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第二十五話 化ケモノの毛~話題に乗っかってくStyleで~





流星の更なる力とは!

『神秘解放、第十按鍵輸入-雷霆怒吼』

「ィィィぃぃひひヒイいィァぁぁああアアああああッ――」


 半径10mに渡って青白く渦巻く電光の中央に佇んでは狂ったように笑う流星が身に纏う黄金色の鎧――『雷霆怒吼レイティンヌーホウ』という『火箭飛行』の派生形態で、発電・放電の能力を有する――の輝きは増していき、遂に周囲を取り巻く電光を自らも纏うようになる。そしてそれは瞬く間に鎧の右手甲部分に備わった電極型のガントレットに収束されていく。

「――じャウらああアアアあああああ!」

 全ての電力がガントレットに収束されるのを待たず、流星は右手を勢い余って引き千切れんばかりに振り回す。電極先端部からは蓄積された電力がこれでもかと言わんばかりに解放され、小規模な(とは言うものの人間一人程度なら少なくとも五回は灰にできそうな程の威力を内包する)電撃となって辺り一面に降り注ぐ。

「ふ、ぬっ!」

 規則性がなく乱雑に降り注ぐそれらを、柵木は魔術を織り交ぜた華麗な身のこなしで回避していく。その中に全身粒子化は含まれない。何故なら全身粒子化は発動する度に身体を再構築する為の着地位置を定めねばならず、更に身体の再構築中は無防備になってしまい位置を予測される恐れがあったためである。然し、それでも苦境である事に変わりはなく――

「(うぬぅ……避ける分には問題ねぇんじゃけぇ、どうにも攻撃が上手う行かんなぁ……ここは兎に角避け続けてやり過ごすっきゃねぇか……)」

 このように消極的な判断を下さざるを得なくなってしまう。やがて雷撃はピタリと止んだが、だからと言って戦いやすくなったかと言えばそのような事もなかった。と言うのも、流星が雷霆怒吼を維持していたのはほんの僅かな間だけであり、柵木は対処法を理解する間もなく次なる形態へ変じた流星を相手取る羽目になってしまったのである(説明を求めても『まだそんな気分じゃない』とはぐらかされてしまった)。


「気分が変わッタ、次ハコいつだぁっ!」

『変形、第二十按鍵輸入-燃凄炎熱』


 雷霆怒吼に続いて流星が変じたのは『燃凄炎熱ランシーイェジョウ』という真紅の形態であった。その名の発音や鎧そのものの色合い、また全身から発せられる凄まじい熱気を感じた柵木は、それが炎を扱う形態なのだという事を瞬時に察知した察知した。

「(雷の次は炎か……気をつけんと熱で内臓をやられかねんな。更にあの右腕と繋がっとる無反動砲バズーカみてぇなんは、前のんから察するにt火炎放射器か何かじゃろうな。思えばさっきは慌てとって障壁の準備をしとらんかった。今度こそはちゃんと耐熱障壁を展開せんと……)」

「つイデだ、もットすゲーもン見せテヤらあ!」

『変形、第八按鍵輸入-切割剖鋸』

『変形、第十一按鍵輸入-捌裂剪刀』

『変形、第十五按鍵輸入-鋭刺針山』

 例の電子音声を伴って、鎧の左腕と両足が展開し、左腕から大型の鋏、右足にチェーンソー、左足に棘で覆われた円筒がそれぞれ現れた。

「おぉう、またそねんおっかねぇもんばーよっけー出して来ょおってからに。こちとら年寄りじゃぞ? ちったあ労らんかいや」

「――知ッテるか? そウイう台詞吐くヨーな奴アよ、却って労る必要なゾこレッポっちモネーって事実コトをヨぉ」

「ふん、ああ言えばこう言う奴じゃなぁ」

「そイツはお互イ様ダろーが。何にせヨオめーはこコデ止めルぜ。こンナ所で止まルワケにゃ行かネーんデナ!」


 かくして二人の激闘は第三ラウンドへ移行する。


「うッシゃああアアアアっ!」

「ふぬぅん!」


 流星の右腕に備わった火炎放射器が炎を吐けば柵木の障壁がそれを防ぎつつ完封し、形状はおろか質量や硬度さえも自在となった柵木の体毛が様々な武器と化して流星に襲いかかれば流星の炎を纏った武装により焼き尽くす。

 ともすればお互いあれこれ武装を替え魔術しなを替え、少しでも今自分の目の前にいる相手こいつより優位に立ってやろう、そしていち早く自分に向かってくる相手こいつの息の根を止めてやろうと考え行動に移すのは当然の流れであった。然しどう足掻こうともこの時点で二人の実力は拮抗しており、戦いは尚も平行線のまま続くばかりであった。


「(うぬぬ……このままじゃキリがねぇのぅ。いっそ向こうのガス欠を狙うんもありじゃが……)」

「(ソーすっと逆ニこッチがガス欠んナって死ニカねネー……とナりゃ――こレっきゃネエっ!)」


 お互い迂闊に動くわけにもいかず睨み合うばかりだった拮抗状態にあって、先に動いたのは流星であった。

「――っシャあア!」

 奇声を発しながら火炎放射器を構えた流星は、そのトリガーを引いて柵木を焼き殺そうとする。沈黙を破る奇襲に柵木は面食らうも、完全に対応しきれぬタイミングでの攻撃と言う事もなかったため、隙を突く形で密かに準備を進めていた大がかりな魔術によって仕留めにかかる。

「(新しい魔術――安定性と強度がまだ不十分じゃがまあ大丈夫じゃろ……)」

 柵木が魔術を発動するのと同時に、彼女の頭髪と尾の毛が静かに、かつ急激に伸びては地面を這うようにして静かに流星の足元へと向かっていく。そして彼が今にも炎を放とうとした、その瞬間。


《ゴゥアッ!》

「!?」


 無数の細かな繊維で成された蛇ともミミズともつかない巨獣が、流星を丸呑みにしてしまった。

 この巨獣こそ柵木が新たに開発した召喚魔術――現状では暫定的に"体毛基盤式魔獣召喚"と呼んでいるもの――である。その名の通り頭髪等の体毛を増量・変形させ、通常では維持コストのかかりすぎる使役対象の肉体として用いる事で安価に強力な存在を召喚・使役することができるという代物であった。


「ん……やはり安定しょおらんけぇかのう、外見や能力が省略されっちもーてから最低限しか適用されよらんわ。然し一応は成功と言えるんかもしれんな。何せついこの間に開発したばかりじゃし、その辺りはしょうがねぇんかもしれんが――」

『――秘――放―――十按――入――凄――』

「ん? あれは――」

 その時、柵木の耳に何やら妙な電子音声が飛び込んできた。詳しくは聞き取れなかったが、明かに聞き覚えのあるそれを、彼女はどうにか思い出そうとする。

 だがそれを思い出すより早く、彼女の思考は中断されることとなる。

「……であるならば、何――ぜぇっ!?」

 柵木は思わず面食らったが、それも無理はなかった。

 何せつい先ほど流星を丸飲みにしたばかりの巨獣が、何故だか内側から尽く焼き破られてしまっていたのである。驚くなという方が無茶というものであろう。


「――よオ。待タセたなあ豊穣! てメーに会うべク、化ケモんの腹かラ舞い戻ッタぜエっ!」

次回、遂に決着か!?

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