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【アリッサ】


あたしは地下牢獄を抜け出したあと、使用人宿舎へと向かった。


「アリッサさま!」


使用人たちの宿舎に訪れると、みな部屋の前をウロウロとしていた。

兵士の叫び声、爆発の音などで目を覚まし、反逆が始まったことを知ったのだろう。


「戦いが始まっている。

逃げたい者は逃げてもいい。

あたしと戦ってくれる者は、あたしに着いてきて欲しい」


そう言うと、使用人の全員がうなずいてくれた。


「もちろんです。アリッサさま!」

侍女のアンナが叫ぶ。

「逃げたりなんかしない。アリッサさまはいつも私達に優しくしてくれた」

「やっとアリッサさまに、ご恩返しができる」

そんなことを口々に言ってくれた。


「でも命の保証はないの。

田舎に残してきた家族が心配な人は、どうぞ遠慮せず立ち去って」

そう言っても、誰もその場を立ち去ろうとしなかった。


--------------------------


レンたちが、北の塔の真下まで追い詰められていた。


だから、あたしたちは、ありったけの凶器を持って北の塔に登り上から物を落とすことにした。

さらに腕に覚えのあるものは、兵舎から盗んできた弓を射った。


「やったわ!

敵は動揺してる」

あたしが叫ぶと、みな歓声を上げた。


レンがフィリップのもとへと走り寄るのが見えた。

レンとフィリップの激しい戦いが始まった。


あたしはもう見ていられなかった。

レン......。

あぁ、フェニックスのご加護を......。

お願いします。


何度も神に祈った。


必死に神に祈っていると、肩をポンと叩かれた。

振り返ると、フードを深く被った、痩せた男が背後に立っていた。


「......?」

使用人の一人だろうか。

あたしは男の顔をじっとみた。


こんな顔の使用人......いたかしら。


次の瞬間、男は懐から素早くナイフを取り出すと、あたしの首に突きつけた。

ひんやりとしたナイフの感触が首にあたる。


「きゃあああ!!アリッサさま!!」

そばにいた掃除婦のハルが叫び声を上げる。


「アリッサさま!?」

ハルの叫び声に驚いた使用人たちが、一斉にこちらを見た。


「お前ら、動くな。

変な動きをすれば、アリッサさまの命はない」


みんな黙り込んで息を呑む。


男は、あたしを羽交い締めにしたまま、ゆっくりと塔の中央階段へと移動した。


そのとき......。

ガシャン!!

というガラスの割れる音。


「ってぇ!!」

あたしを羽交い締めにしていたフード男のうめき声。


男とあたしの背後に、アンナが立っていた。


「ア、アンナ!」

あたしは震える声で叫ぶ、


アンナは背後に回り込んで、花びんを男の頭に振り下ろしたのだった。

だが、額から血を流しただけで、男はピンピンしている。


「このアマ!!」

男は叫ぶと、アンナの方へ向けてナイフをシュッと動かした。


「くっ......!!ごふっ」

アンナが苦しそうにうめく。

彼女は首を切り裂かれてしまった。

勢いよく血が吹き出し、口から血を流している。


「ひどい!!アンナッ!!アンナ」

あたしは、泣きながら彼女の方へと駆け寄ろうとしたが、男が離さなかった。


「さぁ、同じ目にあいたくなけりゃ、俺の邪魔はするな」

男は周囲で見ている使用人たちにナイフをふりかざした。


「アンナ......」


いつもあたしの世話をしてくれた優しいアンナが、目を見開き、冷たい床の上に倒れていた。

あたしはショックでなにも考えられなくなった。


「許せない......ひどいわ」


「なんとでも言うがいい。

さぁ、フィリップ様のもとへ行こう」


男はそう言うと階段をゆっくりと降り始めたのだった。


------------------------------



男に引きずられるように、北の塔の外へと連れて行かれる。


外では、レンがフィリップを追い詰めていた。


あたしはレンの表情を見て驚いた。

彼は......なんというか、穏やかな表情で戦っていた。


レンがフィリップにとどめを刺そうとした......その瞬間


あたしを羽交い締めにしている男が

「そこまでだ!!アリッサ嬢を殺されたいのか!?」

と叫ぶと、レンは動きを止めた。


(ごめんなさい!レン......ごめんなさい)

あたしは心のなかで何度も彼に謝った。


あと少しで.......あと少しで倒せたのに。


ごめんなさい。




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