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魔法の記憶  作者:
4/13

氷の魔女

その街は、吹雪に覆われている。しかし、特別寒い地域でもなく、特別標高の高い山に位置するわけでもない。しかし、そこだけに雪が積もっているのである。

「長老、この吹雪何年続いてるのでしょうか?」

「知らん、5年くらいじゃろ」

「もうそろそろ引っ越しませんか?」

「ふむ、後一年くらい待たんかの」

「それ五回目です...」

「それにあの子も、可哀想じゃし」

「...」


この街で一番目立つのは街の中央にある時計塔である。そして、そこの最も高い部屋に氷の魔女がいる。

その魔女は常に泣いていた...


「やっと、着いた...」

「ここが例の村ですね」

ディアは辺りを見回し、

「本当だ、本当にここだけ吹雪いている」

と言った。

「そうです。ここには氷の魔女がいるそうで、それが原因でこんなことになっているようですね。ま、何はともあれまずは入りましょうか?」

「そうだな」

ディア達は村に入って行ったが、フレアは村の入り口で立ち止まっている。

「フレア、行きますよ」

「あ、ああ、すまん...」

フレアは慌ててディア達について行った。


村を歩いていると長老がディア達を見つけて、話しかけた。

「おやおや、旅の方々とはこれまた珍しい。何年振りじゃろなぁ。今日はもう遅いから、村の宿に泊まると良い。」

「ありがとう、お爺さん」

「少年よ、わしは長老じゃよ。ただのジジイとは違うわい。まあ、変わらないけどな」

「ハハっ、ありがとうございます。長老様」

「フォフォ、では達者で旅の人」

長老は去っていった。

「さあ、宿屋に泊まろうか」

「ええ」

「...」

「フレア、どうした?」

「い、いや、なんでもない」

「そうか?」

「先程から様子が変ですよ。本当になんでもないんですか?」

「本当になんでもないんだ」

「そうですか」

それから、ディア達は村の宿に泊まった。

彼らはそれぞれの個室で一晩を過ごす。

そこで、ディアは1人考え事をしていた。

「それにしても、俺の旅がこんな方向に進むなんて思いもしなかった。そして、魔王を倒す、か。一体どれだけの時間がかかるのだろうか。そもそも倒せるのだろうか。今じゃ、まだ分からないな。まずは俺が聖属性の究極魔法を習得しないといけない、まだ先は長い。」

考え事の最中に、誰かがドアをノックする音が聞こえた。

「ん、誰だ?」

ディアはドアを開けた。

そして、そこにはレイがこじんまりと立っていた。

「レイ?どうしたんだい?」

「少し...話がしたくて」

「?ここじゃなんだし座って話そうか」

レイは何も言わず、ただ頷いた。

「それでどうしたの?」

「えっと、まずはお礼を」

「お礼?」

「ええ、あの時私を選んでくれたことです」

「なんだ、そんなことか、君がいなかったら俺はあの平原も越えられずに死んでただろう。お互い様だよ」

「ありがとう、ディア」

「おいおい、だからやめろ...」

ディアの話を遮るように、大きな爆発音がした。

「何の音だ?」

「外からです!」

「外に行ってみるか」

「わかりました。行きましょう!」

ディア達が宿の外に出ると、街の時計塔から火が出ている。

「爆発したのはあそこか...」

長老も騒ぎを聞きつけ出てきた。

「いかん!あそこは...」

「どうしたんだよ、お爺さん」

「あそこにはあの子が、氷の魔女が、あの子がいるのじゃ!」

「何だって!?」

「あの子はこの吹雪を起こしているのだが...悪い子ではないんじゃ助けてくれんか?」

「ディア、行きましょう!」

「ああ!」

ディア達が時計塔を登るとそこには2人いた。

1人は傷を負って蹲っている。

もう1人は仮面を被っていて、顔が見えない。

「爆発を起こしたのはこいつか?」

手負の方がディア達を見た。

「君たち、誰?」

「助けに来ました。氷の魔女ですね?」

「まあ、そう呼ばれてるけど...」

「よそ見をするな、炎上級魔法トリプルファイア」

仮面の男はそう言って魔法を放った。

「氷上級魔法トリプルフリーズ!」

氷の魔女は仮面の男の炎魔法に対して氷魔法を打ち返し、相殺させた。

「なるほど、ならば炎超級魔法6ファイア」

「そう来ると思ったわよ!氷超級魔法6フリーズ!」

二つの魔法は、同じく相殺して消えた。

「私の実力を舐めてもらっちゃ困るわよ!」

「超級魔法まで習得しているのか、仕方ない。出来るだけ周りの被害は出さないようにしたかったが、貴様を抹殺するという魔王様の命、果たさねば。」

「魔王だって?」

魔王という言葉にディアは反応した。

「炎究極魔法...」

「炎初級魔法ファイア!」

仮面の男の横から火の玉が直撃した。

「くっ」

仮面の男の呪文詠唱は遮られた。

火の玉を放ったのはフレアだった。時計塔のすぐ近くの建物から魔法を放ったようだ。

「フレア!」

魔女はその方を向いてそういった。

「やっぱり、氷の魔女はお前だったか。シャナ」

「フレア...」

「さあ、テメェ覚悟しろよ!」

「...」

「あ!」

仮面の男は何も喋らず、どこかへ去ってしまった。

「チッ、逃げやがったか」

フレアは屋根から降り、一息つく。すると、シャナも時計塔から降りて、フレアに駆け寄った。

「うわああああん、フレアーー!」

そのまま抱きつき、フレアを押し倒した。

「うわっ、ちょっと、落ち着け」

「ずっと会いたかった...フレア...うわあああああん」

「すまない、長く待たせすぎたよ」

ディア達も時計塔から降りてきた。

そして、その光景を見たディア達は一瞬思考が停止した。

フレアにまるで赤ん坊のようにシャナが抱きついていたのである。

...泣きながら

「あ、あんた達はどんな関係なんだ?」

「すまない、こいつが落ち着くまで待ってくれ」


彼女が落ち着いたあと、ディア達は宿屋でフレアの話を聞くことにした。

「俺たちは、幼馴染みたいなもんで小さい頃よく遊んでた。」

「待ちなよ、あんたは炎の国の王子だろ?そんなことできるのか?」

「時々城から抜け出してたんだよ。バニレアの外れにある森はいい遊び場だった。だが、あのクソ親父が」

「クソ親父ってことは、バニレアの国王か」

「そうだ、あいつがシャナをここに連れ去って俺たちを引き離したんだ。ちょうど5年前か、俺はシャナがどこに連れられたのか教えてもらえなかった。」

「シャナの家族はどうしたの?」

「私に家族はいないわ。私の住んでた村は私の幼い頃大雪が降った時の雪崩で無くなった。その時家族は死んでしまった。そして、あの森に降りてきて獲物を狩るために魔法を習得した。そして、フレアと出会ったの。」

「そうなのか」

「分かってはいるさ。俺が炎の国の王子だから、炎の使い手ではないもの、ましてや氷属性の使い手と親密になることは国民の信頼を損ねる。分かってるさ...」

「ひとまず、これからどうします?」

重苦しい空気を変えるように、レイが言った。

「これからって?」

「あなた達はこれから私たちの旅に着いて来るのですか?」

しかしレイの表情は鋭く、また、重い質問をフレア達に問いかけている。

「...」

フレアとしては国に帰らねばならない。しかし、シャナに再開した以上、そう簡単に国に帰るなんて言えない。フレアは沈黙した。

「私はあなた達に着いていきたい。」

「シャナ...」

「私はもう、あそこでずっと泣いてるのは嫌。」

「そうか、分かった。行くよ」

「国は大丈夫なのですか?」

「俺がいなくても、親父がいる。そんな大した問題にはならんよ。多分」

「分かりました。と言うことでディア、いいですね?」

「ああ、俺は別に仲間が増えるならなんでもいいよ」

「じゃあ、決まりですね!」

レイはさっきの険しい表情が和らいで笑顔を見せている。


「本当に行くんじゃな」

「ええ、5年間お世話...というか迷惑をおかけしました」

「いいんじゃよ、この街の皆あんたの事情は知っとる。誰も悪くは思っておらんよ」

「ありがとう、おじいさん」

「ほほほ、ではな」

「はい」


こうして、ディア達はフレア、シャナ、2人の新しい仲間を連れて新天地へと赴くのであった。


...仮面の男は跪き、ある男の前にいる。

「氷の魔女を仕留め損ねたか...」

「申し訳ございません。魔王様」

「仕方ない、もう1人寄越す。奴らを全員殺せ」

「!...フレアも、でございますか?」

「当然だ」

「承知、しました」

「頼んだぞ、炎の四天王」

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