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公式戦 VS シンシア・コスモス①

 この試合の先攻はコスモス、サンフラワーズの小森さんが先にマウンドに上がる。

 最近好調で警戒しないといけない一番の千隼に対して外のスライダーで三振にとる。

 続く二番を打つ羽倉さんをサードゴロに打ち取ってテンポよくツーアウトとする。

 そこから三番の佳矢にレフト前ヒットを浴びてランナーを出してしまったが、四番の日下部さんをレフトフライに打ち取ってスリーアウトチェンジ。

 初回からランナーを出してしまいはしたものの小森さんの調子は悪くなさそうだ。

 自分の間合いでしっかりとしてピッチングが出来ている、その上で単打を浴びるのはある程度仕方がないことであるし失点に繋がるほど打たれるとも思えなかった。

 追い求めるべきなのはランナーを一人も出さないという究極の理想ではなく、失点をしないことであるのだからこれで十分な内容だと言えるだろう。

 仮に三者凡退に抑えていても小森さんが自分のピッチングが出来ていないとすればそちらの方がずっと不安だったはずだ。

 小森さんの出来は悪くない、その一方で渡瀬さんはどうだろうか。


 先頭打者の愛里が打席に入る、ここまで愛里は通算打率では四割弱という好成績を残しているが渡瀬さんに対してはあまり相性が良くなく対戦打率は二割前半。

 左対左であることもその理由の一つだろう、愛里は特別左が苦手というわけではないのだが渡瀬さんが左を得意としているタイプで打ちにくいことは否めない。

 対戦打率が二割前半というと相当に酷いように思えるが、渡瀬さんが相手だということを考えればまだまだいい成績と言っていい部類だ。

 対戦打率一割台というのも珍しくないし、ましてや渡瀬さんの得意とする左打者となると二割打てている選手の方が少数派であり殆どいない貴重な存在である。

 それを考えると愛里が特別渡瀬さんを苦手にしているというよりは、単純に渡瀬さんの実力の高さが愛里を押し込んでいると考えるのが自然だろう。

 そしてこの打席はアウトローいっぱいのストレートを空振りして三振に終わった。


 二番に起用したセカンドの国方も三振に倒れて連続三振でツーアウト、そこから三番の桜庭が追い込まれてから一球ファールで粘ったものの最後はピッチャーゴロ。

 球数自体も少ないが、それ以上に渡瀬さんの投球テンポの良さによりかなり短時間で一回裏のサンフラワーズの攻撃は終わった。

 渡瀬さんの一番の持ち味はこの安定感なのだろう、俺は彼女が今日まで先発した全二十四試合をチェックしているが調子が悪いと感じられる試合は一つもなかった。

 一発勝負という場面ならともかく、こうして何度も先発登板していく形式で争う以上安定して勝てる勝率の高い投手に勝る存在はないと評価するべきなのだろう。

 事実、ここまでの渡瀬さんは二十勝〇敗で自らがマウンドを降りた後にチームが負けた試合はあったがそれを含めても最も勝てる投手であることは疑いようがない。

 しかし今日この試合だけを見れば一発勝負だ、そしてこの試合が優勝を決めるとても大きな一戦であるというのは非常に大きい。

 もちろん一発勝負だから渡瀬さんに勝てるという話ではない、長いシーズンで一番勝てる投手は一発勝負になっても勝てる投手に分類されるのは間違いない。

 それでも、やはり長いシーズンと一発勝負というのはまた別物であるという考えを俺は捨てることが出来ずにいる。

 正直に言うならば何度繰り返したとしても今の戦力ではシーズン通して渡瀬さんに勝ち越すことは不可能だと思う、そのぐらい渡瀬さんは素晴らしい投手だ。

 それでもこの一試合に限定して言えば勝てる可能性が無いわけではない、そのぐら一発勝負には不確定な要素が多い。


 その後の両先発の投球内容は対照的だった、小森さんがランナーを出しつつも得点は許さない投球をする一方で渡瀬さんは一人のランナーも出さない快投を見せる。

 三回表のコスモスの攻撃、この回の先頭打者は九番ピッチャーの渡瀬さん。

 好投手である彼女も打撃に関してはさっぱりでありあっさりと三振に終わる。

 楽にワンナウトを貰ったあと一番の千隼が二打席目を迎える、先ほどは三振に切って取ったものの相変わらず油断出来る相手ではない。

 ワンボールからの二球目、低めに曲がり落ちるカーブを逆方向へと追っつける。

 千隼の俊足に備えて前進していた内野陣だが、その三遊間に打球が飛ぶ。

 ショートの四ノ沢が必死にグラブを伸ばしてボールをワンバウンドでグラブに収め、踏ん張りながら一塁に送球するもワンバウンドの送球となってしまう。

 その分早く俊足の千隼が一塁を駆け抜けてセーフ、内野安打となる。

 一死一塁、そしてその一塁ランナーが事実上盗塁王が確定している千隼となる。

 当然小森さんも盗塁を警戒する、鋭い牽制でリードを通常より小さく抑える。


 それでも二球目、普段より小さいリードのまま千隼がスタートを切る。

 捕球した愛里が二塁にワンバウンドながら低めの良いコースに送球したが、それでも千隼の盗塁を防ぐことは出来なかった。

 一死二塁、二塁ランナーが千隼であることを考えればワンヒット一点という場面。

 二番の羽倉さんに対して小森さんが追い込んでから最後は胸元に食い込むシュート、右打者の羽倉さんからすると打ちにくいボールだけに打ち損じる。

 打球はサード正面へのゴロ、これでは二塁ランナーの千隼が進塁出来ない。

 二死二塁でバッターは三番の佳矢、先ほどヒットを浴びていることもあるしそれ以前に強打者であることを考えるとなかなか勝負しにくい相手だ。

 しかし続く四番の日下部さんも強打者である以上簡単に歩かせるわけにもいかない。

 基本的にはボール球で勝負して、どうしても必要なら四球という形になるだろう。

 長打のある佳矢が相手だが、ワンヒットで一点という場面であるだけに外野はその一点を防ぐために通常より前進するシフトで守る。

 愛里のリードに従って小森さんが厳しいコースをボール球で攻めるが、佳矢がそれに釣られることなく見送りツーボールとボールが先行した。

 それでもここはストライクを投げない、愛里が外のボールになるカーブを要求する。

 そして小森さんがその要求通りに僅かにボールになるカーブを投げたが、それに対して佳矢がバットを差し出した。


 普段は豪快な長打が多い佳矢らしからぬ、ヒットだけを狙ったバッティング。

 打球はセンター方向に飛ぶ、合わせただけの打球だがそれだけに外野の前に落ちそうな中途半端な当たりとなる。

 その打球に対してセンターの桜庭が良い飛び出しを見せた、素早いスタートから打球に向かって全力で走り最後はスライディングしながらグラブを差し出していく。

 打球がノーバウンドでグラブに収まった、これでスリーアウトとなる。

 相変わらず見事な守備だった、外野守備では間違いなく桜庭がナンバーワンだ。

 とにかく打球への判断が素晴らしい、一歩目が早いため守備範囲が広くなる。

 桜庭のおかげで今年防ぐ事が出来たヒットは決して少なくない。

 小森さんがマウンド付近で桜庭を待ち、ハイタッチをしてから共にベンチへ戻る。

 今の桜庭のファインプレーで小森さんも随分助けられたはずだ、これで波に乗っていければ良いのだが。


 いい流れで迎えたかに思えた三回裏のサンフラワーズの攻撃、今日は七番に下った樋浦に打順が回ったがハッキリ言ってしまえば全く見るところのない打席だった。

 ワンストライクからバットを振ったが中途半端なスイングで空振り、追い込まれてからも再びバットを振るが今度もヒットを打てるスイングとはいえない代物だった。

 樋浦自身は渡瀬さんとの相性は決して悪く無い、対戦打率は二割八分を超えているし通算打率より低いとはいえ他の選手と比べてもかなり高い数字だ。

 それでも今の状態では誰から見てもとても打てるようには見えないだろう。

 続く八番四ノ沢と九番小森も全く打てる気配なく三振、しかしこれは仕方ない。

 サンフラワーズに限らず他の球団で見ても下位打線を担うような選手の打力では渡瀬さんに対しては手も足も出なくて当然だと言える。

 主軸クラスでも早々打てない投手を下位打線に攻略しろというのはあまりにも酷だ。

 六回を終わってもお互いに得点は無いまま試合は展開していった。

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