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第二話 前回は我の嘘~パイレンジャイ出動と言ったな、あれはまだ先だ~





一同が見た光景とは……

―臨母界第四階層西方・白金通り付近―


 敵の気配を感じ取った一行は、ひとまず現場付近の適当な建物に身を潜めながら様子を伺っていた。


「ふむ、こいつぁ何とも……」

「話に聞くより酷い有様ですね」


 突如として現れた謎の怪物により荒らされた町の惨状は、一行の予想を遥かに超えた凄まじいものであった。町中至る所に瓦礫が散乱し、木材は焼け焦げ、路面は見る影もなく罅割れている。建造物など最早影も形もあったものではない。そして、そんな中を時折特撮の悪役怪人に仕えているような戦闘員らしきヒト型生物ヒューマノイドが巡回している。


『では詳細を話すとしようか。事の起こりは本日12時36分頃。白金通り中央の潜孔マンホールを中心とした数か所から、正体不明の怪生物複数種が突如出現、手当たり次第に町を破壊し始めたことによる。現場から送られてきた画像を解析した所、それら怪生物は何れも第三階層の深海に生息する軟体動物の特定大型種に人為的な改造が施された個体であると判明した。今回の件から察するに、悪意ある何者かによって不法に持ち出されたと考えるのが妥当だろう』

 第三階層とは、臨母界で最も広大かつ自然が豊かである為に『美食と怪物には事欠かない』とも言われる階層である。

「やはり第三階層由来のもんじゃったか……」

『ああ、その事実を知ったケルベル議長はかなり落ち込んでいたよ。「自分が管理を怠った所為で多くの人々が傷付く結果を招いてしまった」とね』

 ケルベルとは、お察しの通り第三階層を管理する八議長の一人である。甲虫の化け物が如き恐ろしげな姿に加えて八議長随一の巨体と怪力を誇る彼だが、その喋りは年端もいかない純朴な少年のようで、それ故に心優しく聡明ながらも(頑丈な外皮とは対照的に)傷付きやすい心の持ち主として知られていた。

「相変わらずやたらとデリケートねあの人……」

「物理的に殺すのが実質的に不可能って言われるぐれえ頑丈なのにな……んで、議長。それからどうなったんです? 第三階層の化け物って事は、当然第三階層直属の討伐部隊が動員されたんでしょう?」

『ああ、勿論だとも。だが悲しいかな、数多諸用が重複していたためか十分な人員が確保できなくてね。負傷者と救助隊への攻撃を逸らす役割は果たせていたし、仮に相手が件の怪物だけだったなら不完全な部隊でもどうにか討伐できていたんだろう。だが……』

「余計なもんがおったけぇ部隊は思わぬ苦戦を強いられた、というわけじゃな?」

『まあそうなんだが、少し違うな。部隊は壊滅したよ、殆ど跡形もなくね。怪物と同時に現れた怪人物の集団が想像を絶する手練れだったもので部隊は瞬く間に全滅さ。隊員が蘇生されるのは早くても二ヶ月後だそうだ』

 臨母界の住民は実質的に不老不死であり、死者は平均数ヶ月後に専用の施設で蘇生される。

「人員不足とは言え第三階層の討伐隊を全滅させたって……その集団って一体何者なんですの?」

『件の集団は自らを「ワールドショック」と名乗る自称・悪の組織……まあ要するにテロリストの集団だな。構成人員は件の怪物の他に、幹部と思しきコスプレ集団が七人と、まともな言語能力を持たない雑兵らしきヒューマノイドが大勢だ』

「あの灰色タイツに仮面つけたような変態集団は差し詰め雑魚戦闘員って訳ですね」

『そういう事だな。因みに言い忘れていたが、現場には君らよりも先に別な戦闘部隊を向かわせてある』

「別な戦闘部隊、ですか?」

『ああ。「エスカレンジャー」という、第七階層で近頃新規に結成された若手の部隊さ。第六階層の最新技術が惜しみなく投入された装備も相まってかなりの戦闘能力を誇るそうだ。現場で合流できれば頼もしい助っ人になることだろうよ』

「ほうほう、新人とな。そりゃまた楽しみじゃのぅ。ほなら早速、行ってくるでぇ」


 かくして一行は『ワールドショック』なる集団と、有能であるらしい若手戦闘部隊とが交戦しているという現場へ向かう。


―直後・第一階層にあるマイノスの私室―


《さてと、こんなものだろう。エスカレンジャーとザ・ブッコロガシ・クロッカスが合流すれば、あの馬鹿げた集団など一たまりもあるまい……ともあれこれで一段落、か》

 一応人事を尽くしたマイノスは、一息つこうと茶を煎れる。


 手元に置かれた電話に着信があったのは、彼が茶を二口目飲み終えた直後の事だった。


《おや、誰からだ? はい、此方第一階層のマイノス》

『マイノス議長っ!』

 電話口に聞こえてきたのは、臨母界の軍事・防衛等を司る武闘派揃いで知られる第七階層を管理するフレージであった。

《おや、フレージ議長ではないか。酷く慌てた様子だが、一体どうしたね?》

『マイノス議長っ、聞いてくれ! 一大事だ! エスカレンジャーが、エスカレンジャーがっ……』

《エスカレンジャーがどうした? 彼等に何かあったのか?》

『エスカレンジャーがヤベェんだ!』

《エスカレンジャーが大変なのはよくわかったが何があった? 具体的に言ってくれ》

『ああ、すまねぇ……じゃあ、言うぞ……現場で敵と戦い始めた奴等エスカレンジャーと、連絡が取れなくなっちまったんだ!』

 フレージの言葉に、マイノスは少なからず動揺を隠せなかった。

《な、何だとっ? いや然し、単に彼らが通信機器を紛失してしまったり、戦闘の余波を受けて破損したということではないのか? それか、不調であるとか……》

『残念だがそれはねぇ。俺も第六階層の機械屋連中にそう言ったんだが……通信機器ってなぁ戦闘スーツにも組み込まれてるもんだから失くすことはねぇし、例えぶっ壊れようが装着した奴が生きてりゃスーツそのものが発信機になって本部にそいつの位置と状態を知らせるよう仕組まれてるんだがそれもねぇ。不調については言うまでもねぇだろ。つか、第六階層がこういう仕事で手ぇ抜くとか有り得ねーのは……マイノス議長、あんたが一番よく知ってんだろ』

《ぬう……それもそうだが、然しそうなると、エスカレンジャーの皆は……》

『ワールドショックとかいうバカ共に圧倒されて死んだか、生きてるにしても使いもんにならねーレベルまで痛めつけられてんだろうぜ』

《つまりワールドショックはザ・ブッコロガシ・クロッカスに任せるほか無しということか》

『そうだな。本当なら第七階層ウチから代わりの戦闘要員を派遣するところだが、どいつもこいつも動けねーんでな……』

《それはどこの階層も似たようなものだよ。ともかく今は彼らに託すしかない》

次回、遂に毒殺戦隊パイレンジャイ登場!

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