討伐に向けて
翌日になりディア達は旅をしながら魔王討伐に向けて話し合っていた。
「魔王は火、氷、風、雷の4つの属性と闇属性を扱うことができます。それに加えて、幹部にも4つの属性を扱うことができる者、それも究極魔法まで扱うことが出来ます。」
「流石に堅いな」
「ええ、魔王しか闇属性は扱えないものの、闇属性は他の4つの属性に対して負けはしません。それを打開できるのが聖属性です。しかし、聖属性は4つの属性に弱い。今のままでは魔王に対して有効打を与えることは絶望的でしょう。」
「どうするか」
「そのためには同じくこちらも4つの属性を扱える者達、そして何より、ディア、あなたが聖属性の究極魔法を使えるようにならなければなりません。」
「先は、長いな...」
「聖属性の習得に関してはそうでもありません。」
「そうなのか?」
「ええ、一つの魔法しか扱えない人間はその魔法の特性を扱うのが得意であるのです。聖属性の魔法ならばできるだけ大きな光線を放つイメージを持ち続ければあなた程の素質ならばそう時間はかからずとも習得出来るはずです。」
レイは自信満々そうに話している。
「そうか、そんなにも言ってくれるなら出来そうな気がするな。」
「そうでしょう?では、早速この辺りのモンスターを狩ってみましょう!」
大きなテーブルに数人が取り囲むように椅子に座っている。そこでは、会合が開かれていた。
「昨日、ビッグレッドスライムが発生したようだ。」
「それが、どうかしましたか?珍しいことですが、異常という程では無いかと。」
「それが、見つかったのが亡骸なのだよ。それも、死闘の末ようやく倒した、という者では無い圧倒的な実力で葬られた。」
「陛下、それは誠ですか?ならば、レッドスライムは炎属性ですから、氷属性を扱う人間が倒したのでしょうか?」
「いや、ミュンゼルそれを倒したのは聖属性を扱う者だ。」
周りがざわつき始めた。
「聖属性でビッグレッドスライムを倒すのならばより大きなエネルギーが必要になります。それの使い手なんてあの地域にいるなんて聞いたことがありません」
「ミカルドよ、其方の意見ももっともだが、見てみぬことには結論は出せぬ。兵を送り調査をさせよう。」
「ならば父上、私が行きましょう。」
「フレア...お前はダメだ残っていろ」
「その者は聖属性でビッグレッドスライムを倒したのでしょう?ならばほぼ確実に上級魔法以上を扱えますね。この国に私と父上以外に上級魔法以上を扱える炎属性魔法の使い手がいると?」
「......仕方がない。お前に頼もう」
「承知いたしました」
フレアは部屋を出て行った。
「...皆の者、会合はこれで終わりだ。各々、それぞれの持ち場に戻れ。」
そう言うと、席に座っていた人達は少しずつ部屋から出ていった。しかし、ミュンゼルだけは残っていた。
「陛下、フレア様に任せて良いのでしょうか。」
「実力は確かだ、行かせる他あるまい。」
「はぁ、陛下の苦労が身にしみて伝わってきます。」
「ああ、難しいな」
ディアは草原のモンスターを狩って、聖属性魔法の強化をはかっていた。
「よし!中々身についてきたな」
「もう少しで中級魔法を習得できそうですね」
「ああ、もう少し」
ディアは自信に満ちた様子で鍛錬に励む。
フレアは報告にあった場所に赴き調査をしている。
「さあ、聖属性を扱う人間はこの辺りにいるかな」
辺りを見回すも、それらしきものは見つからない。
「流石にすぐには見つからないか。ん?あの光は...
これはもしかして!いやー思ったより早く見つかったな」
フレアは光の発生源に向かっていった。
辺りにモンスターの死骸が、大量に散らばっている。
死骸の数は100は超えているだろう。ディアは流石に疲れ切っていた。
「あぁ...もうだめだ」
ディアは腰を下ろした。
レイは倒したモンスターの様子を見ながら
「たくさん倒しましたね。どうですか?魔法の様子は」
と言った。
「何回かに一回は中級魔法を打てるようになってきたよ」
「そうですか、順調ですね。あ、これはレッドスライムですか?倒せるようになったのですね」
「あぁ、最初は逃げてたんだけど次第になんとか倒せるようになって、あいつタフだから一度に何回も魔法を打てていい練習になるんだよな」
「それにしても1日で中級魔法を習得するなんて大したものです。普通なら1ヶ月、早くても1、2週間はかかります。まあ、流石にここまでの鍛錬はしないでしょうけど。」
「これなら早いうちに上級魔法もできるかな」
「上級魔法がなんだって?」
「!?」
見知らぬ声にディアはすぐさま立ち上がって、声の方向から遠ざかった。
「フレア様、炎の王国バニレアの王子がなんの様ですか?」
レイはその人物を知っているようだった。
「王子?フレアって...まさか!」
「そうだ、俺の名はフレア。炎の魔術師フレアだ。お前等だろ、ビッグレッドスライムを倒した聖属性魔法の使い手は!」
「やはり、その件ですか」
「そうだ、ビッグレッドスライムを倒した実力を見せてもらう。俺と勝負だ!」