


 ともあれ激しい戦いの火蓋は切って落とされる。


「ソレノドンとか意味ワカンネーしっ! オッ死ねチビがぁ!」

「格闘家か……ふん、面白え! ならば妾もそれ相応の姿で相手せにゃおえんなぁ!」

 ワールドショックの小柄な格闘家・流星ルーシンを意気揚々と相手取るのは、似た背丈のゴールドソレノドンこと柵木豊穣。方向性の違いこそあれどちらも小柄ながら高い身体能力を誇る東方由来の優れた魔術師である両者の戦いは、まさしく"変幻自在"の一言に尽きた。

「シエぁ!」

「ふんっ」

 流星ルーシンが細く鋭い正拳突きを繰り出せば、柵木は一切無駄のない動作でそれを回避する。然し正拳はあくまで囮に過ぎず、流星ルーシンは回避直後に生じるかどうかさえ不明瞭な隙を強引に突くようにして瞬時に地表へ魔力を這わせ鋭い石槍で柵木の腹を刺し貫かんとする。

「ァオラァ――」

「ほうっ!」

 されど柵木はそれをも見越していたと言わんばかりに身体を支える獣脚四本で素早く後方へ跳躍。すかさず九本ある尾の内一本の先端を前方へ向け、金色に輝く光線を放つ。

「甘エっての、よ!」

 然し直線でしかないそれを流星ルーシンは余裕綽々と回避しつつ、凄まじい加速で一気に柵木へ詰め寄りその腹へ正拳よりも鋭い貫き手で柵木の腹を貫こうとする。

「(そのイカみテエな腹をブチいてヤラ――ぎゃば!?」

 然し彼の思惑は柵木の策によって阻止されてしまう。突如、彼の後頭部や背など十数か所に細かな弾丸らしきものが突き刺さったのである。結果として流星ルーシンはバランスを崩し地面に倒れ込んでしまった。

「ぐぁ、くソ……一体何がっ……」

「んふふぅ、読みが甘かったのぅ。甘々じゃったのぅ。よもやおめーは、妾がバカ正直に正面からぶち当てる為に光線を撃ったとでも思うとんか? 残念じゃったなぁ、ありゃあくまで囮じゃ」

「囮、だと?」

「そうじゃ。あの光線は見ての通りの攻撃魔術じゃが、その仕様が少々特殊でな。攻撃魔術として対象を焼くだけでのうて、魔力を組み換え物体に浸透させる事で物体を一種の爆弾に変化させることもできるんじゃ。まあ火の気を伴わんから爆弾とは言えんかもしれんが……」

「……ヘえ、たダの派手好きなコスプレチビかと思ッタら中々スゲーことするじゃネーの。イライラすルぜぇ、ブチ殺しテヤらぁ!」


「貴方は、クライム・スタインバート教授ですね?」

「そういう貴女はDr.アイル・ア・ガイアーの助手を務める白蛇の永谷さん」

 黒の毛並みに赤い白衣を羽織った長身痩躯の猫男ことギア・クライムと対峙していたのは、全身を覆う専用スーツによってピンク色の細長いハチと化した永谷であった。

「よくご存知で。アイル様と分離した状態で名前と肩書きを言い当ててしまわれるとは……」

「それほど凄いことではないだろう。Dr.ガイアー同様、君の名もまた臨母界では知れ渡っているからな」

「貴方のような偉大な工学者にそう言って頂けて光栄ですよ。ところで話は変わりますが、スタインバート教授」

「何かね永谷さん。それと訂正が遅れたが、私のことは以後ギア・クライムと呼んでくれないか。ワールドショックでのコードネームがこれなのでね……」

「そうですか、それは失礼。では改めて……ワールドショックの"ギア・クライム"、貴方に一つ質問があるのですがよろしいですか?」

「内容によるね。具体的に言ってくれなければ返答のしようがない」

「では率直に。……"ギア・クライム"、何故貴方は臨母界に背きワールドショックに与するのです?」

「……難しい質問だな、"ピンク・ワスプ"。然し、問われたからには答えねばなるまい」

「ほう、返答を拒否するという選択肢はありませんか」

「拒否するほどの問いでもないからな。答えてあげよう。但し――」

「但し、何です?」

「私に一騎打ちで勝てたらの話だがな」

「……ふむ、面白い申し出ではありませんか。いいでしょう。ならばこのピンク・ワスプ、貴方との一騎打ちに見事勝利し問いへの答えを吐かせてみせましょう――はンっ!」

 浮遊する永谷は空中でその身を華麗ににくねらせ、自らの纏うピンク色のスーツに秘められた固有機能を起動する。

「エンプレスコード入力、ドクサツ・ハイパーチェンジ!」

《コード承認、ハイパーピンクワスプ》

 刹那、永谷のスーツがピンク色の光に包まれたかと思うと複雑に変形していく。光はスーツの変形が完了するのと同時に晴れ、そこにはより戦闘的な姿になった永谷の姿があった。

「完成、ハイパーピンクワスプ!」

 スーツの変形により完成したその姿は『スズメバチの外骨格と翅を得てホバリングするピンク色をした蛇頭のラミア型ロボット』とでも言うべき独特なものであった。

「いい変形だ。早速お手並み拝見させて頂こう」

次回、思わぬ展開に翻弄される三人!

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