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【レン】戦いの果に



とにかく大蛇フィリップの首を討ち取る。

俺はそのことだけ考えて走り出した。


「俺が援護する!」

ディルの叫び声。

フィリップを取り巻く護衛をディルがせき止めてくれた。


ダッシュでフィリップのもとへ駆け寄った俺は、剣を大きく振るった。

カーン!!

フィリップの剣と俺の剣が重なり合い、大きな金属音をあげる。


「来たな!レン・ウォーカー」

「死ね!!クソ野郎」

俺はそう叫ぶと、激しく剣をふるった。


カン!カン!カーン!!

剣と剣がぶつかる音が響き、激しいせめぎあいが続く。


「馬鹿め。お前の考えは手に取るように読めるんだ。

お前が俺を討ち取ることは不可能だ」

フィリップが叫びながら、手を振り上げる。


(火を放つ気だ!!)


フィリップの手から放たれた炎をすんでのところで避ける。

少しでも燃え移ったら、骨まで溶かされるような炎だ。


「俺が百年もの間、操ってきた炎だ。

いくら魔力を奪われたって、炎の動きは手に取るように分かる!!」

俺もフィリップに向かって叫ぶ。


負けるわけにはいかない。

やつの息の根を止めることができれば、自分は死んだって良い。


「レン。ぜったいに死なないで」

そのときアリッサの言葉が脳裏に蘇る。


(死にたくはない......でも.....死ぬ気でやらないと......この戦いには勝てない!!)


カシーン!!


フィリップがふるった剣を、頭上にかざした自分の剣で受け止める。


(スキがない。

しかも底なしの体力の持ち主だ)

フィリップは全く疲れを見せなかった。

息も乱れず、表情さえ変わらない。


ヤツのふるった剣が、俺の右肩をかする。

自分の肩から血が吹き出た。


(くそっ)


ザザザーッと砂埃を上げて、俺は後ずさった。

フィリップから距離を取る。

いったん呼吸を整えなければ......呼吸を......。


深い呼吸をしたそのとき、フィリップや周囲の動きがスローモーションになった。

自分の呼吸音と心臓の鼓動がはっきりと聞こえる。


(瞑想状態にはいった......?)


眼の前のフィリップ......その動きだけに俺は集中しはじめた。

雑念が消える。

頭の中が、気持ちいいくらい空っぽになる。


剣でゆっくりと八の字を描いた。

なぜだか、そうしたくなったのだ。


フィリップは目を見開いている。

「なんだ......。お前の考えが......読めない」


スーッと息を吐き切ると、再びフィリップのもとへとダッシュする。

上段を狙うふりをして、フェイント!

俺は、ヤツの足を剣で切りつけた。


「......ッ!!」

フィリップが息を呑む。


俺はヤツの両足、ふとももにザックリと深い傷を負わせた。


フィリップの目にはじめて動揺がうかぶ。


「死ね!!」

畳み掛けるように、剣を直線に構え、突進しようとしたそのとき......。


「そこまでだ!!アリッサ嬢を殺されたいのか!?」

そんな叫び声が俺に耳に届いた。


「なに!?」

驚いて、声のした方に目をやる。


......ハンスだった。

裏切り者ハンスが、アリッサを羽交い締めにして、首にナイフを突きつけている。


「アリッサ!!!」

叫んだ。


「でかしたぞ。ハンス」

フィリップは額の汗を拭いながら言った。


俺とフィリップが戦っているスキに、ハンスは北の塔に登りアリッサを奪ってきたのだろう。


(ちくしょう!!フィリップとの戦いに夢中になりすぎた)


アリッサを人質にとると、ハンスとフィリップは、城のほうへと後退りしていく。


「兵士や護衛はみんな倒した!!

フィリップ、お前は孤立している。

おしまいだ!!

アリッサを離せ」


俺は叫んだ。

だがヤツは、アリッサを連れて、俺の前からゆっくりと距離を取っていった。



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