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第三十九話 鉄の毒生物~この程度の出来で最終決戦だと認めてたまるかっ!~




最終決戦です

「ふん、なぁ~にがドクサツジンよ! なぁ~にがチーム・クルセイダーズよ! センスゼロでダサダサなのを無理矢理かっこつけようったって普通にクサいしサムいし三下雑魚キャラ感丸出しなだけなのよ! さあパインブラザーズ、奴等にそのことをしっかり教育してやりなさい!」

 クイーンDCDに命じられるまま、パインブラザーズは一斉に攻撃を開始する。

『ODNソード!』

 赤い機体(自我があり言葉を話すなど生物的な特徴があるので個体と呼ぶべきかもしれないが便宜上機体とする)のO1が掲げるのは、正三角形と円形が連結されたような刃と円筒形の柄が特徴的な剣であった。

『切り裂いてやるぜ! T・B・D――』

 必殺技を決めんと剣を掲げたO1だったが、技は不発となった――彼の身体が一瞬にして両断されるという不可解な形で。

『隙だらけだぜ、坊主』

 残骸と貸した赤いロボットの傍らに佇む騎士のようなロボット――チーム・クルセイダーズ随一のスピードを誇る凄腕の剣士、メタルフェンサーは静かに呟いた。


『フッ……THE・ヨーン・スピーカー!』

 ギター型の武器を持った青い機体ことK2は背部装甲を開き歯の生えた大口のようなスピーカーを展開、ギターをかき鳴らし爆音を轟かせ周囲を破壊し尽くさんとする。

『さあ、地獄の始ま――り、だ……?』

 格好つけて口走ったK2の腕が、突然思うように動かせなくなってしまう。否、腕だけでなく全身が、まるで何かに縛られてしまったかのようにピクリとも動かない。

『っぐ、ぬぅぉぉお……な、何だ……身体が、動かん……!』

 見えざる拘束から抜け出さんと、K2は全身に力を込めようとする。然しそれでも身体は動かず、それどころか熱とも電気ともつかない謎のエネルギーによって焼かれていく。彼を拘束していたのは紫色をした(微かに棘が見えたことからイバラもしくはタラノキを思わせる)植物の蔓らしきものであり、細くも強靭なそれらはK2の全身を中々にえげつなく締め上げていた。

『――ぐ、ご――がぶばあああっ!?』

 そして遂に蔓はK2の全身を焼きながらバラバラに引きちぎり完全に機能停止に追い込んだ。

『何とも呆気ないのぅ、いっそ滑稽な程に……』

 K2の背後に浮遊しながら静かに口走るのは、チーム・クルセイダーズ随一の策士たるパープル・ソーン。紫の蔓を纏い操るその姿は、甲に単眼を備えた巨大な左手という実に奇妙なものであった。


 かくしてパインブラザーズはチーム・クルセイダーズという予想外極まりない敵の出現により一気に劣勢に立たされていくこととなる。


『トゥースブーメラン!』

 緑色の機体・C3が連なる前歯を模したブーメランを何発も連射すれば

『甘い……ジェムシードバレット!』

 同じく全身緑色で無数の触手が束ねられたような細身の異形型ロボット――狙撃と探索の名手として名高きチーム・クルセイダーズのメンバー、ジェム・サイレントが打ち出した無数の弾丸によって破壊され

『なっ、トゥースブーメランを全部撃ち落とすだばがぶらっ!?』

 序でとばかりにC3自身も弾丸の餌食となってしまった。

『いいブーメランだ、独創的だな。然し僕には無意味だ』


『ふん……トランクスバリアー……!』

 戦闘態勢に入った紫色の機体・I4は、準備中に時間がかかる事を見越して自身を取り囲むように男性用下着のような風変わりな形をした防御壁を展開し身を守る。

『むぅん! 何のこれしき!』

 しかし赤いヒクイドリかハゲタカのような外見をしたチーム・クルセイダーズでも一二を争う武人、フレイムファルコンはI4の周囲を炎で取り囲み、防御壁ごと焼き尽くしてしまった。

『私の炎を防ぐのならその十倍は分厚いタングステンか氷の壁を用意することだな』


『ヒッジリザァワデストロイヤァー!』

 頭に赤いカラーコーンらしきものを乗せた黄色い機体・J5が手にした野球のバットが如き武器を振ると、先端部が変形し禿げ頭の中年男らしき漫画チックな人面が描かれた巨大な球体が出現、原型をまるで留めていないモーニングスター状の武器へと変形する。

『家宝でっぺぇー!』

 そしてJ5はそのまま武器を振り下ろすが

『ハッ! ぅオラァ!』

 スカイブルーをベースとしたスタンダードなヒト型ロボのスターフィスト――チーム・クルセイダーズ最強にしてリーダーを務める機体――は球体を見事に投げ返しそのまま一撃でJ5を破壊してしまった。

『……やれやれ、全く呆気なさ過ぎて言葉も出ねえといった所か』


『よし、あのチビならこのフィッシュボーンミサイルで……』

 ピンク色をした機体・T6は手にしていた旗型の手投げ斧・フラッグトマホークを投げ捨て、新たに魚の骨を模したミサイルらしきものを取り出しては構え、発射する。狙うはチーム・クルセイダーズで最も小柄で一見戦う力など皆無に見える獣型ロボットのワイルドプライド。

『吹っ飛びな、チビ――って、えっ!? っぐおわあああああああ!』

 然しここで事態はT6にとって予想外の展開を見せることとなる。というのもこのフィッシュボーンミサイル、発射機構に何らかの不具合が生じたか、引き金を引けどもまるで飛ばないままT6の目の前に落下し爆発してしまう。

『な、なんでこんなことに……とにかく、逃げなきゃ……!』

 結果致命傷を負ったT6は恐怖の余りその場から逃げ出そうとするが、そんな彼を嘲笑うかのように地面は底なし沼か流砂のように変形し、ボロボロになったT6をどんどん飲み込んでいく。

『へぁ!? や、やだ! やだやだやだ! そんなのやだよぉ! うわああ、た、助け、助けて! 助けっ、誰か、誰かああああああああ!』

 助けを求める叫びも虚しく、T6は遂に地面へと完全に飲み込まれてしまった。

『(チビだからってナメてかかってんじゃねぇぞバァカが)』

 口には出さないもののT6を完全に見下した態度のワイルドプライド。その名の通り野性的で誇り高い彼にはある種のナノマシン群を遠隔操作する機能が備わっており、これにより台地や水や瓦礫の塊などを自由自在に操ることができるのである。


 かくしてクイーンDCDの用意した切り札・パインブラザーズはわずか2600字足らずの尺で全滅してしまったのであった。


「なっ、ななな、何なのよ……何なのよこれはっ……!? こんな……こんなバカなことが……起こっていい筈ないでしょぉぉぉぉおがああああああ!」

 自慢の切り札が呆気なく全滅したことに怒り狂ったクイーンDCDは、どこからか黄金色の液体が入ったガラス試験管を取り出すと、それを振り回しながらドクサツジン目がけて捨て身の特攻を試みる。

「こぉなりゃヤケッパチよ! この王水入りガラス瓶を受けてくたばんなさいこのクズどもがあああああああ!」


「とか言ってますが、どうします」

「ええいめんどくせぇ。ここはもう一気に必殺技でトドメ刺すで」

「はーい」

「へーい」

「畏まりました」

「了解です」

「おっし、ほんならパイレンジャイ一同呼吸を合わせて――」

「「「「「ドクサツ・ブチヌキスティンガー!」」」」」

 ドクサツジンの右拳が叩き込まれ、甲の部分に備わる巨大な毒針――元は永谷操るスズメバチ型ドクサツメカの主武装である――がクイーンDCDの腹を容赦なく貫通する。

「ぐぶらべばぁっ!?」

 クイーンDCDは口から血液や胃液の混じり合ったものを吐きながら、尚も抵抗しようと右手に握りしめた王水入りの瓶を振りかざす。然し腕は振り下ろされるより前にドクサツジンの左手に備わるムカデの大顎によって切り落とされてしまう。地に落ちた王水瓶は案の定砕け散り、飛び散った王水は何故かクイーンDCDの右足だけをピンポイントで焼き溶かした。

「……っっぅ……ぐぅぅぅぅ――!」

 最期の対抗手段をも断たれたクイーンDCDには、最早涙を流す余裕さえ残されていない。一方余裕綽綽といった様子のドクサツジンは腹を貫いていた毒針を素早く引き抜き、死にかけの敵に背を向けながら得意げにポーズなど決めて見せた。

「ぐ、ぐうう……な、何で私が、こんな……毒にも薬にも、ならないような、ゴミどもなんかに! この、私が、私があああああああ!」

 片足を溶かされたことでバランスを保てなくなったクイーンDCDは、倒れながら最後の力を振り絞り捨て台詞を叫ぶ。巨大化に伴い体内に溜まっていたエネルギーが暴走し彼女の身体が爆発四散したのは、それとほぼ同時の出来事であった。


「「「「「毒殺完遂!」」」」」

次回、最終話!

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