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第一話 もうすぐ来るバカ~出動、毒殺戦隊パイレンジャイ!~





元々はツイッターで頂いたリクエスト「TBC(反乱の四凶)がどっか遊びに行く話」を書いていた筈なのだが、何故かこんな事になっていた……リクエストされたコンセプトを原形留めないレベルまで歪めてしまった無能私許……

―臨母界第四階層中心部にて―


 死者に第二の生涯を与える異界"臨母界"の第四階層。そこは娯楽・商業・物流の中心地であり、特にその中心地は常に住民たちの笑い声と笑顔の絶えない陽気な歓楽街であった。


 そしてそんな歓楽街の大通りを並んで歩く者達があった。


「何時来てもいいもんだなぁ、この街は」

「本当よねぇ。治安もいいし」

「暗い気持ちも自然と明るくしてくれる温かみがありますよね」

「うむ、全くじゃ。飯も美味えしなぁ」

「ここの人達のサービス精神は私も見習わなきゃって思いますわ」


 楽しげに語らう四人と一匹からなるその集団の名は『ザ・ブッコロガシ・クロッカス』。『TBC』の通称で親しまれる、臨母界(及び『ヴァーミンズ・クロニクル』読者の間)では説明不要なほど名の知れたバンドグループである。つい先日まで臨母界の全階層をマタに駆ける激務をこなしていた彼等は、久々の纏まった休日を皆で集まって観光に使おうと揃って第四階層へ向かっていたのである。


 そして、そんな一種のスターである五名の到来は歓楽街の商人や住民達を大いに沸き立たせた。


「おっ、マランさんじゃないのさ! 実は第三階層の農場からいい無臭ニンニクが入ってるんだけどどうだい? 安くしとくよ?」

「あ、ガイアー先生に永谷さん! ようこそお越し下さいました! 実は先日例のアレが手に入りましてね……」

「んぉう、柵木お嬢ではないですかい! こりゃ丁度良かったぜぇ。昨日入荷したばっかの新作があるんですがねぃ、一丁兼ねてブチかましてきませんかい?」

「紀和さん紀和さんっ! この前開発中だった新作の踊り子風衣装、遂に完成したんですけどどうですか? 今ならアクセサリーもセットでついてお得なんですけどっ!」


 陽気でエネルギッシュな商人達は、一行の姿を見るや否や目を輝かせながら群がってはそれぞれに嬉々として様々な商品を差し出し、一行もまたそれらを堪能していく。


 かくして四人と一匹の観光は、このまま楽しく陽気に過ぎていくものと思われた。だが、そうは問屋が下ろさぬぞとばかりに事件は巻き起こる。



「うぎゃあああああああああ! 助けてくれぇぇぇ!」

「化け物だっ! 化け物が出たぁぁぁ!」

「誰か、誰かぁぁぁぁぁあああああああ!」

「たっ、助けてぇぇぇえええ! 殺されるぅぅぅ!」


 昼下がり。賑やかな繁華街の片隅に、突如として破壊音と人々の悲鳴が響き渡る。見れば歓楽街西方を通る路面の数か所から太長い蔓か触手のようなものが数本飛び出しており、辺りの建造物を手当たり次第に叩き壊している。突如現れた正体不明の怪物に、人々はなす術もなく逃げ惑うばかりであった。


―事件現場からそこそこ離れたデパートの四階にあるファミレスにて―


 繁華街に怪物が現れた頃、一行はデパートでの買い物を終えてファミレスの窓際で食事を取っていた。


「な、何じゃ? 一体何が起こっとんなら?」

「どうやら西の繁華街で事件が発生したようですね。それもかなり大規模な」

「それは言われなくてもわかるわよ。問題はそれが何かって事でしょ」

「……今調べてみたけど、どうやら西の方で得体の知れない化け物が出たようね。私たちも救助に向かうべきかしら?」

「いや、その必要はねぇんじゃね? 俺らが動くまでもなくマイノスのオッサンが救助隊と討伐隊派遣するだろ」

 かくして四人と一匹は食事を済ませ、会計の為に店員を呼ぶ。

「お会計34890円になります」

「ほんなら35000円からで頼まぁ」

「スゲーなこの店。こんだけ食っても余裕で五万切るのかよ」

「本当それよね」

「安くて美味しいと話題になっているお店だと聞いて来たわけですが」

「まさかこれ程とは、本当に驚かされたわねー」

「次からは第四階層来たらここで飯食うっきゃねぇなぁ。さて、次は何処どけぇ行こうか――」

 刹那、柵木の携帯電話が低い音を立てて振動する。

「ん、着信か。見たことねぇ番号じゃなぁ、誰からじゃろ――はい、もしもし」

『柵木お嬢、私だ! マイノスだ!』

 電話をかけてきたのは、臨母界を管理する八議長の筆頭にして第一階層の管理者でもあるマイノスであった。

「およ、マイノス議長じゃねぇか。どしたんなら、そねん慌ててから。天麩羅鍋が火でも噴いたか?」

『いや、生憎最近は揚げ物自体作らなくなっていてね。だが非常事態には変わりないぞ』

「ほう、まあ臨母界ここらは何時もどっかこっかで非常事態じゃと思わんこともねーけぇ、何があったんなら?」

『よくぞ聞いてくれた。今回貴女に連絡したのは他でもない。君らも既に知っていることだろうが――西の白金しろがね通りで起こった怪物騒ぎの件だ』

「おう、知っとるでぇ。ネットでも大騒ぎじゃしな」

『そうか。よし、だったら話は早い。柵木お嬢、すまないが急遽他の皆と共に白金通り向かっててくれないか?』

「町へ向かうのは構わんが、妾達は何をすりゃええ? 怪我人の救助か?」

『いや、怪物とそれに付随する敵対勢力の駆除だ。負傷した町民の救助は既に完了しているんだが、怪物とそれを操る集団がどうにも手強くてね。』

「了解じゃ」

『では、現場に到着したら連絡をくれ。現場が危険なようならその付近でも構わん。詳しい説明はその時にしよう』

「おう、ほんならまたなー」

 柵木はマイノスとの通話を切り、背後で話を聞いていた仲間達に向き直る。

「おめー等、ちゃんと聞いたな? 八議長筆頭直々のご指名じゃ、やるからには全力でブチかますでぇ」

 かくして一行は第四階層西方の白金通りに向かう。

次回、街に向かった四人と一匹が見たものとは!?

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