シーズン最終日
最終日の試合はブロッサムズ対サンフラワーズのカードが第一試合、その試合が終了した後に第二試合としてコスモス対デイジーズの試合が行われる。
先発はブロッサムが真由でサンフラワーズが真紘、コスモスはアンダースローの浅野さんでデイジーズは選手兼任監督の赤石さんが予想されている。
気になるのは空模様、大事な一戦なのだが曇り空で天気予報で確認したところ降水確率も四十パーセントといつ降りだしてもおかしくない状況だった。
降りだしたとしても試合進行が不可能になるほどの雨にはならないとは思うが、万が一そうなって来週に持ち越しとなるとまた色々と条件が変わってくる。
具体的にその影響を考えるのであれば真っ先に思いつくのがコスモスが有利になる一つの事実、渡瀬さんを最終戦でもう一度登板させることが出来る可能性が高くなる。
プレーオフの日程は正式には未定だが同じ週に行われるとは思えない、それを踏まえるとやはりコスモスのような絶対的エースを持つ球団が有利になるのは確かだろう。
いずれにしてもシーズン最終戦が直接対決ではない以上、この試合に関して言えば自力でどうにか出来るのは自分の試合に勝つことだけだ。
仮にサンフラワーズがこの試合に敗れたとしてもコスモスも敗れれば再び二チームが首位で並びプレーオフが行われることになるが、それを当てにしていいはずがない。
そうなると今日の試合は後が無い総力戦だという姿勢で臨むべきだ、使える戦力は全員つぎ込んででも勝ちに行く必要がある。
その点ではサンフラワーズは投手力に優れている、先発の真紘に加えてリリーフに詩織がいる盤石の継投は他の球団にはない強固なりレーだと言える。
本来であればそこに加えて昨日先発した小森さんも緊急時には備えて貰うのが理想なのだろうが、肘の違和感でマウンドを降りている以上それは酷な話だ。
そして何よりその状態が気にかかる、小森さんに話を聞いておきたい。
そう考えて俺は試合前に小森さんの姿を探して声を掛けた。
「小森、肘の状態はどうだ?」
「幸いあの時にそのまま選手生命が終わってしまうような致命傷ではなかったです、宍戸さんと成宮さんがいるなら私がプレーオフで登板する必要もないでしょうし」
「戦力的には小森も見劣りしないと俺は思ってるよ、ただ一試合限定ならあの二人でも乗りきれるから無理に小森が投げる必要がないだろうっていうのは同意だ」
小森さんも十分いい成績を残しているためプレーオフで登板するだけの選択肢になり得る存在ではあるのだが、負傷を押して登板する必要があるとまでは言えない。
「とりあえずしばらく時間を置いてからならもう少し投げられそうです、そうはいっても来年一年また先発でローテーションっていうのは恐らく厳しいですけど……」
「それはそうだろうな、肘への負担を考えた起用を考えていく必要がありそうだ」
登板を制限しつつのリリーフ投手としてなら小森さんももう少し野球を続けることが出来るかもしれない、
「本当ならこんな状態になった時点で今年限りで引退するべきなんでしょうけどね、無理に来年も続ければチームにも迷惑をかける可能性も高いですし」
そうやって口にすることで確実に近づいている終焉の時を改めて実感してしまったのか、小森さんは今にも泣き出しそうな表情を見せる。
「それでもやっぱり私は野球が好きです、どんなに周りに迷惑をかけるとしても最後のその瞬間までやめることなんて出来ないです。自分勝手だって分かっていても……」
小森さんの表情や声色、そういったもの全てから小森さんが本当に野球が好きなんだというのが痛いぐらいに伝わってきてこちらの心情も揺り動かされる。
「……小森は必要な存在だ、まだ野球をやめる必要なんて無い。肘の状態も全てきちんと話し合った上で無理をしなければずっと野球を続けられるさ」
実力的に衰えたわけではない、肘の爆弾の影響さえなんとかなるのであれば小森さんは文句なしに戦力になる実力があると今季に残した数字が証明している。
それでも故障だけはどうしようもない時がある、更に言えば小森さんの肘の状態は既に時間の問題であり楽観視することなどとても出来ない状況である。
それを考えれば俺の発言は余りにも無責任で根拠のない言葉だ。
「ありがとうございます、そう言って貰えると嬉しいです」
それでも小森さんはそう言って笑顔を見せてくれた。
一番 キャッチャー 安島愛里
二番 レフト 常見
三番 センター 桜庭
四番 サード 樋浦
五番 ライト 広橋
六番 ファースト 黒谷
七番 セカンド 国方
八番 ピッチャー 宍戸
九番 ショート 四ノ沢
シーズン最終戦のオーダーはこのような形になった、セカンドの国方が一つ打順を上げた以外は開幕時のベストオーダーと同じオーダーとなっている。
ここ数試合、コスモスのエース渡瀬さんを攻略するという目的のもとで動かした打順をベストの形に戻したというのが実情だ。
今シーズン特に貢献度が高かった選手の一人として挙げられるのは一番を打つ愛里だ、今日の試合結果次第でまた変動するが現時点では打率は三割八分を上回っている。
これは打率四割を記録したことで首位打者が事実上確定しているブロッサムズの彩音に次いで二位の非常に高い打率となった。
打率以外に盗塁でも一位の千隼に次いで二位と足も大きな武器となっている。
どちらの部門も差が大きく、この最終戦では追いつけないのが確実であるためタイトルには手が届かないのが少し残念ではある。
しかしそのような好成績を捕手という守りの面での負担が大きいポジションで残したというのは驚異的といって間違いないだろう。
その愛里に続く二番の常見も打率三割をマーク、バントはあまりしないタイプだったが攻撃的二番として大いに機能してくれた。
そして三番の桜庭も打率三割二分を超えて巧打者としての実力を証明した。
長打こそ少なかったものの、守備面でもセンターという重要なポジションを鉄壁の守りで支えてくれたことを考えればとてもいい仕事をしてくれた。
四番を打つ樋浦も仕事をしてくれた、序盤はチャンスに萎縮することも多かったが試合を重ねるごとに少しずつチャンスでも安定した結果を残せるようになった。
本塁打数はリーグ四位だが、チーム一の強打者として主軸を支えてきたことに加え昨日の渡瀬さんから放った一発などもあり貢献度は数字だけでは測り切れない。
樋浦がいなかったらサンフラワーズが今の位置にいることは出来なかっただろう。
五番の広橋は打率二割を少し超える程度と安定感に欠けるものの、意外と印象深い場面で打ってくれるケースが多くその数字よりも頼りになったと俺は評価している。
本塁打でもチームで樋浦に次ぐ二位につけており、荒削りではあるもののしっかり結果を残してくれたと言っていいはずだ。
続く六番の黒谷も大切な存在だった、五番の広橋が荒削りな分どうしてもランナーを返しきれないケースが多かったのだがそこで走者を掃除してくれた。
勝負強い打撃で得点圏打率は三割後半、それに伴い打点も多く記録した。
下位を打つ国方と四ノ沢については打率二割前半、しかしこの二人も二遊間を安定して守りで勝利に貢献してきた。
特にサンフラワーズの投手は奪三振率の高いタイプより、打たせて取るタイプの方がメインであるだけにこの二人の守備が手堅いというのは大きなプラス要素になった。
そんな選手たちをベストな形で最終戦で起用できたのは本当に良かったと思う。
状態は良いあとはこの最終戦をしっかり勝ちきる事ができるかどうかだ。
試合開始開始まであと一時間と迫っていた。




