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第十二話 宝石魔女の大失態~要するに舐めプ~





八日も更新サボって本当すみませんでした……次からはもっと早く書きます……

「さて、こんなもんか……」


 前回より十数分、全てのフレイムメイジグーレイを殺し尽くしたガランは、無事に全ての衣類とレッドヴァイパーの戦闘スーツを取り戻し身に纏った状態で最初居たのと同じ位置に佇んでいた。


 そして、それと同じ頃……


「ンどぉぉぉぉしてなのよぉぉぉぉおおおおおお!?」


 闘技場の管制室へジェム・ザ・ソーマの叫びが木霊していた。


「どうしてよ!? どうしてなのよ!? どうしてあの如何にもどうしようもなくバカそうで野蛮そうで強暴そうで単細胞そうで知能指数が脳死レベルに低そうで偏差値ゴミっぽくていつも食べて暴れて寝るぐらいしか考えてなさそうでちょっと色仕掛けかませば簡単に言いなりにできそうで四六時中セックスの事しか頭になさそうなバカ男の典型って感じの木偶の坊トカゲがものの数分で褌一丁から戦闘スーツ装備した状態にまで復活してんのよぉ!?」

「そりゃ、あいつがフレイムメイジグーレイに封印されてた自分の衣類や戦闘スーツを取り戻したからでしょうよ」

 狂ったように喚き散らすジェム・ザ・ソーマに対し、シェイドエッジはあくまでも冷静に答える。

 この時彼女は続けて『あと、貴女がそうやってあいつを心底ナメてかかってるってのもあるんじゃないかしら。何時も思うんだけど、他人を遠目から見ただけでよく考えもせずそうやって極端な考え方で決めつけて見下す所とか典型的な頭の悪い行き遅れの年増女って感じがするし。あと貴女、男相手だと9割がたよく考えもせずにそういう事言ってない?』などと突っ込みたくなってしまったが、ここで下手に刺激してしまうと色々面倒なことになってしまうし、一応これでも組織内では気の合う相方であり友なのだからそう言っては可哀想だし、何より自分はそういった事を言うような柄でもなく、冷静に考えてみると自分でも何故そんな事を思い浮かべてしまったのかさっぱりわからなくなってしまい軽く混乱しかけたので取り敢えず止めておくことにした。

「そ……れは、まあ……そう、だけどっ――じゃあ何であいつは、全部で657体以上も居たフレイムメイジグーレイを、あんな短時間の間にたった一人で軽く殲滅しちゃってるのかしら? フレイムメイジグーレイってグーレイより確かに強くなってる筈なんだけど。フレイムルビーで強化されてるから、22体も集まって全力尽くせば地球とかいう異世界の東で作られたっていう角の生えた巻貝みたいな軍艦――確か、グツとかルツとかいう名前だったかしら――それを一撃で爆発四散させることも可能なくらいの火力あるのよ? なのにあいつに傷一つつけられないとかどういうことなの」

 心中では『何で異世界の軍艦が基準なの? 22人って中途半端過ぎない? 軍艦に角って何? 大砲とか鉄砲とは違うの? っていうか巻貝みたいな軍艦ってどんなの? 幾ら異世界でもそんな変わった形の軍艦なんてないでしょ? そもそも何で貴女が異世界の軍艦について知ってるの? どういうことなのって言ってるけど貴女がどういうことなの?』という具合に突っ込みたくてならなかったが、やはり下手に刺激してはいけないと思いあれこれ考えた結果――

「……魔術には疎いからその辺りはよくわからないけど、多分運とかが関わってるんじゃないかしら」

――このように、適当な返答でその場をやり過ごすことにした。然し、元来占いやまじないの類い、また運勢という言葉そのものにも敏感ジェム・ザ・ソーマにとってそれはまさに青天の霹靂であった。

「運、かぁ……そうね。そうよね。さっきまでの惨敗は偶々だったんだわ。ただ、運が悪かっただけなのよ。有り難うシェイドエッジ、お陰で間違いに気付けたわ。そうと決まれば早速準備に取り掛からなくちゃ!」

 因みに、彼女が身に付けた無数の宝石装身具ジュエリー類も全て趣味と(彼女なりの)実益を兼ねた開運グッズの類である(特殊な魔術具であるとかそういうことは一切ない)。

「準備って、何をするの?」

「決まってるでしょ? 占いで今日の運勢をチェックして、それを参考に次のグーレイ軍団を拵えるのよ。あと私自身の運勢を上げる開運グッズも用意しなきゃ! あ、もし良かったら貴女のも用意しましょうか?」

「有り難う。でも遠慮しておくわ」

「あら、そう?」

「ええ……動くとき邪魔になってしまうし、もし壊したりしてしまったら申し訳ないから」

「そう、なら仕方ないわね。まあ、今回はこれ以上貴女の力を借りなくて済みそうだけど」

「私としてもそうである事を祈ってるわ(何だか無理な気がするけど……)」


 かくして各種占いをチェックし尽くしたジェム・ザ・ソーマは自身の運勢データに基づく様々な開運グッズを所狭しと身に纏い極限まで運気を上げた状態で(これまた運勢データに基づく)次なる特殊なグーレイを生み出しガランにけしかける。


「今日のラッキーカラーは緑、今日のラッキーエレメントは風。そして『何事もスピーディーな行動を心掛けるように』とあったわ……よって次のグーレイは、これよ! 行きなさい、ハリケーンメイジグーレイ! ハリケーンエメラルドで三倍になったスピードであの筋肉ダルマトカゲを切り刻んでやるのよ!」


 といったような流れを経て繰り出されたハリケーンメイジグーレイ――フレイムメイジグーレイの赤色だった部分を緑色に変え、スピード特化という特性を意識してか武器を細長く繊細な刀剣らしき武器で統一した仕様変更個体――は、自慢のスピードと武器の切れ味を以てガランに向かって行った。然しその戦果はフレイムメイジグーレイと大差ないものであり、寧ろガランがレッドヴァイパーのスーツを取り戻しパワーアップ(厳密には『弱体化を脱し本来発揮すべき力を取り戻した』)為に余計悲惨なようにも感じられた。


 然しその後もジェム・ザ・ソーマは諦めなかった。


「こ、これはきっと何かの間違いよ……多分占い師の嶺屋みねやさんが不調だったんだわ。何せ始めるのは簡単でも生き残るのが酷な業界だもの、不調の日くらいあるわよ。というわけでここは馬庭まにわさんの占いを参考にして……よし、ラッキーカラーは青、ラッキーエレメントは水ね。そして『焦らず慎重に。狙いを定めて確実に目標を達成しなさい』とあるわね……なら次のグーレイはこれで決まりね! 行きなさい、ウォーターメイジグーレイ! 索敵能力やバランス感覚、視力、忍耐力とかを三倍に強化するウォーターサファイアの力と、ロート・ハンネル教授の理論を参考に私が作った新型武器で、あの低脳愚劣トカゲを蜂の巣にしてやるのよ!」


 上記のような経緯で精製されたウォーターメイジグーレイを使えば、今度こそガランを殺せる。飛び道具で取り囲んでしまえば幾ら頑丈でも大丈夫だ――等と考えていたジェム・ザ・ソーマだったが、然しやはり彼女は詰めが甘かった。

 確かに、今までグーレイ達が惨敗を喫してきたのは『接近し過ぎてしまったため』という理由が大きい。しかも、生身の状態でさえ凄まじい格闘能力を戦闘スーツによって強化してあるガランが相手であるのだから尚更であろう。故に射撃武器で距離を取って戦わせるという発想そのものは決して悪くなく、寧ろ最良であったとすら言えた。


「それにしてもあの武器は何? 結構変わった形をしているようだけど」

「よく聞いてくれたわね。その通り、あれは銃でもなければ弓でもないわ。でも、だからと言ってその二つより原始的でもなくて、寧ろより進歩した――所謂ミサイルに近いの」

「ミサイル?」

「そうよ。まあ、近いと言っても『強いて言えば』のレベルだけどね。弾道を自由に変えられるように発射装置代わりにあの弾一つ一つを腕輪型の小型端末で行うように設計してあるの。そして、一定数の弾を使い回すことで弾切れの危険や装填の手間もかからなくなってるわ。つまりあれは、火薬や爆薬で吹き飛ばすんじゃなく、鋭利に加工された弾そのもので直に相手を攻撃するって代物なのよ」

「そ、それは凄いわね(……ん? でもちょっと待って、それって危ないんじゃ――)」

 シェイドエッジの予想は的中した。確かにウォーターメイジグーレイの射撃武器は序盤こそガランを苦戦させるかと思われた……のだが、爆破でなく刺突によって対象を破壊するよう設計されたその弾はレッドヴァイパーの戦闘スーツを貫くには至らなかった。身長2.3m、体重130kgという巨体を誇る彼に酷使される事を想定して設計された為であろう、その戦闘スーツは余りにも頑丈過ぎたのである。

 ならば一点に何度も攻撃を集中させれば破壊できるのではないか、とは当のウォーターメイジグーレイ達が真っ先に考えた事であった――のだが、ここで彼等にとって予想外な出来事が起こってしまう。

 飛ばした弾の幾つかをガランに掴まれ、そのまま奪われてしまったのである。


「グレレグレー!」


 ウォーターメイジグーレイ達は慌てて弾を奪い返そうとするも時既に遅し。ガランは彼等が制御装置を作動させるよりも早く奪った錐型の弾を飛んできた方へと勢いよく投げ返す。結果、制御装置が誤作動を起こしたことでウォーターメイジグーレイ達は次々と自滅していき、最終的には殆どガランと戦う事なく全滅してしまったのであった。


「……ねえ、ジェム・ザ・ソーマ? 私思うんだけど――」

「ま、まだよ! まだ私は負けちゃいないわ! だってまだ四回でしょう!? まだまだこれからよ! いや寧ろ、ここからが本番ってぐらいだわ! 占いは外れてからが本番なのよ! 有名な『傍立者式タロット』の祖と言われるカリスマ占い師、虻道流あぶどりゅう武凡真堂むはんまどう先生だって『外れた結果を乗り越えた先にこそ真実が見える』って言ってるもの!」

「そ、そうなんだ。何か深い言葉ね……(傍立者式タロットって何よ!? っていうか虻道流・武凡真堂って誰!?)」

「というわけで外れた結果から転じてランブ・昼田・リング先生の占いを見ていくわ!」「(結局占いから離れられてないし! 『外れた結果を乗り越える』って、占いにばかり頼ってないで自分で一から考えて行動しろって事なんじゃないの!?)」

「あ、あったわ! ラッキーカラーは黄色、ラッキーエレメントは大地! アドバイスは『何が起こってもじっと耐え抜き力強く在り続けよう』……なら次のグーレイはこれだわ! 行きなさい、ランドメイジグーレイ! ランドトパーズで三倍に強化されたパワーとタフネスで、あの馬鹿面トカゲを叩きのめすのよ!」


 そうして送り出されたランドメイジグーレイは、組み合わせる事で盾にもなるガントレットの如き武器を装備した大柄な個体であった。然しその性質故敵を至近距離で殴らねばならず、結果としてウォーターメイジを除く今までのグーレイ達同様ガランに惨殺されてしまったのであった。

次回、ガランVSシェイドエッジ! 更に一見常識人のように見えるシェイドエッジの衝撃的な本性が明らかに――なるかも(忍者親子並みの言い回し)

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