表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/40

第十九話 紀和さんは同性愛者じゃありませんので~仮に同性愛者だとしてもあんなのには惚れません~




そもそも四凶(TBC)にホモはいない。唯一バイのアイルさえ最近ではヘテロ化しつつあるし。

「私、もしかしたら……貴女を好きになってしまうかもしれないの」


 突如として紀和の口から飛び出した衝撃的な言葉に、キメラEは一瞬耳を疑った。

 何せこのキメラEという阿婆擦れオンナ、生まれてこの方まともに他人を好いた経験が全くと言っていいほどない(というより、元は先天的な精神障害でヒトをヒトとして愛するという行為すら満足にできないという有様であり、現在いまも自分は恋愛になんて縁がないと思い込んでいる)。そんな奴がいきなり、他に類を見ないほど自分好みの相手から『好きになってしまうかもしれない』などと、実質愛の告白同然の台詞を投げ掛けられたのである。困惑するのは当然と言えよう。


 然しそこは腐っても一応クイーンDCDに幹部として認められた七人が一人。困惑しつつも何とか平静を装いつつ落ち着きを取り戻す。


『――えーっと……ごめんなさい、よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれない?』

「え、ええ……いいわよ。……私ね、もしかしたら貴女を、好きになってしまうかもしれないって、そう言ったの」

『す、好き……に? そ、それって……"ライク"の方? それとも"ラヴ"の方?』

「そ、そんなの……ら、ラヴの方に決まってるじゃない。言わせないでよ……」

『!』

 紀和の『言わせないでよ』という台詞は彼女自身からすると『面倒だから言わせるな』という意味合いだったが、対するキメラEはこれを『恥ずかしいから言わせるな』と解釈してしまっていた。結果、気分の昂揚したキメラEは一気に浮かれ始める。


『そうなのね……貴女本当に私を……ああ、何ていい気分……本当に幸せだわ……けど、あくまで「かもしれない」なのよね……』

「ええ、申し訳ないけどまだ気持ちの整理が出来てなくて……本当にごめんなさい」

『いいのよ、気にしないで。不確かなら確かにすればいいの。その為なら私は何でもするわ』

「え、何でもしてくれるの?」

『ええ。だって貴女ったら、私が今まで出会った中で最高の女性なんですもの。そんな貴女に好かれる為なら手段なんて選んでられないわ。さあ、何でも言って頂戴?』

 その言葉を聞いた紀和はキメラEに、普通ならば断られて当然の衝撃的な頼み事をした。その頼み事とは――

「そうね、それじゃあ……貴女の切り札について詳しく教えて貰うっていうのはどうかしら」

 言い方は優しいが、要するに『敵たる自分に手の内を明かせ』という事と同義であった。ともすれば先程も述べた通り断るのが筋というものなのだが、元々ワールドショックという組織にそれ程思い入れがなく『至高の美女を我が物としたい』という目先の欲望に囚われていたキメラEは――

『王頭七栄円陣について? そんなことでいいの? そのくらいならまあ別に構わないけど、でもどうして?』

 といった具合に、快諾したばかりか理由を尋ねてくる有様であった。

「……私、ふと思ったの。貴女への好きって気持ちが不確かなのって、貴女について知らないことが多過ぎるからじゃないかって。それでまず何について知るべきなのか色々迷って……それで真っ先に思い付いたのが、その強さ、戦闘能力だったの。貴女の強さの秘密が知りたい、もし叶うのなら貴女と肩を並べて戦えるようになりたい――そう思ったの。これが理由じゃ、駄目かしら?」

『駄目だなんて言うわけないじゃない、とても素敵で立派な理由だわ。……それじゃ丁度いいし、この「ビリジアンアイズ・レッドホーク」から説明させて貰うわね』

 かくしてキメラEは紀和に説明を開始した。

『そもそも「王頭七栄円陣」は名前の通り王と呼ばれた神格七柱の力を再現するっていう設定の奥義で、それぞれ固有の色と魂、そしてそれらに基づく力を持つの』

「設定とか言ってしまって大丈夫?」

『大丈夫よ、多分ね。それで「ビリジアンアイズ・レッドホーク」についてだけど、まあこれも名前のまんま緑色の目をした赤い鷹みたいな姿でね。空の智者と呼ばれた狡猾な赤い神を再現するっていう設定があるの。色は見ての通り赤、魂は鳥とか背骨のある飛行動物全般で、炎の力を持ってるわ。あと鳥だけに空を飛ぶ能力では間違いなくトップね』

「成る程、よくわかったわ。ありがとう」

『どういたしまして。何ならもっと詳しく見たり触ってみてもいいわよ?』

「え、いいの? 本当に?」

『勿論よ。だって私と貴女の仲じゃない。躊躇わなくていいわ。さ、いらっしゃい』

 誘うように右翼を広げたキメラEに、紀和は心底嬉しそうに駆け寄っていく。そして暫く彼女の美しい身体の独特な感触を堪能したわけだが(読者諸君はとっくにお分かりのことと信じているが)これらの行動さえキメラEを嵌めるべく紀和が仕掛けた罠であるのは言うまでもない。


『それじゃお次は「オレンジアイズ・グリーンスタッグ」ね』

 キメラEは寄り集まった触手を解いてはくねらせ、緑色の甲虫らしき生物へと姿を変えた。スタッグの名前通りその頭部はクワガタムシの一種を思わせたが、同時に他の昆虫らしき形質も併せ持っているかのようであった。

『これも見れば分かると思うけど、名前通りオレンジ色の眼をした緑色のクワガタムシみたいな姿よ。再現するのは億千の雷と呼ばれた凶暴な緑の神。色も緑、魂は昆虫とかクモとかみたいな虫全般、神の異名から分かると思うけど雷――要するに電撃の力を持ってるの。あとこれは虫と何の関係があるんだか個人的によくわかんないんだけど、アメーバみたいな感じで分裂することができるの。まあ身体もパワーも小さくなっちゃうし結構疲れるからあんまり使いたくないんだけど』

「なるほど、確かにそういうのは滅多な事じゃ使いたくないわね……恋人になれたら、その辺りをカバーする方法とかも考えていきたい所だわ」

 などと言いつつ心では『まあ実際はカバーの方法を考える気どころか恋人になるつもりすら毛頭ないけどね』と嘲る紀和であった。

次回、女が男相手とか男が男相手に狙ってやったり狙わずやってしまったパターンだと性別問わずギャグで済まされるけど男が女相手に狙ってやると一気に炎上しそうな作戦が登場。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ