激突
フレアとディア、どっちが主役か分からんくなってきた。
翌朝
「よしっ、もう大丈夫!」
「もう、いいんですか、ディア?」
「ちょっと痛むけど平気さ、早いうちにフレアの親父さんを探さないと」
「ありがとう、ディア」
「フレア、親父さんの場所は分かるのか?」
「確証は無いが、一つだけここじゃないかと思う場所がある。」
「それは?」
「俺の母さん、スザクの墓だ」
「お前の母親は亡くなっていたのか…」
「ああ、数年前にな。親父は母さんの墓参りを欠かしたことが無かった。今、思えば親父は母さんが死んだからどこかおかしくなっていった気がする」
「なるほどな、そうと決まれば行くなら早い方がいいな」
「そうだなディア」
スザクの墓の前。
2人の人物がそこにいる。
1人は黒いマント、黒い服を身に纏い、佇んでいる、フレアの父親である。
そして、もう1人は青い長髪、そして着物を着ている女性だ。
「プロメテウス、本当に彼らはここに来るのですか?」
着物の女性はフレアの父親にそう尋ねた。
「当然だ、フレアが私の手がかりを求めるならまず、ここに来るはずだ。」
「昨日、一昨日と来ませんでした。貴方の見当違いでは?」
「先の戦いで、向こうには手負がいた。おそらく来なかったのはそのためであろう。」
「なるほど、ではもう一つ質問を…」
「なんだ?」
「貴方に息子が殺せますか?」
「!」
「すぐに答えられないようではダメですね」
「大丈夫だ、私も覚悟なしに来たわけではない。」
「まあ、いいでしょう。貴方が殺せないなら私が殺します。」
「…来たか」
「ええ、そうですね」
フレア達は目的の場所である、スザクの墓にたどり着いた。
フレアの予想通り、そこにはフレアの父プロメテウスがいた。
「親父…!」
ディアはもう1人の着物の女性を見た。
「あいつは、誰だ?」
「プロメテウスがフレアと戦いたいと言ったので、私は貴方達の相手をしましょう。」
「…なるほど、あんた1人で俺たち3人の相手をできるのか?」
「ええ、出来ますよ!氷上級魔法トリプルフリーズ!」
ディアは後ろに飛んで攻撃を避けた。
「いきなりかよ」
「ねぇあの氷、少しおかしいわ」
「何が?」
「形が整いすぎてる、普通魔法で攻撃した時もっと不規則なのに、これは、綺麗すぎる」
「流石、同じ氷魔法の使い手ですね。しっかり私のスキルに気づきましたか。」
「わざとなのね」
「当然です。私のスキルは、構造を作る能力。これを利用して、氷魔法を放つ際にできる氷の飛沫を自在に動かすことができます。こんな風に…」
「来るわ、気をつけて!」
「氷究極魔法、ダイアモンドダスト!」
放たれた無数の氷の粒は、ディア達を狙わず、ディア達の前方に落ちた。そして、それらが発散しまるで触手のように四方八方に伸びた。
「くそっ!」
ディア達は生え続ける氷の棘によって、元いた場所から遠ざけられていった。
「これで良いでしょう?プロメテウス」
「ああ、十分だ。ツクヨミ」
「なるほど、俺と一対一でやるつもりだったのか」
「その通りだ、お前もそのつもりだろ?」
「まあね、これでも親子だからな」
「今は敵同士だ、甘えたことを言うな」
「へいへい」
「では、行くぞ!」
プロメテウスは開戦と同時にスキルで、一気にフレアに突進した。
フレアは防御しかできず、その攻撃を受け、押し込まれた。
「くっ!」
そしてそのまま、ツクヨミが作った氷の建造物を砕きフレアを弾き飛ばした。
「ぐっファイア!」
フレアは魔法を打ち、衝撃を受け止めた。しかし、それでも完全に緩和できず、地面に体を打ちつけた。
「っ!やっぱやるな、親父!」
「当然だ、俺を誰だと思ってる!」
「炎上級魔法トリプルファイア!」
「炎上級魔法トリプルファイア!」
2つの魔法が衝突し、爆発しても2人は構わず正面からぶつかり合った。
「ずっと分からなかったんだ」
「何がだ?」
「あんたは俺の知ってる親父のままだ、どうして俺たちの敵になった!」
「お前が勝ったら教えてやる!」
「だったら力ずくでも聞いてやる!」
「やってみろできる物なら!
炎究極魔法フレイムレイン!!」
「俺はこの前の俺のままじゃない。
炎究極魔法フレイムレイン!!」
無数の火の玉同士がぶつかり合って、炎の壁を作った。
「まさか究極魔法を…こんな短期間で」
「短期間じゃない、親父があの時打たなかったら、きっと今も使えなかった。あんたが敵じゃなかったら、
そして究極魔法を使えなかったら。俺は反抗してもいつだってあんたについて来たんだ!」
「!」
炎の壁が少しずつ消え、互いに姿が見えて来た。
「俺はあんたを止めて見せる」
フレアの周りの温度が上がっていき、景色を歪めた。
「絶対に!」
フレアのスキルは物の熱量を上げる力、それは時間に比例する。
そして、その対象は魔法も例外ではない。
「炎究極魔法フレイムレイン!!」
より熱量の上がった無数の火の玉がプロメテウスに襲いかかる。
「くっ、炎究極魔法フレイムレイン!」
ディア達はなんとかツクヨミが放った、氷の棘を避けていた。
「みんな大丈夫か!?」
「私は大丈夫!」
「私も大丈夫です」
「良かったけどこれじゃみんなの場所が…」
その瞬間、氷の棘がディアの頭を狙って伸びて来た。
「!」
間一髪で、それを避けた。氷の棘が頬を掠め血が出ている。
「あ、あぶねー」
「おや、避けられましたか」
ツクヨミは氷に手を当てながら言った。
「さて次は…」
「あなたが倒される番ですよ」
「!、あなたは…なるほど氷を溶かせるのはあなただけでしたね」
「炎上級魔法トリプルファイア」
「氷超級魔法6フリーズ」
「トリプルファイア」
レイは魔法を2回連続で唱え超級魔法を打ち消した。
「あなたのそれ、ずるいですよね。魔法を何度も放てるなんて。やはり究極魔法を直接当てに行かなかったのは正解か」
「無限に放てる訳では無いですよ、それにあなたとお話をするつもりもありません。」
「残念」
「炎上級魔法トリプルファイア」
「氷超級魔法6フリーズ」
さっきとは違い、ツクヨミは地面に魔法を放った。
そうするとツクヨミの足元から氷が塔を形成した。
「上に逃げましたか」
「こうすれば、そちらの攻撃は通りません」
「炎上級魔法トリプルファイア」
レイは上に向かって魔法を打った。
しかし、それらは氷の触手がそれを防ぎ、ツクヨミはもう一本触手をだし、それに乗って元の場所から離れた。
「なるほど、場所を変えることで周りの魔力の流れが薄くなっても問題ないようにしてるのですか」
「氷超級魔法6フリーズ!」
「面倒ですね、炎上級魔法トリプルファイア!
炎上級魔法トリプルファイア!」
「それにしても、どうしてあなたは超級魔法や究極魔法を使わないのですか?」
「それは、私が賢者だから…」
「本当に賢者ならね」
「…」
「あなたは本当は究極魔法を使えるのでは?」
「…何が言いたい?」
「使えるけど、使わない理由があるのでは?例えばディアとか言いましたか。その人に関係するのでは?」
「あまり知った口を聞くな…!」
レイは鋭い眼光をツクヨミに向けた。それは離れたツクヨミを突き刺した。
「っ!…図星ですか」
レイの周りからあの時と同じ紫色のオーラを放っている。
「もういい、使いたくはなかったが貴様には究極魔法を使ってやる!」
(究極魔法なせいぜい2回連続、1度ここで打ち、氷に乗って移動してもう一度打つ)
「今から4回連続で究極魔法を放つ。耐えれるなら耐えてみろ」
「なっ!」
「狙え…この距離でも、外すな。
聖中級魔法メガホーリー!」
光線がツクヨミに直撃した。
「痛っ、何が」
「ディア!」
「どうやって氷を登って来た?…あの娘か!」
ディアはシャナに魔法で足場を作ってもらい登って来ていた。
「くそっ、やっぱり聖属性の中級魔法じゃ威力が低い。せめて上級魔法が出せれば…」
「邪魔な小僧をどうにかしたいが、レイの警戒を怠る訳には…」
しかし、その瞬間。
大きな爆発が真横で起きた。その衝撃によりツクヨミの生成した氷の建造物は全て砕け散った。
ディア達もその衝撃により吹き飛ばされる。
爆発により噴き出した炎はまるで巨大な鳥のようだった。