第一話 仲間その3
俺は手元の情報を整理しながら、これまでの手数料について思いを巡らせた。前回同様殺しで終わるのだろうか。これまでの30回の依頼で人を殺したのは17人。最初の頃は神々の秩序のためと言い聞かせていたが、ここまで来るとどうでもよくなってきていると、こんなやり方で良かったのかという葛藤が出てくる。
さっきの話を聞いていると勇者が仲間を殺したとしか考えられない。だが、どうしても納得がいかない。もし仲間が嫌いなら、魔王を倒した直後に殺せたはずだし、いくらでも隠蔽できる。なぜその行動に至ったのか、まさに本人のみぞ知るといったところか。
閻魔とスサノオに別れを告げ、より詳しい情報を得るため、俺を勝手に生み出した御婦人の元へ向かうことが適切だと考えた。着くと目の前にあるのは虹色に輝く木と、それを囲むようにして建てられた家があった。御婦人の名前はアパロ・キ・ザナマア。彼女は私にとって創造主であり、時に厳しく、時に優しい母親のような存在でもある。かなりの財力を持ち、顔が利く俺が生活に困らないのもザナマアのおかげだ。
ドアを開けるといつも通り、机に置かれた大量の紙の山を一人でテキパキとペンを走らせている。人の気配に気づいた彼女はペンを止め、顔を上げた。俺だとわかると、
「あの件だね。なら右の部屋に居るわよ。」
「ありがと、ザナマア。」
開けてみたが、その部屋には誰もいなかった。
「ザナマア、誰もいないぞ。」
「あら、ごめんなさい。私から見て右だったわ。」
こういうところがあるから憎めない。それもザナマアの魅力の一つだろう。言われたとおり反対側の扉を開けた。さっき言っていた女神の姿が見えた。腰まで届く艶やかな長い髪は、上半分が夜空のような深い青、下半分が黎明の空のような淡い紫にくっきりと分かれている。体のラインが際立つ、シルクのように滑らかな生地のドレスを優雅に着こなしていた。その瞳は星々を宿したようにきらめいているが、どこか憂いを帯びている。
「もうご存知かと思いますが、今回依頼の内容は元勇者、現王になった転生者を殺す依頼です。」
物騒な依頼内容だが、女神は静かに、しかし重い口調で告げた。その言葉の裏には、何か哀しみがあるように思える。
「ですが、殺す前に、初めて彼と会った時のことを話してもらえませんか。」
「私が管理する『転生に値する魂のリスト』を見ていた時のことよ。あの子の魂は、ステータスの潜在的な伸びしろが、文字通り底なしだった。それに、性格も素直で、導きやすいだろうと判断したの。私たちの間で定められている規定では、Aクラス以上の適性を持つ転生者に対しては、転生後の世界への過度な干渉や詳細な監視はせず、ある程度本人に世界の行く末を委ねるという方針なの。だからこそ……一体、どこで何を間違えて、あの子はあんなことになってしまったのか……。」
女神の仕事は、世界のバランスを保つために転生者を適切に選び、導くこと。このような事態は、彼女の選択と監督責任に関わる、絶対に避けねばならないミスなのだ。俺は、今回の依頼が単なる暗殺ではなく、女神自身の評価と、場合によっては彼女の地位に関わる「ミスの後始末」であると瞬時に理解した。
「殺すんではなく改心させるのはどうでしょうか。原因が分かれば、あるいは、道があるかもしれません。」
「あなたは殺し屋専門みたいな人でしょう?そんなことができるのですか?」
「ええ。表向きはそうですが、これまで30回ほど殺す依頼をされましたが、そのうちの13回ほど改心させました。」
「分かったわ。あなたを信じましょう。好きにしてちょうだい。しかし、もし失敗すれば、私だけでなく、この世界の転生システムに関わる他の神々の地位さえも危なくなるわ。それだけは肝に銘じておいて。」
俺は頷き、握手してその場を後にした。生憎、俺自身は長距離の瞬間移動といった便利な能力は持ち合わせていない。そこで、以前にも何度か厄介な移動を助けてもらったことがある、空間転移の専門家である「スリング」の隠れ家へと向かった。
「よっ、スリング。また頼めるか?」
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