表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/255

【レン】


北の塔の戦えそうな男たちを集めた。

塔の裏側、月明かりの下に一同を集結させる。


その数はわずか18名ほど……。


どの人物もフィリップに塔に閉じ込められ、モルタナ中毒になっていた者たちである。

だがモルタナの摂取量を少しずつ減らすことで、すっかり快復していた。


数は少ないが、みな戦う意欲に溢れ怒りに燃えていた。


「ようやく反撃のときがきた!

あいつを捻り潰してやる」

男たちは拳を振り上げる。


塔の見張りの兵士から奪った武器、厨房にあったナイフや鉄パイプなどを配った。


「ウィリアム公爵は?

公爵はまだご快復されていないのですか」

男の一人が俺に疑問を投げかける。


「公爵は……敵に殺されてしまった」


俺がそう答えると、みんな静まり返った。


「ウィリアムが……」

アリッサに連れられて来たパトリック卿が神に祈る仕草をした。

「わたしは、侵略され囚われた北部の領主、パトリック ベルナルドである。

ウィリアム公爵とは従兄弟にあたる」


パトリックは、皆に聞こえる声で演説を始めた。

「このまま北の塔に閉じ込められ朽ち果てなるものか!

ウィリアムの仇を取るのだ!

略奪者の手から城を取り戻すのだ!」


パトリックが叫ぶと男たちは、オー!と叫んで拳をあげた。


(士気が上がってきた。

ありがたい)


俺は城の建物に目をやった。

城はいまだ不気味に静まり返っている。

ハンスがフィリップのもとに走ったのであれば、そろそろ動きがあってもいいころだった。


「神官フィリップは信じられないかもしれないが、心を読むことができる。

そのことは、このアリッサが身をもって体験しているから間違いない。

それと奴は、火の魔法が使える」


俺が皆にそう言うと周囲がざわついた。


「なんだって。

なぜ神官ごときが火の魔法を?

そんなバカな」

「いや、あの悪魔ならあり得る」


「心を読まれないようにするためには、奴の視界に入らないこと!

奴の視界に入らなければ、心を読まれることはない」


「火の魔法は?

火を向けられたらどうすれば良いんだ」


「それは」


俺が口を開きかけたとき、やぐらの鐘が突然打ち鳴らされた。


ディルが叫ぶ。

「兵士に招集がかかった!

始まるぞ」


タダール城の兵士は50名近い。

こちらの倍以上だ。


味方が殲滅する前に勝利を掴むには、「キング」の首を取るしかないだろう。


俺はフィリップの首を狙うつもりでいた。


「レン……」

アリッサが震える声で俺の腕にしがみつく。


「アリッサは母親と、それに女性たちを連れて、地下牢獄に隠れていてくれ。

牢獄の前に見張をおくから」

アリッサは目に涙を溜めてうなずいた。


「レン。ぜったいに死なないで」

ぎゅっと手を握ると彼女はささやいた。

「フェニックスのご加護があらんことを」

そう言うと、俺に向けて加護の印を切ってくれた。


「ありがとう。アリッサも無事でいてくれ」

俺も彼女の手を握り返した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ