第四十五話 終結
アレクシア様を抱きしめたまましばし時間が経過した。さっきよりは落ち着いてきたのか、アレクシア様は既に泣き止んでいる。しかし彼女は抱き着いたまま離そうとしない。あくまで泣き止んだだけで、まだ内心は落ち着いていないのかもしれない。
けど、いつまでもこうしているわけにもいかない。はてさて、どうしたものか。
「ちょっといいか」
申し訳なさそうに話しかけてきたのはハボックだった。ハボックだけじゃない、リーアムたちも一緒だ。イレーヌさんまでいる。たぶんイレーヌさんが説得したであろうヴァイクセルの兵士たちもいるようだ。今着いたのかな?
「みんな来ていたのか」
「先生のお知り合いですか?」
「ああ、アレクシア様たちと一緒にパーティーを組む前に彼らとパーティーを組んだことがあったんだ」
抱き着きつつも顔を上げ、体勢を少し変えてハボックたちを見たアレクシア様と顔を合わせる。
「まあ、なんだ。こういうこというのも野暮だとは思うんだが、そろそろいちゃつくのも控えちゃくれねえか」
「見ているこっちが恥ずかしいわ」
「こっちは真剣に探していたってのいうにいい気なもんすね」
「若いっていいですね」
「若いって、お前。年寄り臭い発言……ちょっと待て、鈍器振り上げるのはやめろ!」
ぎぎぎと油を壊れたブリキのおもちゃのようにゆっくりと彼らに振り向く。彼らの表情はにやにやと冷やかしの雰囲気が強い。
イレーヌさんたちは反応が違う。イレーヌさんは笑顔ではあるが辛うじてこらえているようで、悪寒が走るタイプの笑顔である。なるべく視界に入れたくない。
「そんな、聖女様が敗れるなんて」
イレーヌさんが連れてきた兵士たちは唖然としている。戦いの一部始終を見られていたのか?
「いつからそこにいたんだ?」
「ケイオスがそっちの嬢ちゃんに杖を突き付けたときだな。いきなり抱き締めるだなんて思わなかったから誰も口を挟めなかったが」
「俺はアレクシア様にとって先生なんだろう。生徒が道を間違えたなら正すのが当たり前じゃないか――。なんてかっこつけていたわね」
「うへえ、気障すぎるっすよ。こっちまで胸焼けしそうっす」
「でも女の子としては一度ぐらい気障なセリフを言われてみたいですね」
「いや、お前もう女の子って年じゃ……わ、悪かった! だから詠唱なんかするなよ、シャレにならんぞ!」
エミリア、遠慮なくハボックをやっちゃってください。と内心思いつつ、リーアムやコーネリアにからかわれて顔が熱くなる。自分でも気障なセリフを吐いたものだと思ってはいたけれど、他人に真似されそれを目撃するとなおのこと恥ずかしい。
ああ、これも葬り去りたくなる記憶の一ページに刻み込まれてしまうんだろうな。
「いちゃ、いちゃつく……。抱き締められた……」
アレクシア様の顔も火が出そうなぐらい真っ赤だ。他人に言われて冷静になり状況を客観的に把握したのだろう。清純という言葉が服を着たような淑女然とした彼女が男性と抱き合っているところを他人に見られれば、恥ずかしいことこの上ない。
ばっと俺から離れて顔を覆うアレクシア様。
「わ、私は、先生と抱き合っているところを、他人に見られ、見られーーーーーー!」
混乱したアレクシア様は表現できない叫び声をあげた。
「申し訳ありません。少し取り乱しました」
アレクシア様はしゅんとして謝罪する。周りも気を遣ってか、ぎくしゃくしたままだ。
「ええと、そんなことないといいますか。お貴族様のお嬢様に数々のご無礼を申し上げて大変申し訳ありません」
「いえ、気にしていません。ただ、あまりそのことについては触れないように願います」
ハボックは明らかに慣れていない敬語を使いつつ、こほんと咳払いしながらアレクシアが言った。
「私にも説明してほしいな、この状況を」
アレクシア様が取り乱している間にロズリーヌも目を覚ました。『スリープ・クラウド』による睡眠だ。時間が経てばすぐに目を覚ました。
目を覚ましたらあれだけ大暴れしていたアレクシア様が戦いもせず、混乱しぶんぶんと頭を振っている姿を見たのだから、戸惑うのも仕方ないだろう。
「これはイレーヌさん、アレクシア様の侍女から聞いた話と、ハボックたちの話を聞いて気付いたことなんだが、どうもこの戦いの原因は吸血鬼たちの暗躍していたかららしい」
「何?」
ロズリーヌとアレクシア様に両国の立場で見たものの話の齟齬から、吸血鬼が暗躍しているのではないかという推論を述べる。
話を聞くにつれ、ロズリーヌは顔を真っ赤にして怒りを露にしていった。
「そういうことか! 忌々しいやつらめ!」
対称的に冷静な反応したのはアレクシア様だ。
「やはり、そうでしたか」
「アレクシア様は気付いていたの?」
「いえ、真相に気付いたのはつい先程です。コミューンの動向に少し不審なところがあり疑問に思っていたのですが、ロズリーヌ様とお会いして初めてこのからくりに気付きました」
「ならどうして、ロズリーヌの臣下と戦ったんだ?」
「それは、あちらが襲ってきたのもあるのです。……今考えれば私の言葉が足りなかったのかもしれませんが。ただ命を奪うことは致しておりません。不審に思っていたこともあったので、イレーヌにはなるべく殺生をしないように厳命しています」
ロズリーヌの臣下はみんな気絶しているだけで死んではいない。死屍累々としていたからみんな殺されたのかと思ったが、彼女が一人も手にかけていないということがわかり、胸が軽くなった。
「じゃあ、アレクシア様はこの戦争を止めようとしていたんだね」
「はい。先生が教えて下さった魔法は自分が正しいと信じた道で活かしたい。先生の名を汚すような行為は致しません」
そっか、やっぱりアレクシア様は以前のままだったんだ。
この世界で自分が関わったことがすべて悪い方向に進んでいるように思っていた。
でも違ったんだ。その考えは非常に独りよがりで傲慢だったのかもしれない。アレクシア様はアレクシア様なりに自分の信念に沿って行動していたんだ。この戦いを止めるために。
自分がこの世界に来なくても戦争は終結したかもしれないけど、それでもアレクシア様が誰かを殺めていなくて本当に良かった。
「コミューンの使者の首を送ったヴァイクセルの兵ですか。必ずしもとは言えませんが、心当たりがあります。一月ほど前にブランデンブルグの一件でヴァイクセルがコミューンに使者を送りました。使者はコミューンの兵士たちに攻撃を受けて壊滅し、護衛をしていた兵たちは戻ってきていません。これが吸血鬼の仕業ならば、その時の使者で偽装した可能性があります」
「つまり吸血鬼は国を乗っ取ることを考えていたのではなくて、最初からコミューンとヴァイクセルをぶつけて争わせることを考えていたのか。だとすると、国中で暴れていたのもあくまで国内に目を向けさせることで国外の情報を遮断して侵攻させやすくするためだったのかもしれないな。ヌムル公爵と連絡がつかないのも吸血鬼たちによるものかもしれない」
「吸血鬼の王が存命中に親書を書いたと考えれば、つじつまは合いますね。ヴァイクセル帝国が攻めてきたことをつぶさに調べていたのでしょう。迂遠すぎる計画のように思えますが、人同士の結束を崩すのが目的だとしたら悪くはない策だと思います」
人同士の結束か。いわゆる吸血鬼が人にまぎれることを指しているのだろうか。マップ機能がなく、表面上普通にされていれば俺も吸血鬼かどうか判断するのは難しい。
「今でこそ落ち着いてはいますが、ヴァイクセル帝国もカスタル王国も戦争によって領土を拡張し、大国になった歴史があります。魔物がはびこるこの世界では魔物が少ない安全な土地は貴重なものですから。人同士の戦争が終結した理由は大国同士が衝突することで発生する不利益を嫌ったからに過ぎません。そんなバランスが保たれていたからこそ戦いは起きなかったのです。そのコミューンをヴァイクセルが手に入れてしまえば国土を広げ国力に差がつきます。すぐには起きないでしょうがいずれ人同士の戦乱が起きても不思議ではありません。そうなってしまえばヴァイクセルやカスタルの国内にも吸血鬼がはびこるだけの隙ができてしまうでしょう」
そんなことでカスタルやヴァイクセルまで巻き込むような大戦争になるのかと思ったが、この世界の歴史は設定で明かされていることしか知らない。この世界の住人の価値観や両国の関係はわからないし、それに今回のことを踏まえると十分にありえることなのかもしれない。
カスタル王国やヴァイクセル帝国が戦争を起こしてしまえば、いったいどれだけの人が犠牲になってしまうのだろう。想像して思わず身震いした。
「とにかくこの戦いを終結させましょう。これ以上すれ違いによって犠牲を増やしてはなりません。ロズリーヌ様。改めて陛下の御前までご同行願います。ロズリーヌ様から皇帝陛下に直接お話しいただけないでしょうか」
「わかった。……ケイオス、悪いが同行して欲しい。いくらアレクシア殿を信じたとしても護衛の一人も無く敵陣に行くわけにもいくまい」
「俺が? というか俺でいいのか?」
「むしろお前がいい。信頼できる人間に着いてきてほしいのだ。……だめか?」
不安げな表情を浮かべるロズリーヌ。アレクシア様が害意を持っていないと分かっていても敵地に乗り込むのだから怖いのも当然だな。ロズリーヌの臣下の人たちは気絶したままだし一人で行かせるわけにもいかない。ラウルさんとも約束したもんな。
「わかった。役に立たないかもしれないけど、着いていくよ」
何ができるかわからない。それでも傍にいれば何かできるかもしれないんだ。
***
ヴィクトルは耳を澄ませ、クレルモンに目をやった。城壁の外に届く音が次第にまばらになっている。
(戦いは終わったのか?)
先行している兵はもう城にまで到達したと報告を受けている。王を捕えコミューン兵の抵抗が収まったのかと彼は思案する。
しばらくすると伝令が来て前線の状況を報告した。
「申し上げます! クレルモン城内にて、ロズリーヌ王女殿下を保護! 現在アレクシア様がこの本陣までお連れするとのことです」
「王女を保護? 王ではなく王女なのか」
「はっ」
伝令の報告を受けたヴィクトルは静かに考えを走らせた。
(アレクシアが王女を保護したとなると、王女は吸血鬼ではないな。王女が吸血鬼でなければ、やはりあの吸血鬼の使者は両国を陥れる策の可能性が高い。使者に疑念を抱いていたアレクシアが独断で動いたようだな。城門を攻撃した後は市街の制圧し民の救出に専念するように命じたのだが。さすがにクレルモンまで手に入れようとしたのは虫が良すぎたか)
できれば吸血鬼たちに罪をかぶせ、コミューンの王族を亡きものにしたかったがそれは高望みのし過ぎか、とヴィクトルは自嘲した。
「全軍に停戦を通達しろ。ロズリーヌ王女殿下は丁重に出迎えるのだ」
「はっ、それから……」
伝令は言葉を選んでいるようで口ごもる。
「構わぬ。申せ」
「王女を保護する際、アレクシア様が敵魔導師と交戦。そして、敗北された模様です」
「何? それは真か? アレクシアは無事なのか?」
「怪我もなくご無事とのこと。ただアレクシア様が敗れたということが漏れ、一部の兵に混乱が生じております」
ヴィクトルは内心舌打ちした。アレクシアは兵を率いることで本領を発揮するが、一人でも戦うことができるぐらいの実力がある。その上彼女の傍にはイレーヌまでいるのだ。彼女たちを倒すのは容易ではない。事実、このクレルモンに来るまで彼女はあらゆる敵を相手にして勝利しており、常勝の存在として軍の精神的な支柱となっていた。
それ故アレクシアの敗北を知った兵士たちに混乱が起きたのだろう。アレクシアを倒す存在などヴィクトルですら予想しきれなかった。
「無事ならばよい。しかし、そのアレクシアを破った魔導師の名はわかるか?」
「詳しいことはわかりませぬが、名前だけであれば。確かケイオスと名乗る魔導師です」
「ケイオス。ほう、ケイオスか」
ヴィクトルはその名前に聞き覚えがあった。
カスタル王国が同盟を打診し、ヴィクトルがカスタル王国を調べていた際に出てきた名前だった。
ケイオス。カスタル王国を襲ったオークたちを操る邪神の僕、エルダートレントを倒した若き魔導師。煙のように姿を消したまま消息は不明だった。
一時期は冒険者ギルドでも捜索していたらしい。もっとも捜索は長く続かず偽者が現れ始めたため、打ち切られてしまったが。そのせいでヴァイクセル帝国ではケイオスの名前は知られていない。
最上級ポーションの製造法や霊薬と呼ばれる秘薬を広めたのも彼だとされている。
その彼がこの地にいたのであろう。話に聞いたほどの実力であればアレクシアに迫る実力を持っていてもおかしくはない。
「アレクシアの敗北は伏せ、アレクシアは無事であることを伝えよ。市街に兵士が分散している状況でこれ以上混乱されてはかなわん」
「心得ました」
伝令が走り去る姿を一瞥しヴィクトルはぽつりとつぶやいた。
「厄介だな」
聖女の敗北。この敗北の意味は大きい。
アレクシアが聖女と呼ばれているのはブランデンブルグの教会でアレクシアが神の啓示を受けたと教会が認定したからだ。
つまり神の啓示を受けた特別な存在である聖女がいくら邪神の僕を倒した魔導師とはいえ、神の啓示を受けてもいない魔導師によって敗北を喫したと知られれば、神や聖女自身の正当性が疑われてしまう。ひいては教会の権威が損なわれてしまうのだ。
もっともヴィクトル自身は目にしたこともない神の存在など信じてはいない。だが教会の権威や聖女にはまだ利用価値がある。
聖女の敗北が一部の兵にしか伝わっていないことが唯一の救いだ。このことは何としても隠匿しなければならない。
コミューン連合国王女ロズリーヌの到着を待ちながら、戦後処理をどのように進めるべきか、ヴィクトルは一人思案するのだった。
この後、コミューン連合国ロズリーヌ・ド・コミューンとヴァイクセル帝国ヴィルヘルム・ヴィクトル・フォン・ヴァイクセルは会談し、戦争は終結する。こうしてコミューン解放戦は幕を下ろした。
コミューン解放戦は歴史上百年以上行われなかった人同士の戦争であり、その事実は世界を揺るがせた。そして吸血鬼の陰謀によって起きた悲劇とされており、コミューン連合国に少なからず被害をもたらした結果となった。
しかし犠牲を嫌った聖女アレクシアと魔導師ケイオスの活躍によって、戦争は早期に解決したことから想定した被害よりも少なかったとされている。
また当時世間に公表されたケイオスの活躍はコミューン解放戦の終結の立役者という認識は変わらなくとも、一部事実がねじ曲げられて伝わっている。
聖女アレクシアと戦ったケイオスは、アレクシアと互角に渡り合う。そして傷つきながらもこ一連の騒動が吸血鬼の陰謀であることを説いて、真実を知ったアレクシアと共に戦争を終結させたとされている。
一部事実がねじ曲げられたとはいえコミューン連合国の窮地を幾度も救い、ブランデンブルグ防衛戦で活躍した聖女アレクシアと互角に渡り合った魔導師ケイオスの名はこれを境に国を越え民衆に知れ渡ることとなる。
英雄ケイオスの偉業
・コミューン連合国王女ロズリーヌ・ド・コミューンを救い、シャラントまで護衛
・クレルモン奪還戦において吸血鬼の王を倒し、クレルモンを取り返す
・コミューン解放戦において身を挺して聖女アレクシアを説得、戦争を終結に導く
「あーあ、折角ここまでうまくいっていたのにな」
水晶に映るクレルモンを眺め、カーミラはため息をついた。吸血鬼の手によって踊らされ同士討ちする人間の姿を見るのは痛快だったが、思いのほか戦闘は発展せず収束してしまい不完全燃焼な結果となってしまった。カーミラにしてみれば大いに不満が残る。
「時間と労力をかけた割には結果が見合わなかったわね。成果はあるにせよこれじゃ失敗かな。ああ、主にどう釈明すればいいのかしら」
カーミラ自ら主導した作戦だけにそれが失敗に終わるとやはりやりきれない気持ちが残った。次の主への報告の際にどう取り繕うかと考えるとカーミラはどんよりした気分になる。
もっとも彼女の主は大して気にしないだろう。
主は主で独自に計画を進めている。それに支障さえ出なければ配下の勝手は許される。それぐらいの裁量を配下に与えているのだ。度量の広さもまたカーミラが主を心酔する理由の一つである。
「楽しかったこともあったから良しとするか」
カーミラは思い出して表情を和らげた。あれは楽しかった。命乞いをする人間たちを踏みにじり蹂躙する。戯れに街や村を滅ぼし、領主を眷属にして民に重税を課し、従わないものは拷問で責め殺す。
あまりの楽しさに人を狩ることばかりに集中していたかもしれない。いささか羽目を外し過ぎたかとぺろりと舌を出した。
水晶には映る三人の姿にカーミラの目が吸い寄せられる。少女二人に挟まれたローブ姿の少年。カーミラの表情が曇る。
「聖女か。彼女がいなければもう少しうまくいっていたと思うんだけどな」
ヴァイクセル帝国の侵攻の速さはカーミラにとっても予想外だった。ブランデンブルグでの聖女の活躍はカーミラも目にしていたが、いざ戦争になると兵を強化して戦う彼女の存在は想像以上に目障りだと思えた。ヴァイクセル帝国の想像以上の進軍速度は彼女の影響が大きい。
もともと人同士を戦わせヴァイクセル帝国とコミューン連合国の二国を消耗させることが目的であったため、目的としてはある程度果たしているのだが、カーミラの想定以上にヴァイクセル帝国の被害が少なかった。
「それもこれも元を正せば、おそらくこの子が原因なんだろうけどね」
水晶に映る少年の顔をなぞる。
この世界のイレギュラー。『あちらの世界』からの来訪者。主以外にも『あちらの世界』の来訪者がいると知ったときカーミラは歓喜した。彼もまた主と同様に魔物を救う存在かもしれない、と。
だが現実は違った。すでに彼がこの世界で与えた影響は大きな波紋となって魔物の立てた計画や作戦の妨害している。
ヴァイクセルでの一件。そして今回の件。彼が聖女を育てなければもっとスムーズに事が運んだかもしれない。
調べてみればカスタル王国でエルダートレントを倒したのもこの少年だと判明している。
偶然――と切って捨てることができない。さすがに三度も妨害されれば、彼が明確に魔物たちの計画を阻止しようと行動していることは明白である。つまり主の計画もこの少年が妨害する可能性があると言うこと。
水晶に映る少年の顔を爪でコツコツと叩く。
やはりこの少年は排除すべきではないのかとカーミラは考えた。次の計画の障害となる前に早急に手を打つべきだ。
「やっぱり消えてもらうしかないわね、主と同じ『あちらの世界』の来訪者さん」