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第七十一話 最後の賭け

 単眼の魔物を倒して、ハボックたちは地下を駆ける。

 しばらく進むと同じように駆けてきた見慣れた二人の姿があった。


「アレクシア様、御無事でしたか?」

「ええ、そちらも無事なようですね」


 安堵(あんど)と苦笑が入り混じる。誰一人欠けることはなかったが、無傷のものは誰もいない。それでも強敵との激戦を潜り抜けてきたことは歴然だった。


「先生はまだ見つかっていませんか?」

「残念ながらまだ会っていないですな」

「そうですか。私たちが遭遇した吸血鬼が言ったのですが、先生もまた強敵と戦っているそうです。早く援軍に向かわなければなりません」


 アレクシアの言葉にハボックたちも頷く。


「ギルドスキルとやらを使っていれば合流できるはずなのに、なんでケイオスは使わないんっすかね?」

「わからないわね。でもそう簡単にやられるような奴じゃないわ。まだ温存しているのかもしれないもの」


 もしケイオスがギルドスキルを使っていたら、すでに全員合流できていたはずである。だがケイオスがギルドスキルを使用しないということは、彼は仲間を呼ぶほど危機に陥っていないか、はたまた使用できるような余裕がない状態ではないのか。

 不安は尽きない。ケイオスを狙っている相手は、苦戦した敵が自分よりも強いとほのめかしていた。ケイオスも強いが決して楽観視できるような敵ではない。


「急ぎましょう、アレクシア様」

「そうね、きっとケイオス君が待っているわ」

「その必要はない」


 一行を制止する男の声。ハボックとリーアムの声ではなかった。敵だと判断した彼らは即座に臨戦態勢に入る。

 現れたのは中年の男だった。


「あれ、御同輩っすか?」


 人の好いリーアムは構えを解きながら問いかける。


「待て、神殿騎士にも兵士にも見えない。突入した部隊にこんな奴がいるとは到底思えん」


 イレーヌが警戒を強めた。

 男は武器を持っておらず、鎧も着ていない。およそ戦闘とは程遠い、身ぎれいだが見慣れない服装だった。


「もしかして魔物に連れてこられた人じゃないかしら? 上で騒ぎが起きて警備が薄くなったところを逃げ出したとか?」


 コーネリアは推論を口にした。が、リーアムほど警戒を抜いていない。何しろ吸血鬼のように人間に偽装できる魔物もいるぐらいだ。この男が魔物と言われても何の不思議もなかった。


「おめえさん、何者だ? なんでこんなところにいる?」

「魔物は気づいたというのに。人間では理解しきれないのだな。姿が変わっていれば、いやもう誰も覚えていなくて当然か」


 幾分男は落胆しているようだった。そして男は正体を一行に告げる。


「わからぬのも道理か。だがお前たちも話には聞いたことがあるだろう。私は邪神だよ」

「……頭わいてんの?」


 コーネリアは呆れ声で言った。神の姿など知る由もないが、どう見ても人間の冴えないひ弱そうな中年だ。魔物に連れてこられた一般人が錯乱でもしたのかと心配になる。


 しかし男は笑い返すだけだ。それほど脅威を感じるような存在ではないにも関わらず、異様な雰囲気をまとっていて近寄りがたいものがある。

 全員があやしんで男を遠巻きにしたまま動けずにいた。


「疑うのも当然だ。まあ理解させるつもりはない。次なる楽しみのために私はお前たちをいたぶりにきたのだよ」


 まるで遊びにでも来たような男の反応にハボックたちは内心憤った。およそ戦いとは程遠いところに身を置くような男になじられたくはない。何しろここにいるのは有数の実力者ばかりだ。数の上でも一対六で相手が不利。そんなふざけた態度で自分たちが舐められていると感じれば気に障るのも無理はない。


 しかし男の底知れない異様さが気になってたまらない。ケイオスもまた非力そうな人間ながらも強者だ。この男もケイオスと同じかもしれないと考えれば、男が強敵である可能性を否定できない。


「いたぶるとか穏やかではありませんね。何の目的でそのようなことを」

「地上は私が放った魔物で片付く。が、お前たちはカーミラたちを倒すほどの高レベルだ。さすがに量産した魔物では太刀打ちできまい。まったくケイオスは厄介なことをしてくれたよ」

「あなたは先生のことを知っているのですか?」


 アレクシアは目の色を変えた。


「ああ、よく知っているとも」

「先生を見かけませんでしたか?」


 知りたい気持ちを抑え、先にケイオスの居場所について尋ねるアレクシア。


「もちろんだとも、ついさっき私が倒したばかりだからね」


 その男は信じられない言葉を口にした。


「まさか、ありえんだろう」


 ハボックは笑い飛ばした。この弱そうな男が仮に強者だとしても、ケイオスと戦ったのならば激戦は必至である。

 なのに男の身体には何一つ怪我がないどころが、服装さえ一切乱れていない。これではケイオスは無抵抗のまま敗れ去ったことになる。不意を取られたと考えるよりも、戦ってはいないと考えるのが当然だった。


 だがもし男の言うことが真実なら、ケイオスがギルドスキルを使って自分たちを呼び寄せない理由もわかる。すでにケイオスは殺されて呼び寄せることができなかったのだ。

 男はせせら笑う。その声がハボックたちの苛立(いらだ)ちを誘う。


「先生はすでに亡くなられたのですか」

「気に病むことはない。お前たちもすぐに会わせてやろう」

「俺たちも殺すってことっすか? 上等っすよ!」

「アレクシア様、お気を確かに! まだこの男の発言が正しいかどうかわかりません。ひとまずこいつを倒して、それからケイオスを探しましょう」

「あんた毎回思うけど結構喧嘩っ早いわよね。でも同感。あいつをふん捕まえてケイオスの居場所を吐かせましょ!」


 男の挑発的な態度に、それぞれが構えた。


「二手に分かれていくぞ!」

「了解!」


 イレーヌとリーアムが左右に分かれて男に襲い掛かる。速度においてイレーヌは最速であり、リーアムもまた軽装ゆえに素早い。おそらくハボックたちの中でもイレーヌに次ぐ速さを持っている。


 そんな二人が男に襲い掛かったのだ。かわす暇など与えない。イレーヌはそのレイピアのナックルガードで、リーアムは剣の腹で男に殴りかかる。それぞれ小細工なしで最短かつ最速で男の顔面と腹部に狙いを定める。

 ほんの刹那。男は抵抗すらせずに殴り倒される。多少の手加減はあるものの、イレーヌの(あご)への一撃は相手を気絶に至らしめるほどの衝撃。イレーヌとリーアムもそれぞれ完全に決まったと手ごたえを感じていた。


「大丈夫でしょうか?」

「待て、吸血鬼かもしれないからあまり近づくなよ」


 人間の可能性を捨てきれない男に対してやりすぎたのではないかとエミリアが心配そうにしているが、ハボックが止めた。

 男はすっと立ち上がる。イレーヌとリーアムはぎょっとした。

 間違いなく芯を捉えた一撃に対して、男はふらつくどころか殴られた(あざ)すら現れていない。体をぱきぱきと鳴らし柔軟をしているが、さっき殴られたばかりの男ではないほどぴんぴんとしている。


「やはり人間ではないのか?」

「言っただろう、神だと。まったく物分かりの悪い奴らだ」


 (あご)を殴られたというのに意識もはっきりとしている。いよいよもってこの男が普通の人間ではないことをハボックたちは理解させられた。


「これは全力で戦わなくてはならないかもしれません」

「そうね、リーアム、やっちゃいなさい!」

「わかったっす、出し惜しみはしないっすよ!」


 リーアムも本気で魔法剣を使う。もはや人間だと(あなど)ってはいけない。少なくとも耐久力だけならば人間の皮をかぶった化け物だ。

 岩をも容易く切り裂く魔法剣は男を切り裂いた。


「なっ!」


 が、リーアムには手ごたえが一切ない。驚愕(きょうがく)で染まるリーアムの顔面に衝撃が走る。いつの間にか動いていた男の回し膝蹴(ひざげ)りがリーアムに突き刺さっていたのだ。


「ぐはっ!」


 リーアムは地面に叩きつけられそのまま転がっていく。


「リーアム!」


 ネルが悲痛な声を上げる。だがリーアムの容態を確認するわけにもいかない。男はまだ動き始めたばかりだ。

 唯一男の動きについていけたのはイレーヌだった。彼女は男の動きを目撃しており、視認できた。なんてことはない。男はリーアムが反射しきれないほど早くかわしただけ。だからこそわかる。相手は自分に匹敵するか凌駕(りょうが)するほどの速さを誇る相手だと。

 リーアムが倒されたと同時に彼女は男にレイピアの一撃をお見舞いする。何しろ彼女は男に最も近い。彼女の速さならば男の動きにもついていける。


 しかし彼女を象徴する銀の閃光の一撃が至近距離で放たれたのにもかかわらず、男はわずかに驚いたような表情を見せるぐらいで、その閃光すらも見切ってかわした。


「ほう、人間のくせに早い。プレイヤーならば容易にパラメーターを極端に振ることはできるが、この世界の人間がこんな極端な成長を見せるとはなかなか面白いサンプルだ」

 敵を目の前にして余裕に考察する男の姿にイレーヌは一筋の汗をかいた。リーアムが一撃をいれられて、男を捕縛するどころかためらいもなく殺意をもって貫いたはずだ。


 だが結果はかすりもしない。つまり男は自分よりも速い。

 そして男のおぞましさにぞっとしていた。

 人類と敵対する魔物は敵対する意思を明確にするが、男には殺意も何もない。自分たちをいたぶると言っているにもかかわらずだ。イレーヌの攻撃に対して恐怖の欠片すら覚えていないのだ。

 彼は昆虫型の魔物ではなく矮小(わいしょう)な虫の行動を観察するような別次元の視点で自分を観察している。自分たちをいたぶるという行為すらもいとも簡単にできるからやるという程度の認識でしかない。自分たちを倒すことではなく、むしろ別の目的があるようなそんな気さえする。


 そんな理解できない感覚を持つ男にイレーヌは生理的嫌悪を覚えた。

 イレーヌが男と戦っている間にエミリアがリーアムの様子を見に行くが、彼は白目をむいていた。予期せぬ一撃は彼の意識を刈り取っていたのだ。エミリアは即座に(いや)しの魔法を使う。

 エミリアが回復していることで不安の種は取り除かれたが、コーネリアは怒りを男に向けた。

 だがコーネリアも弓を構えて放つ機会をうかがうが、次元の違うイレーヌと男の動きに合わせられず的を捉えることはできない。


「なんて奴なの! 速過ぎて狙いが絞れないわ!」


 コーネリアも研鑽(けんさん)を積んではいるが、男が足を止めない限り弓を使うことができずにいる。本来であればリーアムたちが足止めをするかおとりになることでコーネリアから意識を外させて、矢を放つことができたのだが、あの男についていけるのはもはやこの一行の中ではイレーヌのみ。

 だが、そのイレーヌでさえも徐々に押されはじめ、攻撃できなくても決定打は受けていないのにもかかわらず、彼女の顔が苦悶(くもん)へと変わっていく。

 ただでさえ連戦を続け、さらに激しい動きの連続だ。度重なる空振りも体力を奪っていく。だが速度を緩めれば、この男を釘付けにすることすらできない。下手にこの男を自由にすれば、瞬く間に味方は餌食(えじき)になってしまう。汗をぐっしょりとかきながらもイレーヌは付き合い続けるしかなかった。


「私に任せてください」


 従者の苦境にアレクシアが動いた。アレクシアがイレーヌに目配せして合図を送る。イレーヌはその意図を理解すると、フェイントで攻撃すると見せかけて、攻撃しないまま即座に男から離れた。


「『ウインド・ウォール』」


 男の近くで突如突風が吹き荒れる。アレクシアを中心として周囲の敵を吹き飛ばす魔法。アレクシアが近づいたことで男が射程内に入ったのだ。この魔法の強みはコーネリアの矢のような一点集中の攻撃ではなく広範囲の面での攻撃。範囲内にいればかわすことはできない。威力は劣るが、そもそもイレーヌとリーアムの攻撃をものともしない相手なのだ。生半可な威力の魔法では効かない。

 突風に男が吹き飛ばされてもそれなりに速度はあるが、男が自分で動くのと比べれば止まって見えるようなものだ。そして何より接近戦に長ける無手の男から距離を取れば、必然的に攻撃されにくくなる。


「ここね!」


 そのわずかな時間を狙い続けていたコーネリアが見過ごすはずがなかった。当たりやすそうな腹部にめがけて矢が吸い込まれていった。


「嘘でしょ……!」

「ネルの一撃も効かないだと⁉ 冗談きついぜ」


 コーネリアとハボックは目を疑った。男の腹部に刺さるはずの矢はポトリと落ちるだけである。よく見ればとても硬いものにぶつかって矢じりがひしゃげている。男は鎧など着てはいない。


「『マナ・バレット』」

「俺の背後に逃げ込め!」


 距離を離しても男の攻撃は止まらない。瞬間で判断したハボックは盾を構えるが、光球の弾幕は容赦(ようしゃ)なくハボックの愛用の盾を鉄の(かたまり)に変形させていった。

 男はすぐさま光球を追加する。ハボックの構える盾にずしりと圧力が増した。


「くそっ、もうもたない! 逃げろ!」


 重装備なだけに鈍重なハボックは背後に逃げたコーネリアとアレクシアを突き飛ばす。と同時に盾は破壊され、味方をかばったハボックと避けきれなかったイレーヌはまともに光球を食らった。彼らだけではない。自在に動く光球は残るネルやアレクシア、そして回復役に徹していたエミリアにも分散して襲い掛かる。

 光球を避けきれなかった各々が悲鳴を上げ倒れた。


「……畜生、魔法までありとか……ふざけんな……」


 光球にもっとも晒されたハボックは何とか一命をとりとめたものの、全身から血を噴き出しており弱々しい声で男を罵倒する。

 全員がぎりぎりの状態だった。たった一つの光球でさえ暴虐の塊だ。単眼の巨人の一撃でさえ受けきれなかったものの一度はいなしたハボックの盾も、さすがに押し寄せた光球に無残にも(てっ)(かい)と化している。

 むしろよく生き残ったほうだ。


「みんなもやられているっすか……まずいっすね」


 リーアムも気絶から意識を取り戻したが、エミリアの回復が途中なためにふらつきを抑えられない。真っ先に倒れた責任感と味方の窮地に剣を杖にして立ち上がろうとしてもまた倒れることを繰り返している。

 イレーヌは大の字ではあはあと呼吸を荒げていた。こちらは呼吸以外ピクリとも動きそうもない。男との戦闘で動き過ぎて体力の限界だったからだ。

 アレクシア、コーネリア、エミリアは光球の被弾が少なく一番被害が少ないが、元々彼女たちは身体能力の高いイレーヌたちと比べて低い。そのため受けたダメージが大きい。血を流して横たわったままだ。

 うずくまるハボックを男は蹴り飛ばして、ハボックは苦悶(くもん)の表情を浮かべた。


 男の宣言通りたった一人で全員がいたぶられている。悔しさで胸がいっぱいになるが、それと同時にケイオスを倒したという男の発言の信憑性(しんぴょうせい)が増した。

 虚言だと思っていた心にひびが入る。もしかしたらこの男であればという想像がじわじわと亀裂を広げていった。


「先生……」


 アレクシアは不安な心境を漏らした。

 本当に死んでしまったのだろうか。アレクシアはどこかでケイオスの強さを過信していたことに気づいた。このような激戦でも彼ならば生き残れるとどこか安穏と考えていたのだ。そんな保証などどこにもないというのに。


 アレクシアは歯を食いしばって立ち上がる。せめて仇である男に一撃でも入れたい。

 いや、一撃入れてそれで満足するわけにはいかない。アレクシアはそう思い直した。何のためにこの神殿奥深くまで犠牲を払い戦ってきたのか。すべてはここにある邪悪な儀式を阻止するためではないか。それにケイオスも命を()けたのだ。

 彼に頼れない今、彼の遺志を継ぎ自分が戦わなくてはならない。彼だけじゃない。この場にいない人たちも願っていること。神殿に突入した自分たちにそれだけの思いが託されているのだ。だからこんなところで終わるわけにはいかないのである。もし嘆くとしたら、すべてが終わってからだ。そうでなければ自分は胸を張ることができない。

 彼女の体を支えるのは意地だ。だが確かに彼女は立ち上がった。それを見て息も絶え絶えだったハボックたちも立ち上がる。


「さすがにカーミラたちを倒しここまでたどり着いた勇士たちだ。力の差はあってもまだなお立ち上がるか」


 満身(まんしん)創痍(そうい)ではある。だが彼らの闘志は尽きていない。


「ならばもう一度だ。今度は立つ気力さえ根こそぎ叩き伏せてやろう」


 男は再び光球を出現させる。闘志はあれど、彼らに全弾かわす余力は残されていない。


「いいか、俺が盾になる。だからお前たちがあの男を倒してくれ」

「俺たちっすよ。さすがに一人じゃあれ全部防げないっすよね。俺じゃあの速さについていけないっすからここで頑張らないと」

「わかったわ。けど防ぎきれなかったら承知しないからね!」

「うへえ、厳しいっすね。ネルは。アレクシア様。後は頼むっすよ」


 ハボックとリーアムを弾避けにする。それが現実的な案だった。

 二人も重要な役割だが、要となるのはアレクシアだ。イレーヌですら一撃が入らないし、コーネリアの矢の残骸(ざんがい)を見れば、物理的な攻撃は大した効果がないのは明白だ。


 唯一可能性があるのは魔法による攻撃である。だがアレクシアは遠距離から放てる魔法は少ない。男に通用するような強力な魔法を使うには、一定の範囲まで彼女は接近しなければならなかった。さっきはイレーヌも魔法に巻き込む恐れもあったので、おいそれと使えなかったが、今度はイレーヌ抜きで接近しなければいけない。これがどれほど危険な役割なのか全員が理解していた。


「来るぞ!」


 盾がないハボックは斧を、リーアムは剣を構えて絶対に通さないように立ち塞がる。だが彼らの想像以上に光球は多い。まるで倍に増えたような錯覚さえ覚える。


 しかし、それは錯覚ではなかった。

 彼らに向けて放たれたはずの光球は何故か誘爆し合って相殺されていく。まるで同士打ちでも起きたかのようだ。決死の覚悟で臨んでいた彼らは何が起きたのか一瞬理解できなかった。

 男が魔法の制御に失敗したのか。とも彼らは考えるが、自分たちを翻弄していたぶるぐらい自由自在に光球を操っていた彼がこんな単純な失敗をするとは思えない。

 それに光球の動作は二種類に分かれていた。一つはハボックたちに狙いを定めて動き始めた光球。もう一つはその光球に狙いを定めて動いていた光球。

 明らかに魔法の相殺を目的とした光球の挙動。自分たちをなぶり殺しにしようとしていた男がこんなことをするはずがない。


 つまりはもう一組の光球は別人の意思によるもの。この一行の中で誰かが光球を相殺しようとしたのならば、魔法の使えるアレクシアが該当する。

 だがアレクシアは魔法を放っていない。そもそも光球は、自分たちを狙っていた光球と軌道が同じだ。アレクシアが放ったのならば光球の軌道が逆でなくてはならない。

 だとすると、もう一組の光球を放った主は男と同じように自分たちと対面している人物。より正確に言えば、男の背後から魔法を放った人物となる。


「あっ、ああ……!」


 アレクシアは口を手で抑えて、感動に打ち震えた。


「畜生、遅すぎだぜ。あの野郎」

「ふん、あいつのことだから死んではいないと思っていたが」

「イレーヌさん、心配していたくせに強がっちゃって」

「くう、ちょっとうらやましいっす。俺もあんな感じで登場してみたいっすよ!」

「いつも私たちがぎりぎり限界に危なくなってあいつが現れるのよね。ギリギリになるまで出待ちしているんじゃないかしらって勘ぐっちゃうわ。無事だったならもっと早く来なさいよ。まったくもう」


 愚痴(ぐち)混じりだが、みな一様にその人物の姿を喜んでいた。

 男の背後にいたのはローブ姿に太陽を象った杖を突き出した黒髪の少年。それは男が倒したはずのケイオスだった。




 ケイオスの意識が覚醒した。

 意識がはっきりしてくると直前の記憶がよみがえってくる。海野に戦いを挑み、彼の魔法が放たれたところで記憶が途切れていた。

 海野に敗北したことを思い出した。どうやら海野に倒されたショックで一時的に意識を失っていたらしい。敗戦の悔しさがこみ上げてくる。


 だが嘆いている暇はない。どうにかしても海野を止めなければならなかった。

 意識はある。場所も他でもない自分が殺された場所だ。基本的に『アナザーワールド』のゲームではプレイヤーが死亡した場合、一定時間で最後に立ち寄ったポータルに復活することになる。だが自分は違うようだ。

 すでに海野の姿はない。どこかへ行ってしまったようだ。一体どれぐらい時間が経ったのだろう。様々な思考が浮かんでは消える。


 しかし一番気になることがあった。自分は死んだはずだ。他でもない海野の手によって殺されたはずである。じゃあ今の自分はどうなっているのか?

 そこでようやく自分の身体を見た。


(うわっ、この体はなんだ?)


 あまりの光景に思わず驚愕(きょうがく)した。自分の体は死ぬ直前の姿のままで透けている。まるで幽霊のようではないか。彼が過去に遭遇(そうぐう)した幽霊はまるで生きているように見えたが、自分はまた違うタイプの幽霊なのだろうかと益体もないことを考えていた。

 だが同時に死んでしまったことを実感する。この世界で死んでしまったのか。もう現実には帰れないのか、と。


 死への恐怖もあれば後悔もある。何も言わずに死んでしまった両親に。そして結果として何もできなかった申し訳なさで胸がいっぱいになった。

 海野の話では魂になれば浄化という現象が始まるらしい。そしてこの記憶も消えていくのだ。もしかするとあまり信じてはいないが海野の言う通り自分が神であるのならば記憶がある程度残るのかもしれない。だが神の記憶すら失っている自分がこんな状態になってしまってはいつまでも記憶を保持していられるとは到底思えなかった。


(そっか、じゃあアレクシア様との思い出やこの想いも消えてしまうのか)


 それだけで胸が張り裂けそうになる。

 つらい記憶だ。だが消えて欲しいとはまったく思わなかった。

 自分の短い人生の中で大事な思い出なのだ。つらい記憶ではあるけれど、大切だからこそつらいのであってそれを失う方より忘れたくない思いが強い。


 このまま消えていくわけにはいかない。これだけ意識がはっきりしているのだ。もしかすると何かできるかもしれない。そう考えたケイオスは色々試してみることにした。

 定番の壁のすり抜けをやってみようとしたが、生身と一緒で壁にぶつかるばかりだった。しかしぶつかることはできても、押したり触ったりしても何の変化も起きないから物理的な干渉はできない。

 杖も透けていたので魔法を放ってみたが発動しなかった。それにしても杖ごと海野に消滅させられて死亡した扱いなのだろうか、と頭をひねる。

 あとはできることがあるとすればメニューぐらいだろうか。ふと思い立ちケイオスはメニューを開こうとする。


 メニューは開くが、それと同時に見慣れないパネルが開いた。

 アバターの状態で死んだからか、一部のシステムは使用できるらしい。これはもしかすると何かできるかもしれない。そんな期待が高まる。


「『身代わりの人形』を使用して、この場で蘇生しますか? はい/いいえ」

(は?)


 パネルの文言を見て、ケイオスはあっけに取られる。

 ケイオスが最も望んでいた文言がそこにはあった。

 基本的にプレイヤーは死亡した場合、ポータルに復活するが例外もある。法術師の蘇生スキルや蘇生アイテムによって死亡したその場で復活することができるのだ。

 『身代わりの人形』は味方や自分を蘇生することができる消費アイテムである。死亡対象のプレイヤーがいる場合、そのアイテムを使用できる。だからこのパネルが表示されることはあながち間違いではない。


 だが使用していいものかケイオスは悩んだ。他でもない、この世界が本物であると知ったきっかけ。ロズリーヌの伯父であるラウル・ド・シャルテル。彼を蘇生しようとして同じアイテムを使ったが死亡対象を認識できず、結局蘇生することはできず『身代わりの人形』はずっとインベントリの肥やしになっていたのである。

 そのアイテムを発動しようとしている。はたして本当に蘇生できるのだろうか。もしかするとこれも海野の罠ではないかと疑えばきりがない。


 けれども、ケイオスが取れる手段は残されていなかった。覚悟を決め選択する。

 『身代わりの人形』が突如としてケイオスの目の前に現れる。体が足から徐々にはっきりと実体化していく。そして役目を終えた『身代わりの人形』はその名の通りケイオスの身代わりとなって消失した。

 あまりにもあっけなく死を回避してしまい、ケイオスは実感できずに感動もない。だがステータス上では死亡前と何も変わらずHP(ヒットポイント)は完全に回復していた。


 そこでようやくケイオスはこの現象を推測できた。

 おそらく『身代わりの人形』は文言通りの単純な蘇生アイテムというものではない。

 あくまで対象となるのはプレイヤー。いや厳密に言えばアバターを持つものが対象なのだ。だからプレイヤーでもアバターでもないラウルは蘇生できなかった。

 もしかするとアバター自体も消失していなかったのではいかとケイオスは考える。

 何故なら短時間でも意識を失っていて時間が経過していたにもかかわらず、浄化の影響が一切なく彼の記憶が抜け落ちていないからだ。あの姿は魂の状態ではなくアバターに透過するエフェクトでしかなく、システムが一部制限されるだけの状態と考えることができる。


 つまりプレイヤーの死亡とは本当の死ではなく、状態異常の一種である「死亡」でしかない。『身代わりの人形』は「プレイヤーの状態異常である『死亡』を回復する」アイテムに過ぎなかったのである。

 プレイヤーが死んだら戦うことこそできないが、ある意味不死身なのだ。彼が知らなかったのも無理はない。この世界にプレイヤーは彼を除いていないのだから、今まで試しようがなかった。

 自分が死んでいなかったとわかるとどっと疲れが押し寄せてくる。自分が死んだかもしれないという精神的な疲労と恐怖はケイオス自身が思うよりもずっと大きく、ずっしりと重くのしかかっていたのだ。


 でも『身代わりの人形』があれば、たとえHP(ヒットポイント)がなくなっても復活することができる。『身代わりの人形』は課金アイテムだ。お金さえ払えば補充は可能である。

 すなわちケイオスだけは海野とずっと戦い続けることができる。

 それは絶望的な戦いに一筋の光明を見せた。




「しかし、あの男嘘をついていたんすね。ケイオスまったく無事じゃないっすか」


 リーアムは男に疑いの視線を向ける。それもそのはずでケイオスは傷一つない。これでは戦ったのかさえ疑わしく思えるぐらいだ。

 それでもリーアムは男の様子を見て、不思議そうに男とケイオスの間で視線をさまよわせる。嘘をついていたはずの男はケイオスの姿を見ても微塵も動揺していない。嘘がばれたから開き直ったというよりも、元々この場にケイオスが現れることすら予測していたようだ。


 彼らもよく思い出してみれば、思わせぶりな台詞を男は口にしていたものの、ケイオスを殺したと直接口にしてはいない。すぐに会わせてやろうと言ったものの、こうしてケイオスが現れたことからもすぐに会えたと言えなくはなかった。

 そしてケイオスの表情も再会を喜ぶような顔ではない。険しい顔つきで男をにらみつけている。不愛想な表情が多い彼が、敵意を激しく露わにしていた。


「やはり来たか。よかったな。お前の仲間はまだ生きているぞ」

「海野……!」


 ケイオスはぼろぼろになった仲間の姿に安堵(あんど)と心配が入り混じる複雑な感情で顔を歪める。男の言葉はかえってケイオスの怒りの火に油を注いだようなものだ。


「先生、この人はいったい誰なんですか?」

「あいつは海野。邪神だそうだ。魔物の侵攻もこいつが封印された邪神の肉体を取り戻して、邪神に復活するために仕組んだことらしい。地上の魔物を作り出しているのもこいつだ。今地上に新たな魔物を出現させたそうだ。俺も一度負けた」

「おいおい、お前が倒されたっていうのは本当だったのかよ!」


 耳を疑うような話だが、本人までそれを認めているのだ。彼らも信じないわけにはいかなかった。


「本当に邪神なの、こいつ。強いけど信じられないわ。どう見ても冴えないおっさんじゃない」

「でもそうかもしれないっすね。正直強すぎっすよ。こいつが邪神なら魔物の親玉ってわけっすね。こいつさえ倒すことができれば魔物の侵攻も止まるっすか?」

「封印されている邪神がどうしてここにいるのか知りたいですけど、そんな悠長に構えている暇はないみたいですね」


 地上に魔物が現れている以上、遠征軍との戦闘が始まっている。あまり時間もかけられない。しかしケイオスはまるで真逆なことを言い出した。


「みんな、できるだけ時間を稼いでほしい。俺一人じゃとてもじゃないけどそれすら無理だ」

「何故だ? 地上の兵を助けに行かないのか?」

「戦ったみたいだからわかると思うけど、あいつはどんな攻撃も通用しない。あいつが地上に出たらそれこそ一巻の終わりだ」

「どんな攻撃も? それではどうやって倒すのですか?」


 攻撃手段がないならば、事実上自分たちは海野に勝つことができないと認めているようなものだ。もっとも本当に邪神だというのならば、自分たちだけで倒せるかどうかすらも怪しいものだが。


「ほとんど勝算のない()けだ。だけど、これ以上あいつを野放しにはできない」


 勝算のある策はある。が、それすらも勝てるかどうかわからない。けれどもケイオスは戦いを挑もうとしている。わずかな勝算にすべてを()けて。

 彼の仲間たちにそれ以上の言葉は必要なかった。それぞれが海野と戦う姿勢を見せる。


「……ありがとう」


 ケイオスは小さくつぶやいた。


「さて、ケイオスも来たことだ。お前たちの死をケイオスに見せつけて、さらなる絶望を突きつけてやる」

「邪神のくせに悪趣味な奴だ」


 海野の言葉にイレーヌは反吐(へど)が出そうだった。

 道理で自分たちをいたぶると言ったはずだ。内心は自分たちなどどうでもよく、あくまでケイオスへの当てつけのような扱いなのだろう。自分たちを塵芥(ちりあくた)と思いつつも、ケイオスに対しては憎しみを抱くような人間臭さがあった。


 だが自分たちの存在はそれほどまでに軽んじられている。そう思うと、イレーヌのプライドはひどく刺激された。

 イレーヌは最速で距離を詰めて海野に肉薄する。これでは前回と同じパターンであり、いずれイレーヌも体力が尽きてしまうのは誰でも予想できた。それに痛みが消えたわけではない。体の鈍さも残っていて、速度は若干落ちていた。

 速度が落ちてしまえば、当然一撃が入るはずもない。だが前回と違うのは海野に攻撃がかわされた途端にイレーヌはすぐさまその場から離脱した。

 一撃離脱するイレーヌをケイオスが魔法で援護する。彼女だけではない。ハボックやリーアムもまた一撃離脱に加わっている。彼らはイレーヌよりも遅いため、ケイオスだけではなくコーネリアやアレクシアの援護も加わっていた。

 ハボックやリーアムは残念ながら無傷では済まない。入れ替わるたびに海野の攻撃が肌をかすめる。誰か一人でも怪我を負えばエミリアが回復するが、残る二人への負担が大きくなる。だから少しでも長く戦えるように身動きができなくなるような致命傷の回避を優先していた。

 入れ代わり立ち代わり狙いが定まらないように交代しつづける彼らを海野も次第に目障りだと感じていた。


「しつこい奴らだ」


 連続して攻撃されているにもかかわらず、海野は傷一つない。だが海野の攻撃はほとんど直撃できていなかった。

 それはリーチの差だ。無手である彼は接近戦が主体でありリーチは狭い。イレーヌやリーアム、ハボックは槍ほどのリーチの長さはないものの、剣や斧といった武器を使って攻撃している。そのリーチの差は大きい。

 無手の心得のあるものであれば、技量でリーチの差をねじ伏せることは可能なのかもしれないが、彼の身体能力は高くても動き自体は素人に近い。だがイレーヌたちは実戦を経た強者ばかりだ。彼らのほうが技量は上である。身体能力に決定的な差があるからこそ、現状を維持できていた。


 だが彼の攻撃は無手だけではない。彼には魔法による攻撃もある。これが直撃すれば至近距離にいる彼らも無事では済まない。

 それを接近戦に持ち込ませ、魔法を放つ時間を与えないように妨害し続ける。唯一放てるタイミングは一時的に攻撃の手が止まるイレーヌたちが交代する瞬間だ。


 けれども今度はケイオスとアレクシアの攻撃魔法とコーネリアの矢が邪魔をする。火力が低いアレクシアの攻撃魔法やコーネリアの一点集中の矢では大した妨害にならないが、ケイオスの広範囲に威力のある攻撃魔法が混じると威力はともかく一時的に海野の視界を遮ってしまう。それがイレーヌたちの離脱の支援につながり、成功率をぐんと上げていた。仮に放てたとしてもケイオスの魔法で相殺されてしまう。

 平たく言えば一対七の攻防で個人と集団の差が如実に現れたのだ。いくら身体能力が優れていて集団に攻撃できる術を持っていたとしても、集団への攻撃が封じられてしまえば、その両手の届く範囲でしか戦えないのだ。


 たった一人、援軍に来ただけでここまで劣勢が変わるだろうか。

 実のところ綱渡りな状況だった。イレーヌたちのダメージは完全に回復しているわけではないし、ケイオスはともかく他のメンバーはスタミナが限界に近い。

 それでも均衡(きんこう)を保っているのは彼らの意地もあるが、攻撃よりも海野をこれ以上先に進めさせないため妨害を優先した遅滞戦術に切り替えていること、そして駐屯地で魔物相手に長時間戦い続けたパーティーでの連携、それを為せるだけの実力があったからだ。

 徐々に苛立(いらだ)ちを露わにしていく海野だったが、唐突にケイオスたちから視線をずらし、中空を見ている。アレクシアたちにはその行動の意味がわからない。たまにケイオスも取る行動に似ていた。


 ケイオスにはその行動の意味が分かる。何かしらの画面を表示して確認しているのだ。もっともその画面が何なのか彼にもわからないが。

 だがそれは海野にとって朗報を告げるものだったようだ。彼の顔が苛立(いらだ)ちから喜びへと変わる。


「惜しかったな。私の勝ちのようだ」


 揺ぎ無い勝利を確信した目。


「秘術が完成した。いささか私の予想よりも早いが、地上に放った魔物が想像以上のペースで人間たちを殺しているのか? まあいい。これで私は神に復活できる」


 秘術のことはアレクシアたちも知らない。しかし遠征軍の目的である魔法陣が関係しているのだと類推はできる。

 彼女たちの胸中にあるのは危機感だけだ。この邪悪な男が邪神として復活する。神ではなかった今の状態でさえ厄介だったのに、神の肉体を取り戻せばもはや自分たちでも手に負えないのではないのか。


 海野は中空で何かをはじいた。


「では諸君。一時的な別れだがさらばだ。それまでは私の復活を間近で見守っていてくれたまえ」


「畜生、もう何もできないってのかよ!」


 ハボックが盛大に地団太を踏む。


「先生、策とは何なのですか?」


 不安そうにアレクシアがケイオスに尋ねる。


「もうすでに手は打っている。あとはもう信じるしかない」


 海野の姿が消え始める。どうやらこれが復活の兆候らしい。


「……なんだ、これは」


 しかし、海野の様子もおかしかった。

 見ていることしかできなかったハボックたちも困惑している。


「何故だ! 何故私が消えようとしている⁉ 私は神の肉体を取り戻したのではないのか⁉ まさか秘術は失敗したのか?」


 予想できなかった事態に海野の混乱は最高潮だ。中空で何かを調べていて、ケイオスたちの存在を忘れている。


「もう遅いよ」


 この中で唯一動揺すら見せない人物がいた。


「ケイオス、貴様か! いったい何をした……なんだと!?」


 海野が見たものは、自分と同じように消えかかっているケイオスの姿だった。


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