第二十二話 肉体ですとらくしょん~肉です~
キメラEを待ち受ける壮絶な最期!
紀和の発動した『肉体触手化』により生じたワイヤーはキメラEの身体を強烈に締め付け、その内側より生じた毒針は肉を容赦なく裂きながら深々と突き刺さり、流し込まれる毒液は瞬く間に細胞を殺し腐らせ、異形の強姦魔をどこまでも苦しめ、追い詰めていく。
「……もう聞こえてないと思うけど、一応馬鹿のあんたにもわかりやすく説明してあげるわ。この『肉体触手化』は、その名の通り自分の体の一部を触手に変える技よ。最もその外見や強度はクラゲの触手というより蜘蛛や蓑虫の糸だから、技をよく知らないと名ばかりだって思うかもしれない。けどその認識は微妙に間違い」
『あぎあうあ、あがああああ!』
「何故って、この糸の内側には極小の毒針が仕込んであるからよ。毒針は相手と密着した状態で一定以上の負荷がかかると飛び出して何十、何百倍にも肥大化しながら相手を刺し貫くように設定されてるの」
『うぐぎごがあごががあああ!』
「勿論毒針だから、激痛を引き起こし細胞を死滅させる猛毒を流し込むのも忘れてないわ」
『ぎいいぎががあげええええ!』
「あと毒針にはアカエイの尻尾にある毒針にあるようなギザギザの突起があって、相手の肉を引き裂き針そのものを抜けにくくする効果もあるのよ」
『げごぐがごげげがげああえ!』
「そんな凶悪仕様なものだから、正直この技が使えることに気付いた時は『幾ら敵相手とは言えこんなの使っていいのかしら』って思っちゃったんだけど、あんたやあの白黒女に犯されて滅茶苦茶にやられたエスカレンジャーの惨状を思い出したらすぐに『まあ別にいいわよね』なんて思えちゃって、それで『女は度胸と上腕ニ等筋肉、何でもやってみるものね』なんて使ってみたんだけど――」
『うぐぎごぇああああああ!』
「――確認するまでもなく、効果は抜群だったみたいね」
その後キメラEは何としてでも毒針から逃れようと『ヴァイオレットアイズ・ゴールデンレプティル』に変じ、残る全エネルギーを傷の再生と解毒にのみ注ぎ込んだ。然しかなり消耗していた為それらは無意味に終わり(寧ろ再生能力が裏目に出て激痛が長引き余計自分を苦しめる結果となってしまった)、結局キメラEは苦しみ悶えながら哀れに絶命した。
「終わったみたいね……ま、『実質的に死がない』と言われる臨母界だから死ぬことはないでしょうけど、だとしても今回の一件で他の奴ら共々臨母界での居住権剝脱と肉体の没収は確実……専門的な事はよく分らないけど、これだけやらかしたんだからどんなに短くても50年か100年は霊界最奥で生き地獄を味わう事になるんじゃないかしらね? ま、あんたはワールドショックの一員っていうより組織に支援されて個人で動いてたって感じだから、活動に深く関与してないっていう理由で減刑されるかも……なんてことはまあないわね。普通に暴れ回ったんならまだしも、第三階層の希少な猛獣を不正に持ち出し無茶な肉体改造をして、第四階層有数の歓楽街として知られる白金通りを破壊させた。更にはそこに向かったエスカレンジャーの半数に当たる女性隊士を強姦……この時点でほぼ全員の議長から私的な恨みを買ってるわね。まず何よりマイノス議長は確実に激怒してるだろうし、普段は気弱なケルベル議長もここまで身内をコケにされたとなると野獣の如く凶暴化したっておかしくないわ。第七階層のフレージ議長なんて言うまでもないでしょうし、第四階層を統べる斎村議長も白金通りは特にお気に入りだから相当キレてるわね。あと強姦って事を知れば第二階層のパトラ議長はあんたとあの痴女コンビを千回惨殺してもまだ足りないくらい恨む筈よ。あとの三人もこの五人の誰かと仲良しだったり尊敬していたり恋仲だったりするからつられてぶちキレるだろうし、相当の重刑――いっそ死んだ方がましだと思えるような耐えがたい苦痛――になるでしょうね。まあ精々覚悟しときなさいな」
振り向きもせずに吐き捨てた紀和は、そのまま他の仲間達へ加勢しようとその場を後にした。当然、背後で起こった不可解な出来事――本来ならばその場に残り続ける筈の死体が、何故か一分と待たずに跡形もなく消滅してしまうという現象――になど、気付く筈もない。
次回、流星VS柵木!




