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魔法の記憶  作者:
12/26

風と共に

「レイ、大丈夫か?」

「うっ…」

レイが目を覚ますと、そこは見慣れない家の中だった。

「おっ起きた」

「ディア、ここは?」

「あの戦いの後、三人とも動けなくなってたからどうしようかと思ったけど、ここの家の人が助けに来てくれたんだ。で、ここはその人の家って訳」

「なるほど、そういうことですか」

「フレアとシャナはもう起きてるよ。フレア、シャナに泣きながら抱きついてたな」

「そうでしょうね。助けられて良かった。」

レイはずっと暗い顔をしていた。

「どうしたの?具合まだ悪い?」

「その…魔力の流れが見えるって…」

「ああ、そのこと?多分俺のスキルの拡張でさ、俺のスキルは魔力の流れを消し去ることなんだけど、その実行可能範囲っていうのかな、それで魔力の流れ的なのを見てるって訳」

「そうですか…」

「にしても、魔王はどうして俺がその力に目覚めたって分かったんだ?」

「魔王にも似た力があります。恐らくディアの視線が見えている者のそれだったのでしょう」

「なるほど」

「…」

レイの暗い顔は晴れずにいた。

「大丈夫さ、俺は君の秘密をちゃんと知ってる。レイがみんなに言いたくないなら、俺も秘密にするよ」

「ディア…」

「おっお嬢ちゃん起きたのかい?」

「フウさん!」

「フウさん?」

部屋に入ってきたのはフウさんと呼ばれた男だった。

「レイ、この人が俺たちを助けてくれた人だよ。」

「そうですか、どうもありがとうございます」

「いやいや、大したことじゃないって。なんかでかい龍があったから行ってみたらアンタらが倒れとっただけ」

「それでも、寝床を貸していただいて」

「いいんだよ、困ってる時はお互い様だ」

「それにしても、フウさんの家のベッドって変わってる。なんて言うの?」

「それはな、布団っていうんだ」

「布団?」

「聞いたことがあります。辺境の村などに所々、この布団のように独特な文化を持った人達がいるとか」

「とは言っても、俺にとっちゃアンタらの方が独特だけどなぁ」

「確かに」

「それにしても、寝床から見える外の景色はとてものどかで心地いいですね」

「だろ?俺はこの村が大好きさ、この風景、村のみんな、そして…」

「あ、起きたんだ」

「ライくん!」

「この子も私達を助けてくれたのですか?」

「ああ、そうだよ。あと、フウさんの弟さんだよ」

フウはライを抱き抱えて、

「そう、この可愛い弟さえあれば俺は十分だ」

「ちょ、やめてよ兄さん」

「フフッ、仲がいいんですね」

「どこが…!」

「そうそう、チョー仲良しなの」

フウはより一層ライを自身に寄せた。

「このクソ兄貴!」

「と、まぁレイも起きたし、いつまでもお世話になるわけにはいかないから、そろそろ出ようか」

「え、もう帰っちゃうの?もうちょっといたらいいのに…」

「でも、流石に」

「俺がまだいていいってんならまだのんびりしていってもいいんだぞ」

「ディア、ここはお言葉に甘えてしばらくこの村を見回るのもいいんじゃないでしょうか?」

「うーん、じゃあそうしようかな」

「フレアとシャナって子も村を回っていったみたいだ。君たちも行ったって損はないよ」

「うん、分かった」

ディア達は外に出ていった。


フレア達は村の周りの山を歩いていた。

「にしても、いいとこだな」

「そうね〜」

「少し前まで魔王と戦ってたのが嘘みたいだ。」

「本当に、もしこのままずっとここにいたい気持ちが芽生えても、仕方ないわよね」

「確かに、その気持ちはすごく分かる」

山道を歩いていると、少し奥に人影が見えた。

「あの人も山に登ってるのかしら?」

「あいつは…確かアウラとか言ったな」

「おや?旅の人また会いましたね。」

「誰?」

「勇者の洞窟に入る前に会ったんだ」

「へぇ」

「どうして山に?」

「いや、別に。ただいいとこだなって」

「そうですか。なら、山頂に登って村を上から見るのがいいと思いますよ」

「そうなのか、ありがとう」

「いえいえ、ではこれで」

アウラはどこかへ行ってしまった。

「なんか、変な人」

「そう言うなよシャナ。親切に教えてくれたのに」

「別に変な人って言っただけよ」

少し歩くと山頂に着き、フレア達は村を見た。木漏れ日を浴びながら、木々の隙間からでも分かる、平和で自然のままの風景が流れていく様子を見ていた。。

それは、戦い続きだった、フレア達の緊張をほぐしていた。

「本当に生きてて良かったよ、お前が凍っていくときはどうしようかと思ったさ」

「私も、いまこうしてフレアと一緒にいれて幸せ。捨てるつもりの命だったけど、やっぱり拾ってもらえると嬉しい」

「本当は俺が拾ってやりたかった…」

「…もう十分、私はあなたに沢山の物を貰ったわ」

「そうかい?」

「ええ」

「なら、良かった」

景色を見ながら話していると、遠目ながらディアとレイが歩いているのが見えた。

「あれ、レイじゃないか?」

「本当?目が覚めたのね」

「行こう」

「ええ」

フレア達は山を降りていった。


「にしても、なんて言うか、本当に何もないな。俺の住んでた村も何もなかったけど、この村は俺の住んでた所と雰囲気が全く違う。抱擁されているような感覚で気が抜けてしまいそうだ」

ディアは村を歩きながらそう言った。

傍に田んぼがあり、作物が緑色の光を映している。

「この田んぼの作物は稲といって、ここの人たちにとっての主食だそうです。」

「詳しいな」

「昔本で読みましたから」

暖かい夕日と優しく吹いている風の中で、平和そうに暮らしている村の人々をディアは見ていた。

「なるほど、俺が抱いていたこの村の違和感が分かった。」

「何ですか?」

「俺の村は、時々モンスターの脅威にあった。たまには勝てない敵も来て村を移動したりした。だから、みんな戦いの準備っていうのかな、それが無意識にでも整っていた。きっと他のとこもそんなに変わらないだろう。でも、この村の人は全然違う。戦いなんて何も知らなそうだ、一体どうしてなんだ?」

「さあ、分かりません」

その時、ディア達の上空を切り裂くような風が通った。

「なんだ今の?」

それは、音で分かるほどの勢いがあった。

「行ってみましょう」

風の方向へ駆け寄ってみると、そこにはモンスターの死骸と、フウの姿があった。

「すごい」

「あれ?君達…」

フウは困惑した表情を見せた。

「フウさん、すごいな」

「見られたか」

「これは?」

「これはな、俺達が2人で、この村を守ろうって決めてやってるんだ。俺は、風に乗って動ける力。ライは電気に乗って動ける力を持っている。基本的にはライが偵察で俺が倒すんだ。」

「なるほど、だからこの街はモンスターへの影響が少ないのか」

「兄さんお疲れ」

「ライもよくやったな」

「それにしても、ライ君がモンスターを倒した方が早いのでは?だって、電気に乗って移動するんですよね?」

「それは、俺が兄だからってのもあるんだけど。ライにはこの村に残らずに自由に外に出る自由があっていいと思うんだ。だから、ライばっかが倒したらもし、いなくなった時に俺が頼らないかもしれなくなるだろ?」

「兄さん…」

「君たちは冒険者だろ?もうライも大人になってきた。丁度いい機会だ、もし良ければライも連れてってやってくれないか?」

「俺達は構わないけど、ライ君は?」

「僕は、この村に居たい。でも、冒険もしてみたい。僕の知らない世界を見てみたい。だけど…」

「ま、というわけで君たちももう少しここに居なよ。ライの考えがまとまるのを少し待ってくれ」

「分かった。お言葉に甘えさせてもらうよ」

「うん」

「ディアー!、レイー!」

シャナとフレアがディア達の方へ歩いてきた。

「あ、シャナとフレアだ」

「丁度いいね、さあ帰ろうか」

赤い空の下、彼らは帰路についた。

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