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第三話 キラービー討伐と薬草採取

メールディアの東にある川は一時間ほど走ったら見えてきた。

遠くからでも騒々しい羽音が聞こえ、そこにキラービーがいる事を示していた。

この辺りは花畑になっているのから、それで蜂が寄ってくるのかもしれない。

遠方から目を凝らしてみると、その姿を視認できた。こんな遠くからでも見付けられるなんてかなり大きい。俺の半身ほどあるんじゃないか?


そう言えばこの討伐クエストは対象を全滅させればいいのだろうか。請ける際にちゃんと確認すればよかったな。

ああクエストなんだからイベントウインドウを確認すればわかるか。

そう思い確認してみるときちんとクエスト情報が載っていた。


【キラービーの討伐】

メールディア東にあるユーリット川付近に棲息するキラービーを20匹討伐

部位証明:キラービーの針

報酬:銀貨10枚


【薬草の採取】

メールディア東のユーリット川付近に生息し、最下級ポーションの材料となる「サヒラ草」の10本採取

※下級ポーションの材料「サヒラ草(高品質)」を採取した場合、報酬増額

報酬:サヒラ草1本に付き銅貨10枚

サヒラ草(高品質)1本に付き銅貨20枚


キラービーの討伐ばかり気にしていたがそう言えば薬草採取のクエストも請けていたよな。

報酬は銅貨か。銅貨100枚が銀貨1枚、銀貨100枚が金貨1枚、金貨1000枚が白金貨1枚のため薬草採取クエストは少し安めだ。

まあモンスターと戦うわけでもなくアイテム採取という難易度が低いクエストだから当然か。

もうちょっと報酬はよくならないものか……。


そうだ!クエストがだめなら生産ならどうだろう。

このAnother Worldはポーションなどの薬品を作成ができるアルケミストや武器や防具を製作・修繕するブラックスミスのような生産職が存在する。

また割高になるしアイテムの性能が悪くなるがNPCに材料とお金を払うことでアイテムの製作依頼ができるそうだ。

まだβテストなので生産可能なアイテムの情報は集まっていないが、下級ポーションぐらいなら必要な材料の情報は集まるかもしれない。

クエストを請けてお金を得るよりは直接材料を集めて依頼したほうが割に合うかもしれないな。

あとで製作に必要な材料にはどんなアイテムが必要かあとで攻略wikiを調べてみるか。

とりあえずクエストとは余分に採取はしておこう。


その為にもまず周囲の安全を確保しないといけないな。

以前の狩りで知ったことだがAnother Worldではモンスターの出現ポップする位置が不明瞭で未だに見たことが無い。その場に留まっても再出現リポップしないのだ。

なのできちんと敵を倒しさえすれば採取の邪魔はされない。

だから手を抜かずに殺っておこう。


キラービーのレベルは4~7。対する現在の俺のレベルは5。

勝てない程のレベル差ではない。

フォレストウルフのように相手に気付かれないうちに「マナ・ボルト」の射程に入るため、背を向けているキラービーにそっと近付く。

もうすぐ射程内に入る――杖をキラービーに向けスキル使用の準備を――。


――その瞬間、俺は吹っ飛ばされた。


一体何が起こった!?

幸い痛みはなく、携帯のバイブレーションより激しい振動があるくらいですぐに起き上がり混乱しながら辺りを見回す。


そこにはこちらに襲い掛かろうとするキラービーの姿があった。

くそ、いつの間にか後ろに回られていたのか!


「マナ・ボルト Lv3!」――レベルがあがりスキル幾つか取得した。「マナ・ボルト Lv3」はMP消費量が増えたが威力及び射程が向上している――狙いを定めスキルを発動する。


だがキラービーはそれをひらりとかわした。

攻撃が外れ、キラービーが尾の針を出し強襲する、まずい!

倒れ込むように伏せるが肩に衝撃が走る。針は肩を掠めたようだ。


更に状況は悪くなっていく。

狙っていたキラービーが騒ぎに気付いたのかこちらに向かって来る。

昆虫型のモンスターなんて弱いだろうと考えていたがとんでもないな。

飛ぶ上にスピードがあるモンスターがこんなに厄介だとは思わなかった。

しかしこのままでは二対一で不利になる。

ステータスを見るとあと二度同じことをやられたら、HPが0になり死んでしまう。

なんとかこいつを倒さないと……。


そうだ、アレを使おう!


「スパイダーネット!」


細い魔力の糸が俺を中心に全方位展開される。

キラービーは避けようとするが糸の展開が速かったため搦め捕られた。

動けない程ではないが動きが阻害され、ぐんと速度が落ちる。


「マナ・ボルト Lv3!」


紫電がキラービーを貫く。そこで勝敗は決した。


よかった、スキルの選択は成功のようである。


スパイダーネット:自身を中心として魔法の糸を展開し、10秒間敵対象の移動速度を減少させる。


効果時間・射程が短く、使い所が難しいからてっきり従来のMMORPG同様対人用のスキルだとばかり思っていたが、成る程こういう相手に使えばいいのか。

「マナ・ボルト」は非誘導系直進型の攻撃だから狙いが甘かったり、相手が極端に捕らえづらいと当てにくいという問題がある。

だから如何に命中させやすくするかという戦略も必要になるんだな。

考えれば道理だけど、今までのMMORPGは大抵敵にカーソルを合わせてクリックすれば当たるだけだった。

流石はVRMMORPG!モンスターやスキルの性質なんか考慮して戦わないとだめだな。


おっとキラービーが向かってきているんだった。考えるのはあとだ。

同じ要領でキラービーを始末していこう!



メールディアの冒険者ギルドの扉が開く。

入ってきたのはほんの4時間前に訪れた少年――ケイオスだった。

カルロの視線がケイオスに注がれる。

ケイオスは見覚えのある顔を見付け、カルロのテーブルの前に着くと徐に掌をテーブルの上に掲げた。


ジャラジャラ――無造作に置かれる昆虫の針が二十。

そして厳選されたであろう良質のサヒラ草の束が十。


「クエストの完了だ」


(やはりコイツは本物か!)


カルロは内心感嘆した。

新人がたった一人でキラービーを倒すのは至難の技だ。

となるとあの数のフォレストウルフを屠ったのはやはりケイオスだと確信した。

流石にキラービーを二十匹も相手にしたので無傷では済まなかったようだが、これだけできるなら十分だ。

それにしてもまさか二十匹も相手にしてくるとは。


確かに彼にクエストを任せた際、カルロは特にキラービーの討伐数を指定しなかった。

何故ならばキラービーの棲息数は多く、この時期は常時討伐の対象なのだから。

多くても十匹ぐらいと思ったが、予想より多いのだから全く持って新人離れしている。


更にはサヒラ草も全て良質なものばかり。やはり目利きの才能も持っているのだ。

これを見てもう彼の実力を疑うものはいないだろう。


「ほらよ、銀貨十二枚だ。キラービーは常時討伐依頼が出ているから、暇ならまた請けてくれや」


こくりと頷くケイオス。そのまま踵を返し冒険者ギルドをあとにした。


(実力は確認できた。あとは素性と素行か)


残されたカルロはケイオスの手渡した針と薬草を納品の袋に分けていれつつ考える。

調べた限りでは犯罪者やブラックリストに彼と思わしき人物はいなかった。

だが彼が不審人物であることには変わりない。

だから彼には監視が必要だ。それもそれなりに腕の立つ冒険者が。


(ううん、誰か適任がいないものか)


なるべくベテランで信頼の置ける人物――。


カルロが人選に悩んでいると再び冒険者ギルドの扉が開く。


ガチャガチャと金属がぶつかり合う音が響く。それは訪問者の身にまとった鎧から発せられていた。

訪問者は鈍く輝く鎧に包まれた大柄の男は年齢は三十ほど、短く刈り揃えられた青髪で肌は日に焼けている。

顎髭を蓄えており人懐っこさを感じさせる笑みを浮かべていた。


「なんだハボック、帰ってきてたのか」


カルロは鎧の男に声をかける。


「ああ、ついさっきな。思ったより新人が頑張ったんでな」


「どうだった、今後のパーティーに加えられそうか?」


「気が強くとんだじゃじゃ馬だが才能はある。まあ冒険者なんてのは多かれ少なかれ負けん気が強いほうがいいさ」


「ああ、確かエルフの嬢ちゃんだったか。顔に似合わずおっかねぇんだな」


「ガハハハ、俺が口にしたって言うなよ!あれで気にしてるみたいだからな!」


長命の亜種族であるエルフをこの辺りで見かけるのは珍しい。

更にエルフは誇り高い種族で気難しいというのが一般の認識のため、女の冒険者という事もあってなかなかパーティーに所属できなかった。


そんな時ハボックの所属するパーティーはメンバーの二人が引退した為に代わりの冒険者を募集していたのだ。

彼のパーティーは女性も所属しており、エルフに対する偏見もないため、冒険者ギルドが彼女を紹介したという経緯がある。


そんな彼女がハボックのパーティーでうまくやれていると聞きカルロは安堵する。

ハボックのパーティーは実績もあるから冒険者ギルドの信頼も篤い。


「そうだ、おいハボック」


「あん、どうした?」


「お前んとこに入った新人はエルフの嬢ちゃんともう一人いたよな?」


「ああ、そうだが?」


怪訝な顔をするハボック。


「頼みたいことがあるんだが――」


何か思い付いたかのようにカルロはニヤリと笑った。

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