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魔法の記憶  作者:
13/26

揺らぎ

小さな閃光が四方八方を飛び回っている。

ディアはその中心にいる。

そして、その閃光がディアの背後で止まり、小さな閃光がライの形を作った。

「雷上級魔法、6サンダー!」

しかし、魔法を唱えるより先に光線がライに直撃した。

「痛っ!」

ライは地面に倒れ込んだ。

「中々やるね。ライ君」

「クソッ、メチャクチャ早く動いたのに…」

「やっぱ、変化した電気に攻撃力がないのと魔法を唱えるには変化を解かないといけないから。」

「あー、どうすりゃいいんだよ」

「ははははは、可愛い弟よ。困っているようだな」

「なんだよ、兄さん。キモイよ」

「傷つくからやめてね、それ…。まあまあ、それはそれとして兄さんがお手本を見せよう」

「兄さんは突進で攻撃できるじゃんズルいよ。」

「大丈夫さ、ちゃんとスキルは移動用としてしか使わないから」

「本当に?」

「任せなさい。じゃあディア君頼むよ」

「ああ」

「よし、じゃあ行くよ」

フウは風になってディアの周りを囲むように移動している。

フウはディアの背後を捉え変化を解いた。

そして、同じようにフウに光線が襲う。

しかし、フウはまた風となって今度は正面に現れた。

「こっちか」

これにも反応して光線が飛んでくる。

しかし、また風になってディアの周りを回る。

「なるほど、そういう作戦か。だったら…」

フウは今度はディアの右に現れたが、ディアは光線を打たなかった。

「俺の周りの魔力の流れを薄くして、自分は遠くから魔法を撃つつもりだな。その手には乗らない!」

今度はディアの左に現れた。そして、ディアは光線を放たなかった。

しかし、このまままた風になって飛んでいくかと思われたが、フウはディアに蹴りを浴びせた。

「こうやって、フェイントを…」

…が、ディアは反応して防御した。

「あれ?」

フウは風になって、ディアに突進して吹き飛ばした。

「うえっ」

「うん、勝てばいいのだ」

「兄さん、かっこ悪い」

「だってあれを反応するとは思わなかったし」

「はぁ、はいはい、勉強になったよ」

ライはどこかに行ってしまった。

「素直じゃない弟。ディア君、大丈夫?」

「ああ、大丈夫さ」

「ありがとね、ライの特訓に付き合ってもらって」

「いや、俺達はあんたにお世話になってるんだ。当然だよ」

「そうかい、そういえばフレアとシャナ、だっけ?彼らはなんか偉い人となんかどっか行ったけど大丈夫なの?」

「え、バニレアの人がここに来たのかな?」

「そうか、彼らは偉い人なの?」

「フレアは一応王様なんだって、あまり実感は無いけど」

「それは凄いな。そうか、王様か。これは大した経験をしたなぁ」

「俺も最初は驚いたよ」

ディア達は二人で笑い合った。

「ああそうだ、あとライを励ましに行ってもらえないかな。俺が言っても反抗するだけだし。」

「ああ、分かったよ」

「ありがとう、多分村の中を歩いてると思うから。」


「というわけでライ君を探そうと思うけど、レイはどうする?」

ディアはレイにそう問いかけた。

「え?…えーと」

「どうかした?」

「い、いえ。なんでもありません。いきましょう」

(何か、嫌な予感がする。気のせい…?)


ライは村を歩いている、自身の苛立ちを慰めるように。

すると、この村での格好とは明らかに違う人を見つけた。

「お前は…!」

「ん?」

「この村は渡さねえぞ」

「ああ誰かと思えば、前にも私の邪魔をした子供か」

「お前も変わらんだろ」

ライと同い年ぐらいのその少女は高貴な衣装を見に纏っていて、位の高い身分であることが分かる。

「子供かどうかの話はここで置いておいて、私はあなたの兄、村長に話があるの。」

「魔王城がどうとかって話か?」

「そうよ。ここを対魔王城の拠点として、一刻も早く魔王を倒す。ここは資源も潤滑で魔王城に近い、これ以上いい場所はないわ。」

「だからって、俺たちを無理矢理どっかに行かせて、いつ終わるかもわからない戦いをするのか?」

「それでも誰かがやらなきゃ行けないの。世界が終わるかもしれないのよ?」

「魔王は恐らく魔王城にはもういませんよ。」

駆けつけてきたレイがそう言った。

「…だれ?あんたの知り合い?」

「そんなとこ」

「チッ、めんどくさいのが増えたわね。魔王が魔王城にいないってどういう事?」

「私達が一度魔王を退けたからです。すぐにあそこに帰ることはしないでしょう。」

「あんたらみたいなただの旅人が倒せるわけないでしょ。」

「嘘じゃない」

ライが否定した。

「はぁ?」

「俺達は魔王城で倒れているこいつらをここに運んだんだ。魔王を退けてなかったらこいつらが生きてるはずがねえ。」

「あんたまで、こんなくだらない嘘をつくの」

「だから、嘘じゃないって!」

「…詳しい話は私達の屋敷で聞くわ。信じた訳じゃないけど、もし本当ならあなた達が何者か調べないといけないもの。」

「ああ、分かったよ」

ディアがそう答えた。


ディア達は少女について行き、村を囲っている山を超えている。

「なんであんたまで付いてくるのよ」

少女はライに刺々しい言葉を投げた。

「今は、家に帰りたくない」

「何それ、あんた親は?」

「両親は死んだ。父さんも母さんも俺が生まれてくる後にはすぐ死んだって兄さんから聞いた。だから、今家にいるのはあのムカつく兄だけだ」

「悪いこと聞いたわね」

「いや、別に。あんま覚えてないからなんとも思ってない」

「ふーん、そう。」

しばらく歩いて、山を越えたところでライがある事に気づいた。

「なんかでかいモンスターがいないか?」

「本当ね、あんな大きいのは珍しい」

「まさか、村に来るつもりじゃ!」

ライはモンスターのいる方へ走って行った。

「ちょっと!待ちなさい!」

少女も後を追って走った。

「レイ、俺たちも行こう!」

「ええ!」

ディア達もそれに続いた。


モンスターは村の方へ向かっている。

「雷超級魔法、9サンダー!」

モンスターに雷が走った。しかし、モンスターは効いてる素振りを見せず、ライの姿を捉えた。

「くっ、ダメか」

モンスターはその巨大な腕をライに目掛けて振り下ろしてきた。

ライはすぐに雷となって、攻撃を避けた。

そして避けた後、ライはすかさず魔法を唱えた。

「雷超級魔法…」

だが、モンスターのもう片手がそれを捉えてライに攻撃してきた。

ライのスキルは姿を変えるのに多少の時間がかかるため、この攻撃は避けられない。

「マズイっ、当たる!」

「聖究極魔法、クエーサー!」

その時、光線がモンスターの腕の付け根を抉り取った。

モンスターは痛みで吠えた。

「あ、ありがとう、ディア」

「あんま無茶するなよ。」

しかし、モンスターの腕は少しずつ再生していった。

「まじかよ…」

「恐らく、周囲の魔力の流れであの再生を再現しているのでしょう。」

「そんな生物がいるのか…」

「要するに全身を抉り取ってしまえばいいって事ね」

ディアが驚いている隙に、少女は前に出た。

「おいっ、前に出過ぎるな!」

「心配無用!風究極魔法、トルネードサーカス!」

無数の竜巻が、モンスターの肉を削り取っていっている。

「さあ、早く死になさい!」

少女に分があるように見えたが、モンスターから触手のようなものが伸び、引き離すように振り払った。

少女はすかさず後ろに下がったが、少し掠り、腹部の表面が裂かれた。触手の先端には鉤爪のようなものが付いていた。

「痛っ」

(こいつ、体は自由自在なの?)

痛みで判断が遅れた隙に、触手が腹部に巻きつき少女を引き寄せた。

「うわっ!」

引き寄せられ、モンスターの近くに置かれた。

そしてモンスターの体からは鋭い爪のついた小さな腕が生えていた。

(やばいっ、殺される!)

腕は振り下ろされ、血が飛び散った。

が、その血は少女のものではなかった。

ライが少女を庇って背中に受け、飛び散った血だった。

「あ、あなた…!」

「ぐっ」

ライは触手を引きちぎって、少女を抱えモンスターから遠ざけた。

「ラ、ライ。大丈夫?」

モンスターの体は元の姿に戻りつつある。

(くそっ、村を守りたかったのに。兄貴ならもっと上手くやったのかな)

「守りきれなくてすまない、もう大丈夫だ」

ディアはスキルでモンスターの周りの魔力の流れを断っていた。

「聖究極魔法、クエーサー」

強い光を放つ光線はモンスターの大部分を抉った。

そして、そのモンスターが再生する事はなかった。


2人はライと少女にそれぞれ手当てをしている。

「私の力が未だ、万全でなくて助けに入らずすいませんでした。」

「いや、俺が2人を守るべきだったんだ。レイのせいじゃないよ」

「いや、そもそも俺が不甲斐ないのが行けなかったんだ」

ライは落ち込んだ様子でそう答えた。

「そんなことないわよ、あなたは勇敢だったわ」

「え?」

「あの時、私を助けてくれたあなたは何よりも勇敢だった。私はあなたのことをただの子供と見誤っていたみたい。私はあなたを認めるわ」

少女はライに手を差し伸べた。

「ハハっ、何様だよ」

ライは不服そうながらも、どこか嬉しそうにその手を取った。

「そういえば、まだ私の名前を言ってなかったわね。私の名前はファーレン、よろしく」

「もしもこれからも縁があったらな」

「何言ってんのよ、あんたにも魔王討伐を手伝ってもらうから」

「な、何勝手に決めてんだよ」

「とりあえず、これからの事はあなた達の怪我を治してからにしましょうか。」

「ライ君の成長をフウさんに教えてあげないとな」

ライは照れくさそうに頬を掻いた。

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