発狂
地獄の味を忘れかけていたが、
やっと思い出した。
苦しいのと同時に、
少しだけ安心している自分もいる。
これが俺だ。
これがある事で俺は、
また人に優しくできる。
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全世界から自分の存在を遮断して、僕だけの世界で声を発すると、スムーズに発話できるだろうか。
周囲の評価が上がれば上がるほど、奈落に落ちることが怖くなっていく。死のうとしていた頃のことも、もう殆ど思い出せない。ただ今死ぬことだけを考えてしまって、それが駄目なことは客観的に理解はできているけれど、どうしても吃音が大きく出てしまった時に、それが周囲に誤解されていると思うと、どうにもいられなくなって、首を吊って全て終わりにしてやりたくなるのだ。
本気で死にたくなっていたあの時、僕は開き直って好きにやろうと決めた。他人の評価など気にせず、自分らしく生きようと思った。しかし、こうして今、吃音に抗えず、失敗をすると、あぁ、今まで積み上げてきた信頼が、全て崩れ落ちてまった、きっと陰で馬鹿にされているだろうと、悲観的なことばかりが脳裏をよぎって、何も次のことを考えられなくなって、またここで終わりにしたいと思ってしまう。
頭がぐちゃぐちゃになって、バグる。電話が入ってくるたび、僕は叫び出したいほどの恐怖を何とか堪えながら、必死で名乗っているのだった。
僕は本当は無能だ。
こんなに当たり前のこともできない、社会不適合者なんだ。
どれだけ知識があって、どれだけ指示能力があっても、喋るという当たり前のことができない僕に、価値なんて無いのだ。
みんなが僕を蔑みの目で見ているのが分かる。
僕はカス野郎なんだ。
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
自己否定に押し殺される。
いっそ死んでしまいたい。
死んで天国の扉を開けて、楽になりたい。
そんなことを考えている僕を、僕は下らないと思いつつも、仕方ないと思うのだった。
明日も仕事だ。
こうやって小説を書いていると、少し落ち着いた。
死ぬ気で我慢しよう。
そしたら、明後日は休みだ。
良かった。
小説があって。




