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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
連れ去られたアリッサ
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【アリッサ】


「やめて!!触らないで、嫌よ」


フィリップの冷たい手があたしの身体に触れる。

縛られた手で彼を殴ろうとしたけど、手首を掴まれて押さえつけられてしまう。


(レン......助けて!)

そのとき、ふと天井の隅に妖精がいるのに気がついた。


(なぜ......こんなところに妖精が)


よく見ると、レンの屋敷であたしの世話をしてくれた妖精によく似ていた。

モリィ.....っていう名前だった。


モリィは、幼かったあたしと一緒にクッキーを焼いたり、お風呂に入ったりしてくれた。

毎朝きれいに三つ編みを編んでくれた。

それに可愛い押し花や、匂い袋をプレゼントしてくれたこともあったっけ。


天井の隅にいる妖精をじっと見つめる。

やっぱりモリィだわ。


「ん......?なに、妖精がいるだと?」

フィリップが服を脱がそうとする手を止めると、あたしの顔を見てそう言った。


(しまった、心を読まれてしまった!)


彼は振り返って天井を見上げると、妖精の姿を見つけた。


「どこから、紛れ込んだのか。

アリッサ。

この妖精は、レン・ウォーカーの手下なのか!?」


フィリップは腰につけていた短剣を、妖精に向けて投げつけた。

「モリィ!!逃げて」


モリィは慌てて飛び去ろうとした。

でも短剣の先が彼女の羽にあたってしまい、モリィは床に落下する。


「モリィ!!

やめて。フィリップ。彼女を見逃してあげて」

「ダメだ。

生かしておけば、レン・ウォーカーにこの場所がバレてしまう」

「でも......!お願い」

あたしはフィリップにすがりついた。


片方の羽が傷ついてしまったモリィは床からフラフラと飛び立とうとしている。

フィリップはモリィに向けて、さらにナイフを投げた。

モリィは慌てて逃げようとしたが、ナイフがもう片方の羽に当たってしまった。


「ダメよ!!もう止めて」


あたしはフィリップをはねのけて、モリィのもとへと走った。

そして彼女をかばうように覆いかぶさった。


すると彼女があたしの耳元で

「ご主人様を必ず連れてきますから......だからドアを開けてください。

お願いです、あたしを逃がして」

......とささやいたのだった。


「分かったわ」

あたしはモリィに小声で答えた。


そして立ち上がるとドアを勢いよく開いた。

モリィはヨロヨロとドアの外へと飛び立っていった。


フィリップは、とくに慌てた様子もなく、あたしの方へと歩いてきた。


「モリィ......」

あたしは彼女の姿を探そうと、暗い廊下の先をみつめた。

でももう、どこにもいなかった。


「両方の羽をつぶした。

レン・ウォーカーのもとまで、飛んでいくことは不可能だ」


フィリップは冷酷に笑うと、あたしの腕を乱暴に引っ張った。

そしてまた、ベッドに引き戻す。


「とんだ邪魔が入った。

だが、時間はまだある」


そう言うと、あたしのくちびるにキスしようとした。

あたしは慌てて顔をそらす。


ベッドにふたたび押し倒された。

縛られた両手を使って精一杯抵抗し、暴れた。

膝で彼の腹を思い切り蹴飛ばしたりもした。

でもフィリップは表情も変えずに、あたしの手足を押さえつける。


「アリッサ。怖がることはない」

耳元でささやいてくる。

「怖がってなんかない!

心底、嫌なだけよ」

あたしはハッキリと言ってやった。


「あまり暴れるなら、ハンスを呼んで、手を押さえつけてもらうしかない」

フィリップがそんなことを言いだした。

「ひどいわ」

あたしの目に涙がたまる。


フィリップは本気でハンスを呼ぶだろう。

そしてあの男にあたしの手を押さえつけさせて、彼の眼の前であたしに乱暴をはたらくつもりだ。


そんな屈辱......耐えられない。

肩が震え、嗚咽が漏れた。


あたしは抵抗を止め、じっとした。

そうするしか無かった。


「いい子だ」

フィリップがあたしの髪を撫でる。

彼から視線をそらして、あたしはギュッと目をつぶった。


「きっと賢くて、素晴らしい子どもが生まれる。

その子は人間たちの王になるんだ。

アリッサ、お前は王の母になる。

俺の血が引き継がれていくんだ......こんな喜びはない」


「......」


フィリップがあたしの首元のリボンをゆっくりと外す。

さらにボタンを外され、下着姿にされた。

彼の視線を感じる。


「アリッサ、きれいだ」

「いや......やめて」


フィリップの冷たい手があちこちに触れる。

首や肩に彼の唇が押し当てられた。


怖くて息ができない。

気分が悪くて気を失いそうだった。


フィリップは、あたしの下着を引き裂くように脱がせた。

「アリッサ......ようやく俺のものになる」

彼の荒い息があたしの顔にかかる。

冷たい手が胸をしつこく触ってくる。


フィリップの手が下腹部の方に滑るように降りてくる。

「あっ......いや......」

あたしはビクッと身体を揺らして震えた。


誰も助けには来ない。

あたしは彼に身体を奪われてしまう。


でも心は......心だけは奪われない。

あたしの心は、レンのことだけ......彼のことだけを思っている。




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