第三十八話 鉄の毒生物~この流れで合体ロボだと!? ふざけるな!~
もうすぐ完結です。
「フフフフフ……」
クライムと柵木がそれぞれ何やら準備を進める一方、雲を衝かんばかりに巨大化したクイーンDCDが何をしていたかと言えば、特に何をするでもなくただ単に現在の状況に酔いしれていた。
「(あいつらったら、逃げることも忘れて縮こまってるようね……私の巨大化を目にした奴はもう絶望しかないことは今更言うまでもない事実だけど、まさかこれ程とは思わなかったわ……でもだからこそ踏み潰してやる楽しみが増すってものよ)」
「――というようなことを、あのバカなら十中八九考えているだろうから、多少なら準備に時間のかかるものでも問題ないわけだ」
「成る程な」
状況に酔うクイーンDCDを他所に柵木とクライムはあるものの準備を進めていた。
「しかも奴は目が悪い癖に眼鏡をダサい、コンタクトレンズを面倒だからという理由から常に裸眼で過ごしていてね。こちらが何をしていようともまず気にはしないだろう――と、準備完了だ」
「益々バカじゃなそれ――おっしゃ、こっちも完成じゃ」
「そうか……ではまずそちらからどうぞ。一度に多く出せばいいものでもないからね」
「そうじゃなー。んなら行くで――ドクサツメカ、出動!」
「「「「出動!」」」」
柵木に続いて四名が叫ぶのと同時に、遥か彼方より大小五つの風変わりなものどもが現れた。それらは何れも動物の姿をしており、メカの名を冠するだけあってか総じて機械的な構築物であることが見て取れた。
「な、ななな、何なのよ一体っ!? わけわかんないんだけどっ、あっ、がっ、ぎいいいい!?」
五体のドクサツメカは各々の個性を活かした攻撃でクイーンDCDを袋叩きにしていく。手始めに青いクラゲ型の空中浮遊するメカが触手から毒針を彷彿とさせるミサイルを放ち、続いて黄色いトガリネズミ風の小型メカが鋭い牙で足首に噛み付き、同時にそれより小ぶりなピンク色をしたスズメバチ型の飛行メカが針を何度も突き刺していく。
「むっがあああああああ! 鬱陶しいのよ離れなさい!」
怒り狂ったクイーンDCDはこれを力任せに払い除けるが、直後に現れた緑色の細長いムカデ型メカによる噛み付きと赤く巨大なクサリヘビ型メカの巻き付きをモロに受けてしまう。
「ぼうわばぎゃばがぇぇぇ!」
暫く攻撃を続けたムカデ型メカとクサリヘビ型メカがクイーンDCDから離れると、全身ボロボロになった巨体は力なく崩れ落ちた。然しそれでもまだ力の残っていたクイーンDCDは泣きながら叫ぶ。
「あんた達、5対1は卑怯でしょうが!」
「あいつに言われるんは癪じゃけぇしゃあねぇ、そろそろ頃合いじゃし行くでおめー等!」
「「「「はい!」」」」
呼吸を合わせた五名は凄まじい跳躍でそれぞれのドクサツメカに乗り込んでいく。
「「「「「猛毒合体!」」」」」
五名の掛け声と共に、五体のメカは素早く変形し合体。ソレノドン型メカの頭部とクラゲ型メカの胴部から成る上半身をマムシ型メカの腰部と脚部から成る力強く如何にも立派な下半身が支え、二つに別れたムカデ型メカが左右で長さの異なる両腕となり、短い腕を補う形でスズメバチ型メカが組み込まれ、合体は完了した。
「「「「「ドクサツジン、参上!」」」」」
「フ……合体ね、いい発想だわ。けど無意味よ! 来なさい、パインブラザーズ!」
クイーンDCDの呼び掛けに応じるかのように、虚空から六体のロボットが現れた。それらは何れもツナギを着た五或いは六頭身程のヒト型で、全体的なカラーリングを除いて基本的に似たり寄ったりなデザインをしていた。
「さあ見なさい! これこそ我が最大の切り札、パインブラザーズよ! 名前は左からO1、K2、C3、I4、J5、T6! どれもあんた達なんかじゃ太刀打ちできないようなハイスペックなんだから、降参するなら今のうちよ!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「「「「「……はあ?」」」」」
操縦席の五名はただひたすらに呆れ返る他なかった。
「いやいやいやいや待て待て待て待て」
「あいつさっき5対1は卑怯だから合体しろって言ったわよね」
「それが何よあれ、自分と同じくらいのサイズのロボット六体も出してんじゃない」
「しかもハイスペックだと言ってますが如何にも複数での運用が前提なデザインとネーミング……寧ろ各機体の性能はさほど高くないのではないでしょうか」
「まあ何にせえぶっ潰すだけじゃ。数が多いぃ分ややこしゅうはなろうがこのドクサツジンとて性能はそれなりじゃ。何とか――」
『カモン、クゥゥゥゥルセイダァァァァズ!』
「あん?」
柵木の台詞を遮って響き渡る叫び声に呼ばれるかのように、どこからかともなく大小六つの影が舞い降りるかのように現れた。風変わりな姿をしたそれらは、程度の差こそあれ全体的に機械的な意匠が散見されることからロボットらしきものであることだけは確かなようだった。
「な、何ならこいつらは……」
「どうやらこいつらもロボットのようですが――」
『ご名答! その通りさMr.マラン!』
「その声……何と無く予想はついてましたがスタインバート教授ですね?」
「つまりこのロボット達も貴方が?」
『YES! その通りさ! 彼らは私が自作したロボット部隊「チーム・クルセイダーズ」だ! そのパインブラザーズというロボット達の相手は彼らに任せ、君らはドクサツジンでクイーンDCDを狙ってくれ!』
「ほうほう、そらぁ助かるでぇ。おっし、ほんならおめー等、一丁派手に行くで!」
かくして最終決戦への火蓋は今、改めて切って落とされた。
次回、チーム・クルセイダーズ無双!




