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第三十三話 倉イムさん~致命的な縮毛猫とは何か~




あともうちょいの一歩手前まであと少し

「(っく、ぬぅ……これは少々、危ないかもしれんな……)」


 弾丸に抉られ血の滲む横腹を押さえ付けながら、彼――゛ワールドショック゛の幹部が一人、ギア・クライムことクライム・スタインバートは次の手を考えんと思考を巡らせにかかる。

「(まず思い出すんだ。どうにもこれまでの戦いが激しいものだった――というか、作者が仕事だゲームだ何だと他の事ばかりに気を取られて更新をサボっていたからだろうが、短い間の戦いだったにも関わらず記憶が曖昧でならん。というか作者が話の構成を変な形にした所為で読者がまず間違いなく覚えられていないだろうしな)」

 そしてこの変な構成が今の今まで作者自身を苦しめ、更にはこれから先も作者自身を苦しめ続けるであろうことさえ容易に予想がつくのは言うまでもない。

「(……そうだ。あの後テクニカル・フォレストキャットになった私は彼女――ピンクワスプの永谷に戦いを挑んだ。テクニカル・フォレストキャットはスピーディ・ショートヘアほどの機動力や汎用性もなければ、ワイルド・スフィンクスほどのパワーや耐久性もない。だがこと飛び道具の扱いと精密な動作にかけては二種を凌駕している。例え無数に分裂したとしてもこの射撃性能を以てすれば迎撃・撃墜は可能――という考えだったわけだが、実際の所は向こうも銃撃戦が得意だった所為で撃ち合いに発展、僅かにミスしてしまった所為で腹を抉られてしまい今に至るということなのだな、これが……向こうも何やら私の攻撃が原因で装備が不具合を起こしてしまったらしく問題解決に躍起になっているのは不幸中の幸いと見るべきか)」

腹からの出血はそれなりに治まりつつあったが、然しそれでも完全には止まっておらずギア・クライムの毛を染めていく。

「(……一先ずこの煩わしい傷を治療するか。アタッチメント・サモン、クレイジー・ドクター)」

 ギア・クライムの手元に小さな救急箱のようなものが現れる。妙に薄平たいそれはノートパソコンのような装置であり、内蔵されたキーを弾けば側面部から複雑なコードらしきものが幾つも飛び出しては腹の傷へ向かっていく。

「(クレイジー・ドクター……死者の蘇生以外の如何なる傷病も治療しうるアタッチメントだが……)」

 コードが傷口に入り込んだ瞬間、ギア・クライムの表情が耐え難い程の苦痛に歪む。

「(――っっっ! 開発途中な所為で治療に際し激痛が走るという不具合がある。然しその治療はまさに一瞬だ。……然し本当にシャレにならん痛みだな。まるで指が出血しそうな程ひび割れているのに無理をして冷水と泡石鹸で丹念に手を洗い、エタノールで消毒したかのような……この戦いが終わったら本格的な改良に取り組まねばならんな。場合によっては治療のスピードを落とすことも視野に入れねばならんか……)」

 かくして瞬時に治療を終えたギア・クライムは、改めて永谷との戦いに挑まんと次なる形態へ移行する。

「ホイール・チェンジ――デッドリー・レックス」

 宣言と同時に彼の身体を覆う長毛は若干波打った淡い水色の短毛へと生え変わり、元々は控えめだった耳が際立って肥大化。更に白衣が消滅し、代わりに赤と白のプロテクターが現れ彼の首から下を包み込んだ。

「……"答え"を考えるのは暫くやめだ。今はただ、戦うことに力を尽くそう……行くぞピンクワスプ! 肉団子の貯蔵は十分かっ!?」

「へ? な、え!? 何!? 何なんですか一体!? えっちょっ待って下さいDr.スタインバート! 一体何が――」

「待たーん!」

「ぐわばーっ!?」

 それまでずっと装備のマシントラブルと戦っていた永谷の華奢な体は、ギア・クライムの凄まじい突進により盛大に吹き飛ばされた。

「っぐ、ぬぅぅ……動かなくなったと思って油断していたらこのザマですか……然しギア・クライム、貴方のそのやけにメカメカしい姿は一体何なのです?」

「さっきのは油断を通り越した何かだったと思うが……この姿は名をデッドリー・レックスと言ってね、現状実戦で運用可能と断言できる内ではスペック上最強の形態だ。詳細は……戦ってみればわかることだ。どの道単純な使い方しかできんし説明するのも面倒なのでね」

「言いつつ身構えておられる辺り本気のようですね。ならば仕方ありません、私も切り札を使うとしましょうか……この機能は丁度貴方みたいな方を相手取ってこそ真価を発揮しますし」

 思わせ振りに言う永谷の傍らには、色の異なる二つの六面ダイスが不規則な動きでゆっくり回転しながら浮遊していた。

次回、ギア・クライムの過去とは……

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