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第23話 蒼天の御旗の下に①

 紙吹雪の舞う大通りを闊歩する黒騎士の姿は、その堂々たる姿を持って周囲を圧倒していた。


 列の先頭には凱旋してきた国軍の将軍達が居並んでいるが、戦歴に乏しい人間が中心であり、凱旋軍の堂々たる威容は、一重にこの黒騎士の存在に頼っているのだった。


 しかし、その黒騎士の表情を隠す仮面からこぼれ出る目の光は、どこか悲しみの色を称えているように思えた。



「しっかし、反乱側もだらしないよなあ。あれだけ騒いだのに、あっさり負けちまうし」


「だよなあ。あの黒騎士だって、来週の凱旋式では例の巫女に頭を下げるんだろ? なんか複雑だな」


「でも、反乱側がここまで来たら俺らもどうなるか分かったもんじゃねえしな。前みたいに我慢するってのは、皇帝陛下への弔いもあったけど」


「でもよ、巫女が出てくるんだったらまた、馬鹿どもが騒ぐんじゃねえか?」



 周囲の大人達に声が耳に届く。


 帝都に住む民の間ではいまだに皇室に対する思慕や同情が残っている。地方では、反乱に走り、巫女や共和政権側に同調、支持に動く者が多かったようであるが、オアシス国家群の反乱のように純粋に皇室の弔い等に動く勢力もいくらもある様子。


 そして、今の民の支持は政権や巫女ではなく、軍とその中にいる黒騎士へと向いている様子だった。


 反乱から一年余。帝都の民すらも掌握できていないという事実が、そこには存在していた。



(来週……か……)



 人混みの中を通り抜けるアイアースは、そんなことを考えながら固く拳を握りしめた。



 郊外へと出ると、セラス湖へと流れ込む小さな川を上っていく。


 そこには森に囲まれるように草木がはえそろった小さな牧があり、アイアースはそこの厩に身を寄せていた。


 リアネイアが万一に備えて用意していた場所であり、クランをはじめとした多くの名馬が身体を休めるために集まっていたのだ。


 管理している馬屋は、件の落馬事故の頃からの顔見知りで、万が一密告されて捕らえられたとしても、それは、それまでのことわずか数日の間にあるかも知れないことを気にするよりは身体を休めるべきだ。とアイアースは割り切っていたのだ。

 とうの家主もまた、密告をしたところで口封じに殺されるという事は分かっていたため、かつての主を快く向け入れてくれていた。



「ふう…………」



 星の明かりを頼りに身を休めるアイアース。


 ふと、一年半前の出来事が脳裏をよぎる。あの時、母と一緒に見た星空も同じようにきれいだった。



『眠れぬのか? 小僧』



 そんなアイアースのことを察したのか、静かに側に寄ってきたクランが話しかけてくる。



「なんとなくね」


『姉の姿を見ることができて、満足してしまったか?』


「そんなつもりはない」


『…………人の死に場所についてとやかく言うつもりはない。主も私の忠告を聞くことなくそなた等の元へ向かい、そして死んだ。貴様も私の忠告など聞くまい』


「せっかくわがままを聞いてくれたのにな。すまない」


『ふっ……人の勝手さなど慣れたモノだ。だがな、二度も続けて主を失うようなへまをするもりはない』


「えっ!?」



 そう言ったクランの顔は、どこか笑ったように見える。


 そして、月明かりに照らされる牧に、幾人かの足音が響いた。


◇◆◇



 アイアースは、先日の光景を思いかえしつつも懐かしい空気を感じながら大広間へと足を踏み入れる。その姿に、先ほどまで混乱の渦中にあったそこは、現在不気味に静まりかえっていた。


 皆が皆、突如現れたアイアースへと視線を向けていたのだ。



「皆、頭が高いぞ。私を誰だと思っている?」



 歩みを止め、居丈高にそう口を開いたアイアースに、沈黙していた兵士や文官達がざわめきはじめる。


 公式には牢獄内で死亡したとされるアイアース。

 一部の人間だけが、彼に従うキーリア達によって救出されたことを知っていた。

 だが、フェスティアと登場に続いてのアイアースの出現。

 自分が夢を見ているのかと勘違いするモノは多かったのである。



「姉上を……、そして、帝国を返してもらうぞ。シヴィラっ!!」



 冷静な問いかけから、怒りをこめた叫び。


 互い違いの双剣を抜き放ったアイアースに対し、その場にて対峙していた信徒兵、国軍兵、叛徒兵、ヴェネディア傭兵達が一斉に向き直る。

 彼らから見れば、今のアイアースは肉食獣の檻に自分から飛び込んできた草食獣と変わりはない。



「アイアースっ!! くっ、貴様っ!! 放せっ!!」


「おっとっと、動かないでくださいねえ姫様」


「何をっ――――うっ!?」


「感動のご対面といったところですが、皇子殿下は自らのお立場を忘れていらっしゃいますな」



 今にもアイアースの元へと飛びついていきそうなフェスティアを抑え、催眠魔法をぶつけたロジェスは、アイアースを射殺すかのような冷たい視線で見つめながらそう口を開く。


 遠き辺境にあった幼少の皇子に手を出すことは時間と労力の無駄であり、生きている事実を眼前の皇女に突き付けておけば良かった。


 しかし、こうして目の前に現れてしまえば、どんな犠牲を払ってでも捕らえるという選択肢しか無い。

 国政を混乱させた反逆者を討ち、帝国を復興させた女帝。その女帝がただ一つの拠り所とする皇弟。


 それを手にすれば、帝国の支配は揺るぎないモノになる。


 単なる反逆者集団ではなく、本物の皇族を頂点とする支配であり、そこに巫女に率いられた宗教集団が加わるだけなのだから。

 シヴィラ自身も年端のいかぬ少女であり、反逆者達の首魁であるとは言え、傀儡という印象が民衆の間に浸透しているのだ。


 そして、それはある意味共和政権の生き残り側にも言えること。

 理想とする政体や手を伸ばしている利権は、皇帝さえ操れれば思うがままである。彼らの中に、主義主張のみを行動原理にしている人間は皆無といって良いのだった。


 そのため、一時的な憎悪は、手を伸ばせば簡単に手に入るであろう獲物を前に、一時的に取り除かれたようであった。



「言ったはずだ。姉上を返してもらうと」


「ふむ……、では、やって見せなさい。我々は奥で待っています」



 兵士達に動きを見据えたロジェスはぐったりとしているジェスとともにフェスティアを天幕の中へとつれて行く。そこからは複雑に入り組んだ内宮へと続いていた。



「子ども一人に何ができるっ!! さっさと捕らえろっ!! 捕らえた者には、一生遊んで暮らせるだけの褒美をくれてやるぞ」



 共和政権側の生き残り達が叫ぶと、兵士達が先を競ってアイアースを捕らえるべく動き出す。

 相手は皇族と言えど子ども。如何に腕が立つとは言え、子どもの体力で次から次へと襲いかかる大人達を退け続けるなどできはなしない。


 余裕の笑みを浮かべてアイアースへと躍りかかる兵士達。その眼前を一条の風が通り抜ける。



「それをさせないのが」


「我々の役目さ」



 声とともに舞い上がる首と周囲に飛び散る血飛沫。


 広間に詰める兵士達が次々に肉塊へと変えられてゆき、広間の大半が死体の転がる地獄絵図になったとき、アイアースを守るように二人の白装束に身を包んだ男女がそこにはいた。



「ご苦労。ハイン、エナ」


「ちょっとお、私には何もないの?」



 二人に対してそう口を開くアイアース。


 無視をされた形になって不満げなミュウを無視し、笑みを浮かべて頷いた二人は、再び剣を構えて眼前の兵士達へと向き直った。



「ちっ、キーリアも連れてきたのか。グネヴィアはどうしている?」


「そ、それが、お部屋にもおらず……」


「どうせ、そこいらで若い奴の血でも吸ってんだろ。さっさと、探してこいっ!!」



 苦虫を噛み潰したような表情でそう言ったダルトスは、自身も剣を構えて階段を下りると玉座に座ったまま沈黙しているシヴィラを守るように立つ。



「おいおい、のんきなことをしていていいのかあ?」


「それはてめえらだろ。たった4人でどうにかできると思っているのか?」



 馬鹿にするような口調でそう言ったハインに対し、ダルトスが相変わらずの表情でそう応える。しかし、ハインは肩をすくめてその言を否定した。



「4人? 違うぜ」


「答えは、3万人だ」



 ハインの言に答えるようにそう呟いたアイアースは、赤い光を纏った右手を天へとかざすと巨大な火球を放つ。


 轟音とともに飛び散る破片、そして舞い上がる埃。天井にはきょだいな穴が穿たれ、アイアースがかざした手を握りしめるとそこから外へと飛び出した火球が巨大な閃光とともに飛散した。


 火球は火の粉となって帝都の上空を舞、やがて消えてゆく。その様は、慶事を祝う祝火によく似ており、式典に集まった人間達は街路にて歓声を上げていた。


 そして、それとは別の“喊声”が宮殿各所から上がりはじめた。



「な、なんだっ!?」


「ほ、報告致しますっ!! 先日帰還した国軍の残留部隊が反逆。ヴェネディア傭兵団及び信徒兵と交戦を開始しました」


「政権兵の一部も寝返っていますっ!!」


「っ!?」



 兵士達の報告に目に怒りの色を称えながらアイアース等を睨み付けたダルトスに対し、ハインが勝ち誇ったような表情で口を開く。



「自分達がそんなに支持されていると思っていたのかい? 殿下の生存を告げただけで簡単に協力してくれたぞ?」


「力にモノを言わせた支配が招いた当然の帰結ですけどね」



 ハインの言にエナが心底あきれたような表情でそう口を開く。


 先日、帝都近郊の牧に潜伏していたアイアースの元に、ハインとエナ、そしてフェルミナとミュウが生き残っていた中堅将校達を連れて合流してきたのだ。


 一人オルクスを飛び出したアイアースをハインとエナが追い、ミュウとフェルミナはスラエヴォのヒュプノイアの元を訪れて所在を確認したという。


 結果、アイアースのある意味での暴走が国軍の決起を促すという皮肉な結果を生んだのだった。

 だが、帝都の守りを担っているとはいえ、宮殿内はヴェネディア傭兵と信徒兵が中心であり、内部への突入には少なくとも教団幹部層の目が届かぬような状況が必要なのである。


 単純な戦であれば、経験豊富な国軍指揮官に分があるが、乱戦になれば個人の武勇がモノを言う状況も生まれる。


 スラエヴォ事件もそう言った状況を突かれたのだった。



 だが、今回は立場が逆である。大広間内に突入してきた国軍兵がアイアース等を取り巻くようにして剣を構える。


 そんな状況の中、はじめこそ怒りを浮かべながら3人を睨み付けていたダルトスであったが、ふっと一息吐くと落ち着いた表情を浮かべはじめる。



「おもしれえ。だったら、正面から叩きつぶすまでだ。行くぜっ!!」


「お? 話が分かるじゃないか。こいやっ!!」



 諦観かやけくそかは分からなかったが、そう言って武器を構えたダルトスにハインも笑顔で頷き、両者が同時に地面を蹴る。

 一騎当千と謳われるキーリアに対し、一歩も退かない様子は相応の実力の自負であろう。現に、ハインとぶつかり合ったダルトスは後れをとっている様子は無い。


 しかし、アイアース達にとってはまたとない機会である。


 エナが床を蹴り、行く手を阻む兵士達を蹴散らすと、アイアースも後に続く。


 二人の眼前には、玉座に座するシヴィラを中心とした女官達が陣を組んで立ちふさがっている。


 シヴィラの首をとり、フェスティアを救う。


 アイアースは眼前に座する少女を睨みつけながらそう思っていた。



◇◆◇


 突如現れた第四皇子とその取り巻き。それに呼応するように決起した国軍。


 先ほどフェスティアの手によって共和政権幹部層が粛清されたにもかかわらず、事態は最悪の方向へと動き始めている。

 ユマはこのような状況下にあって、巫女が病に犯されていることがこちら側にとっては痛手であると思っていた。


 原因不明の発熱による衰弱。


 それによりベッドにて昏睡していたのはつい先日までのこと、目を覚ました今でも、荒い呼吸は耳に届いていた。



「シヴィラ様、我々も後方へ。そのお体では……」


「いい……。私にはやることがある」


「しかし……」


「さがってて……呼べるだけ呼ぶ」



 シヴィラがそう言って玉座から立ち上がると、その手に纏いはじめた光がその光度を増す。そして、彼女の手から放たれた光が大広間をはじめとする宮殿各地へと飛んでゆく。


 床に降り立ったその光は、やがて大きな光の泉のように広がって行き、眩い光を放ちはじめる。

 すると、光の中からゆっくりと人の影が浮かび上がりはじめる。光が消えるとその場には武装した兵士達が立っていた。



「信徒兵達よ。信仰に……天の意志に害為す者達を討ちなさい……」



 突然のことに、戸惑いを見せていた信徒兵達に、静かにそう告げたシヴィラはそのまま玉座に崩れ落ちる。



「シヴィラ様っ!?」



 シヴィラは荒い吐息を吐きながら、全身に汗を浮かべて、その表情は苦悶を浮かべていた。



「まだ……」



 しかし、再び体を起こしたシヴィラは、なおも手を輝かせながら意識を集中させる。

 周囲では女官達が必死に治癒のための法術を行っているが、その消耗速度に回復が追いついていない。

 だが、今のユマの目に映っているシヴィラの表情は、病人のそれとはまた異なる、異様な決意に囚われているように思えた。



「――――っ!? シヴィラ様、お止めくださいっ!!」


「黙っててっ!!」



 そして、今彼女が行おうとしている法術を察したユマの静止に、そう叫んだシヴィラは再び手をかざす。


 途端に、大広間に差し込んでいた光が薄れ、周囲は薄暗くなっていく。

 吹き込んできた風が柔らかなモノから肌を切り裂くかのような鋭いモノへと変わって行き、ほどなく雨が落ち始めた。


 そして…………。


 激しく揺すられる宮城と各所から轟きはじめる悲鳴。やがてそれは宮城のみならず市街地へとも広がりはじめていた。



「そ、そんな…………シヴィラ様。た、罪なき民をも……」


「はぁはぁはぁ」



 激しい揺れの中、シヴィラを抱きかかえるユマの言に、シヴィラは何も答えない。

 それどころか、その青みがかった表情とさまよう視線の先には、何も映っていないようにしか見えなかった。



「どこを見ているんだ?」


「っ!?」



 そんなユマの耳に届いた声、慌てて顔を上げたユマの目に映ったのは、幼い少年によって振り下ろされた二つの白刃だけであった。



◇◆◇



「こ、これって……」


「どうしたっ!?」



 突然、湧き出すように現れた信徒兵を切り伏せ、魔法を浴びせていくアイアース等の耳に、声を震わせたミュウの声が届く。



「本で見た事があるのよっ!! 天空から降り注ぐ破壊の光……。急いで止めないと、都市の一個ぐらい壊滅しちゃうわっ!!」


「なんだとぉっ!?」


「止めるにはどうすればっ!?」


「術者を倒すしかないわっ!! ほっといても止まるけど、その頃には辺り一面瓦礫の山よっ!!」



 ミュウの言にアイアースは術者。すなわち、玉座にて手をかざしている少女に目を向ける。しかし、その間には先ほど沸きだした信徒兵達であふれている。

 実力のほどは、リアネイアとイレーネによって鍛え抜かれたアイアースの敵ではない雑兵ばかりであったが、巫女の命令によって完全に死への恐怖が取り除かれている者達である。


 そのような兵士達を一撃で屠れるほどの能力はまだない。



「この野郎っ!! ……よしっ。――――エナ、ミュウを連れて外へ。ちょっとの間ぐらいならはじけるだろ」


「わかりましたっ!!」


「や、やってみる……っ!!」


「殿下、俺が道を作ります。っていうより、俺が何とかしますから、失敗したら頼みます」


「ああっ!!」



 そんな中、交戦していたダルトスを蹴り飛ばしたハインが3人の元へと戻る。普段の余裕めいた笑みは無く、焦りの色がはっきりと浮かんでいた。


 床を蹴ると同時に信徒兵の波へと突っ込むハインの後を追うアイアースは、彼が討ち漏らした信徒兵を切り伏せ、2段階法術を連発していく。

 数を頼みに躍りかかってくる信徒兵達もわずかな距離を駆け抜けていく二人の姿を追うことはできず、二人に続く国軍兵達も決死の覚悟でそれを防いでいる。



「行かせるかよっ!!」


「おっとぉっ。邪魔だぁっ!!」



 再びダルトスが行く手を阻む。剣を受け止め、腹に蹴りを見舞うハインであったが、今度は防がれ、お互いが譲らぬ攻防へと映っていく。


 そのさなか、アイアースの目には法術を終え、膝をつくシヴィラの姿が映る。



「ハインっ、背中貸せっ!!」



 言うや否や、アイアースはハインの背を足場に一気に壇上へと跳躍した。


 驚愕の表情を浮かべる女官達に対し、シヴィラと彼女によりそう女はよそ見をしたままである。



「どこを見ているんだ?」



 そう言ったアイアースは、顔を上げた女を十字に切り裂き、背後へと吹き飛ばした。

 慌てて獲物を構える女官達、彼女達も法術による回復や補助を担っており、立派な戦闘員であるのだ。



「かかってくるなら手加減はしない」



 そう言って女官達を睨み付けると、その子ども離れした眼光に女官達は身体を震わせ、動きの自由を奪われている。



「久しぶりだな……シヴィラ」


「…………久しぶり」

 

 そうして、女官達の動きを奪ったアイアースは、眼前の少女を睨み付ける。

 アイアースの言に答えたシヴィラは、相変わらずの感情を抑えた声で答える。



「お前の顔、忘れたことはなかった。父上と母上、それに、お前の命令によって斃れたすべての人の仇、とらせてもらうぞ」


「…………格好つけているヒマがあったら、さっさと斬れば? …………和将君」


「何?」



 膝をつき、肩で息をしているシヴィラを睨み付けたアイアースであったが、彼女が静かに、そしてはっきりと口にした言葉に目を見開く。



「なぜ、貴様がその名前をっ!?」


「あ、やっぱりそうだったんだ…………。多分、リアネイアさんもそうだったのよね」


「答えろっ!!」


「知ってどうするの? 見逃してくれるの?」


「アホか? 寝付きが悪いから聞いているだけだっ!!」



 そう言ったアイアースであったが、声の上ずりから動揺していることは明白であった。そして、等のシヴィラは先ほどの死に体に比べ、身体の調子も戻りはじめている。何がそうさせているのかは分からなかったが、このままでは立場の逆転は目前。


 しかし、今のシヴィラの手に武器はなかった。



「っ!? くっ!!」



 そして、彼女に気をとられている隙に感じる殺気。慌ててそれを防いだアイアースの眼前から、シヴィラの姿は消えていた。

 その姿を追うアイアースは、視線の先、先ほどフェスティアが連れ去られた天幕の前に膝をつくシヴィラと女官の姿を捕らえた。


 そして、二人は天幕の中へと消えていく。



「くそっ!! 待てっ!!」



 どのみち、行かねばならぬ場。アイアースはためらうことなく二人の後を追う。背後からハインの声が聞こえたが、今のアイアースの耳にそれが届くことはなかった。



ごめんなさい、うそつきました。

ちょっと話が長くなりましたので、2話に分けます。続きは、今日中に出せるようにしますので少々お待ちください。

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― 新着の感想 ―
フェスティアの無能さ加減はどうにかならないものか。 利用されるしかなかったとしてもあの時テルノアと戦う必要なかったし、大事なとこで睡眠魔法にかかるのは戦犯すぎる。 弟を気軽に殺すことは無いって分かって…
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