炎の記憶 朱雀
舞い上がる火の鳥は辺りの木を焼き払った。
「なんだ、あれは!?」
「召喚魔法です…」
「あれか、一体どうして」
「分かりませんが、あれは魔法の流れを自身に集めています。それを炎属性の魔法として発散しています。」
「なんだか、よく分からないけどあそこにはフレアがいるかもしれない」
「恐らくは…」
「行ってみよう」
「分かりました」
(一体、何が起こったんだ。俺が究極魔法で、親父を攻撃して、確かにスキルのおかげで親父の魔法に打ち勝ったんだ。それで、親父に攻撃が向かって…なんでこうなったんだ)
「フレア!フレア!起きてる!?」
「…シャナ、どうして?」
「どうしてもこうしてもないわよ。何よあれ!」
そしてシャナは火の鳥を指差した。
「そうだ、そうだった」
「あれは朱雀、お前の母親の召喚体だ」
「あれが?どうして俺の母さんが…」
「詳しい話は後だ、まずは朱雀を止めなければならん」
「どうやって!?」
「氷属性の魔法をあの召喚体に向けて放つしか方法はない」
「じゃあ俺達じゃ…!」
フレアはシャナを見た。
「今、氷属性魔法を使えるのは其方しかいない、すまん」
「いえ、いいんですよ」
「シャナ…いいのか?」
「大丈夫やって見せるわ。それに言ったでしょ?あなた1人には戦わせないって」
「…ああ、そうだな。頼むよ」
「任せて!」
朱雀は炎を辺りに振り撒いている。
「こっちに向かう攻撃は俺が魔法で撃ち落とす、朱雀への攻撃はできるだけ最大限の魔法で頼む」
「了解じゃあ早速、氷超級魔法6フリーズ!」
冷気の塊が朱雀に向かう。
しかし、朱雀の圧倒的な炎の量の前では無意味だった。
「ダメッ、消えない!」
「クソ、どうすれば!」
「お前ら大丈夫か!?」
ディア達が駆けつけて来た。
「ディア、俺たちは大丈夫だが…」
「あれか…」
「母さんをどうにかしないと」
「あの火の鳥はお前の母さんの記憶が具現化されたものなのか…」
「そうだ、シャナの超級魔法で攻撃しても全く効かなかった。なあ、ディア頼む。お前のスキルで母さんをなんとかしてくれ…!」
「…どれだけかかるかわからないけど頑張るよ」
「…私が、やります。」
「レイ?」
「わ、私がスザクさんを究極魔法を使って止めます…」
「いいんだよ、レイ。無理しなくて、使いたくないんだろ?」
「聞いてたの!?…ですか?」
「ちょっとね、だから…」
「いえ、今ここで最も早くスザクさんを止められるのは私です。」
「大丈夫?」
「ええ。でも、絶対に近づかないでくださいね」
「分かったよ、みんな離れよう」
「ああ」
「分かったわ」
「おい、親父も早く」
「私はいい」
「なんで…!、分かったよ」
「フレア?」
レイは周りを見回してから、一息つき、魔法を唱えた。
「氷究極魔法、ダイヤモンドダスト!」
冷気が朱雀に降り注ぐ。しかし、まだ火は絶えない。
「氷究極魔法、ダイヤモンドダスト!」
再び大量の冷気を朱雀に浴びせた。朱雀の火は少しずつ弱まっていき、体からは紫の粒子が雪のように降ってくる。そして、それらはフレアの元へと集まってくる。
「なんだ?」
そして、それに触れることで誰かの記憶が流れ込んでくる。
「あなたの名前はフレア。うん、フレアが良いと思うの。」
「そうか、フレア、良い名だ」
「きっと、私達はこの子と思い出を紡いでいくんだわ」
「ああ、楽しみだ」
「母さん…」
「え?」
「もっと!氷究極魔法、ダイヤモンドダスト!」
炎はどんどん消えていき、降る粒子の数もそれに従って増えていく。
そして、それらはフレアに帰ってくる。
「スザク!しっかりしろ!」
「母さん、しっかりして!」
「ゲホッ!ゴホッ!」
私はもう、死んでしまう。
分かる、もう私の体は衰弱しきっている。
まだ、フレアはこんなに小さいのに…
いやだなぁ。死にたくない。
まだ…
スザクの手が震えながらフレアの頬に伸びる。
「ごめんね…」
「母さん…」
まだ…
フレアの頬に温かい感触が残る。
無意識に手を頬に当てる。
気づくと、手は濡れていた。
「氷究極魔法、ダイヤモンドダスト!」
炎はもはや鳥の形をせず、弱い灯火のようなものしか残っていない。
その火も少しずつ弱くなっている。
もっと家族で思い出を紡いでいきたい…
もっとたくさんかけがえのない、何もない時を過ごしたい。
もっと生きたい。
もっと…
そして、とある場所で炎が舞い上がった。
辺りの木々、草をことごとく焼いた。
「そして、私がその事を聞いて駆けつけたのだ。」
「!、親父も見えてるのか?」
「朱雀はこのままでは止まる事を知らずに暴れ回ってしまう。しかし、ある男がそれを止めた。
魔王だ。」
「!」
「魔王は、朱雀を片手で持てるほどの水晶のような物に、封じ込めた。そのままどこかへ行こうとする魔王を私は止めた。あの姿でも、私の妻でお前の親だ、放ってはおけない。そしたら、魔王は部下になる事を条件に了承した。そして、その水晶は私の心臓として機能していた。裏切れないように…。
これが、ことの全てだ…」
「親父…」
「最後に一言言わせてくれ」
「ああ…」
「もう、お前を縛るものはなくなる。自分の好きに生きろ。」
「…なんだよ、今更。言われなくたってしてるわ」
「なんだと?全く、せっかく格好よく決めようとしたのに、そもそもお前は反抗し過ぎなんだ、親の気持ちも考えてみやがれってんだ。」
「はあ?そもそもそっちが…」
「ふっははははは」
プロメテウスが笑い、フレアもつられるようにして笑った。
「なんだよ、人が真剣に話してる時に…全くこれだから親父は」
そう言って、フレアはプロメテウスに背を向けた。
「…じゃあな」
「…ああ」
「スザクよ、お前の息子はしっかりと育っておる。少々生意気だがな。もう、私達は要らないさ。私はお前の元に…」
プロメテウスは少しずつ目を閉じた。




