第三十七話 かつて悪だった化け物たちよ~そろそろ最終決戦です~
いよいよ完結に向かって走り出せる……!
「さて、では用事も済んだ所で早速奴を始末するとしようか」
「いや始末って……さっきおめーが散々痛め付けたんでもう死んどんじゃねーんかい」
気だるげで呆れ返った様子の柵木がクライムに放った一言がまさに的確であったことは、その場に居た他三名一匹が深い頷きを何度も繰り返す形で実証していた。
「そうであってくれればきっとそれは誰にとっても実に好ましく喜ばしいことではあるんだろうがね。然し実を言うとそれがそうともいかないのがあの女の厄介な所でね」
「と、言うと?」
「ああ、まあ……見ていればすぐにでも分かるよ」
ほら、といった具合にクライムが指し示す方角では確かにクイーンDCDが立ち上がりつつあり、その手には何やら派手な装飾のされた瓶らしきものが握られていた。
「あンのクソ猫、よくも裏切ってくれたわね……今に見てなさい、あのパイレンジャイとかいうふざけたムカつき不審者集団ごとギッタンギッタンのボコボコのケッチョンケチョンのコテンパンにしてやるんだから……!」
クイーンDCDは手にした瓶の封を強引に引きちぎり、中に満たされた蛍光黄緑色の液体を一気に飲み干してしまった。
「……っぅぇえ、苦ぁ……けど、これなら確実に……!」
液体の苦味に耐えられなくなったクイーンDCDの目にうっすらと涙が浮かんだかと思えば、次の瞬間小柄で華奢だった彼女の身体は身に着けている衣類ごと瞬く間に巨大化し、遂には数秒と待たずに天をも衝かんばかりの巨人へと姿を変えた。
「追い詰められて巨大化、か。安っぽい考えだねぇ」
「考えは安っぽくとも巨大であるというのはそれだけで脅威かと思いますが」
「大丈夫だよ、巨人なんてものは項を削り取ってしまえばわりとあっさり死ぬと相場が決まってるんだ。臨母界に下って間もない頃、地球の極東地域に伝わる歴史書で読んだことがある。まあその為にはワイヤーとガスで空を飛べるカッターナイフみたいな剣が必要らしいんだが」
「んなこと書いてる歴史書なんてないわよ」
「というかワイヤーとガスで空を飛べるカッターナイフみたいな剣って何なんですか意味不明ですしそんなもの我々の手元に――」
「あるで」
「「「「――え?」」」」
「ほう」
突拍子もない柵木の発言に、若干一名を除くその場の一同が面食らったのも無理はない。
「……姐さん、今何て?」
「じゃけぇ、あるっちゅうたんじゃ」
「何がです?」
「その巨人を簡単に殺せる変な武器がじゃよ。今しがた魔術で貸倉庫ん中覗いたらあったんじゃ」
見れば柵木の体には、既にクライムの言う゛ワイヤーとガスで空を飛べるカッターナイフみたいな剣゛なるものが装備されていた。「おお、まさにそれだよ。よく持ってたね」
「一昨年ホームセンターで買うたんじゃ」
「「「「「ホームセンターで!?」」」」」
「15円でな」
「「「「「15円!?」」」」」
「まあそういうこっちゃけぇ、取り敢えずこいつであれをササッと片付けて来らぁ。狙うんは項じゃったな?」
等と言いながらフラッと巨大化したクイーンDCDに立ち向かわんとする柵木を真っ先に制止したのは、項を削れと言い出したクライムであった。
「ま、待つんだMrs.柵木! 早まってはいかん! 冷静に考え直してみたんだが、あのサイズだと項を削り取るのはリスクが大きすぎる!」
「そうじゃろか」
「そうだとも!他の皆も私と同じ意見の筈だ。なあ、そうだろう?」
クライムが話を振れば、全員が彼の意見に同意してみせる。
「ほら見ろ皆頷いてるじやないか! ここは一つ、もっと適切な別の作戦に切り替えよう!」
「別の作戦、か……ええで、おめーらがそこまで言うんならこいつは使わんとこう。してスタインバート、作戦っちゅうんはどねぇんなら?」
「うむ、ここはやはりこの作品のタイトルに因んで『目には目を、歯には歯を』という感じで行こうかと思うんだが」
「ほぉーう、そらぁ確かに妙案じゃなぁ。それやったらこっちにも゛そういうもん゛の用意はあるで」
「姉御、まさかアレを出すつもりですかい」
「おうよ。ここで出さなんだら出しようもねぇしな」
次回、戦隊と言ったらお約束のアレ!




