風の記憶
「魔王…お前は一体彼女らに何をした?」
「…俺が施したのは、召喚の術式。」
「…?」
「通常の召喚魔法は術者自身が大量の魔力の流れを自身に集める必要がある。だが、これは再現が難しい。
そして、他人が召喚を施す方法だが、1人ではできない上に手間がかかりすぎる。だから、元々術者の体に大量の魔力の流れを埋め込めばいつでも召喚ができる。」
「…違う」
「あ?何言ってんだよ」
「俺が聞きたいのはそっちじゃない」
「何を…?」
「ライくんの村で見たモンスター。奴は魔力の流れを利用して自身の肉体を再生させていた。」
「だから、どうしたと…」
「同じなんだよ、そのモンスターの内部の魔力の流れ方と」
「…」
「魔王、お前は彼女らにずっと生きていて欲しかったんじゃないのか?」
「…」
魔王の周りの魔力の流れが大きく揺らいだ。魔王からは紫色のモヤのようなものが見える。
「魔王!」
「テメェはつくづく俺をイラつかせる。いいか!?俺はカオスだ!人間如きに測れるような存在じゃ無い。ベラベラと喋りやがって、知ったような口聞いてんじゃねえぞ、人間!!」
カオスの体をドス黒い空気が包み込む。
「っ!」
黒い空気から出てきたカオスは、まるで悪魔のような姿をしていた。
「これが、本当の俺だ。
さぁ人間、死ね!」
「雷超級魔法6サンダー!」
ライはアウラに電撃を放った。
そして、アウラの視線はライに向けられた。
(よし、ひとまずファーレンに攻撃が行くことは避けた)
「こっちだ」
ライはファーレンから遠ざかるように動いた。
「風究極魔法、トルネードサーカス!」
「来た!」
スキルでライは竜巻を避けた。
「風初級魔法、ウィンド」
しかし、避けた先に魔法を置かれていた。
「っ!」
ライは弾き飛ばされた。
アウラのスキルなら初級魔法でも大きな威力を出せる。
「風究極魔法、トルネードサーカス!」
ここで、ファーレンがアウラに魔法を放つ。
「ファーレン!?」
「ライ!あなたも究極魔法を!」
「ああ、分かった!雷究極魔法ライトニングシャワー!」
アウラは二つの究極魔法に挟まれながらも、それらを耐えた。
「これでも駄目なのかよ…!」
「ライ!アウラを引きつけてあと、もう一度だけ究極魔法を放つ。それまで…」
「…勝てるのか?」
「多分…」
「多分、か。でも、このまま時間を稼いでもどっちか、あるいはどちらも死ぬかもしれないな。いいぜ、ファーレン、お前に賭ける!」
「ありがとう、ライ!絶対に無駄にはしない!」
アウラは二つの標的をどちらから倒すか選んでいる。
そして、ファーレンに狙いを定めようとした。
「雷初級魔法、サンダー」
まるでイタズラのような電気がアウラに当たった。
「何、よそ見してんだよ。お前の相手は俺だ」
標的はライに切り替わった。
「風究極魔法、トルネードサーカス!」
そして、アウラが究極魔法を唱えた。
が、それはライに当たらない。
(やはり、こいつは頭が悪い。すぐに挑発に乗る)
そして、ライがアウラを引きつけている間にファーレンは究極魔法の準備をしていた。
「もう少し…あと少しで究極魔法が放てる。」
アウラの攻撃をライは避け続けた。
ライの挑発でアウラの攻撃が単調になったからだ。
「よし!最後の一回、風究極魔法トルネードサーカス!」
巨大な竜巻がアウラを襲う。しかし、いつものように攻撃の効果は薄い。
だが、ファーレンの狙いはそれでは無い。
ファーレンのスキルは風を使うたびに自身に風を纏うというもの。
蓄積した風はそのまま放つことができ、究極魔法3回で最大火力を出せる。
その威力は究極魔法の10およそ倍。
ファーレンはそれをアウラにぶつけるつもりだ。
が、アウラは自身の危機を察知した。
アウラはファーレンから遠ざかりそれを避けることに集中した。
「こいつ…!これじゃ当たるかどうか…」
そこでライがスキルでアウラに近づいた。
魔法で一瞬でも、アウラの動きを止めようとしたのだ。
アウラはライが魔法を唱え、止まる時を狙って腕を振り下ろした。
しかし、それはフェイントだった。
一瞬だけ、姿を見せたライはすぐにスキルで背後に回った。
「兄貴、あんたの教え、少しは役に立ったよ。
雷上級魔法6サンダー!」
アウラに電流が走り、動きが止められた。
「ここだ!」
ファーレンが放つ凄まじい威力の風が、アウラの腹部を貫いた。
倒れたアウラの元にライとファーレンが近づいた。
「死んじゃったか?」
「…!見て、ライ」
「…これは!」
アウラの腹部の傷が少しずつ塞がっている。
「これは…」
「ま、魔王、様が、施した術で、私は、ほとんど、不死身に、近い存在に、なった。」
アウラの意識が戻ってきた。
「アウラ…」
「あなたに、伝えなきゃ、行けない、ことが、」
「なんだ?」
「フウ、あなたの、お兄さんからよ」
「何!?」
「これで、見せた方が、早いわ」
アウラは魔王が施した術の中心であるペンダントを砕いた。
すると、優しい光がライを包み込んだ。
ライの頭にアウラの記憶が入ってくる。
その中にはフウの存在がいた。
「兄貴!?」
「ライって言う可愛い弟が出来たんだ。」
子供の姿のフウが言った。
すぐに景色は変わり、少し大きくなったフウがまた言った。
「親がモンスターに襲われて死んだ…家族は俺とライだけ。俺は絶対に守ってみせるよ」
また、場面は変わった。フウはまた、成長していた。
「ライはまだ子供だけど、大きくなったら俺とは違って外の色んな世界を見てほしいんだ。勝手かな?どう思う?」
また、場面は変わった。
「最近ライが、反抗期みたいでさ。なんか、俺の愛情が伝わってないなーって思うんだよね。…むずいんだよね」
そして、あの時の記憶。ボロボロになって、虫の息のフウがいた。
視界が滲んでいたから、よくは見えなかったが…。
「ライ、に、言って、くれ、ライの、スキルは、もっと、奥、が、ある、それは、―――」
そして、映像は終わった。
アウラが事切れたからだ。
「あんたと、兄貴はどういう関係だったんだ?
おい、死ぬな!教えてくれ…もっと兄貴のことを…!」
「ライ…」
「…っ!」




