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【レン(ミナ)】


「お前が、ハンス・シュトラウス......?」


隣の牢屋のかんぬきを開け扉をひらく。

すると中には痩せた男が突っ立っていた。


百戦錬磨の兵士......。

その言葉から、筋肉隆々のデカい男を想像していたのだが。

実際のハンス・シュトラウスはガリガリに痩せたネズミのように小さな男だった。


しかし考えてみれば、長い間ここに閉じ込められて拷問を受け続けていたんだ。

やせ細って当然なのだろう。


「......すごいな、あんた!!

女なのに、二人の屈強な兵士を倒したのか。

......一体何者なんだ?」

ハンスは俺にしつこく質問してきた。


「何者でもない。

行くぞ」


牢獄の建物から外に出る。

外はすでに暗くなっていた。


俺たちは、モルタナを隠した地下牢獄へと足早に向かった。

城の建物の影に隠れながら素早く移動する。


地下牢獄は今は使われていないし、悪臭がヒドいので誰も近寄らない。

格好の隠れ場所だった。


汚物の異臭漂う薄暗い地下牢で、作戦会議を始めた。


「ハンス......俺達が牢屋から逃げ出したのが、どれくらいでバレるか......分かるか?

見回りは夜間も来るのか?」

俺は地べたにあぐらをかくと、ハンスを見上げた。


「夜間は見回りは無い。

でも明日の朝にはバレる。

朝食を運んでくるやつに見つかるだろうからな。

あんたに殺された二人の兵士は、一晩中お楽しみの最中だと思われるだけで誰も探しに来ないだろう」


「そうか。朝までは、バレないんだな......」


しかし誰かが様子を見に来てバレる可能性もゼロでは無い。

迅速に動いたほうが良いだろう。


「俺は城からアリッサを連れ出す」

ディルとハンスの顔を見ながら言う。


「アリッサをフィリップに奪われたままだと、反逆は難しい。

なぜなら、弱みを握られた状態だからだ。

まずは彼女を取り戻す。

反逆はそれからだ」


「アリッサ嬢だな......?

でも彼女がいる城は夜間も兵士たちが厳重に見張っているぞ。

可哀想だけど、ベルナルド家復活のためには彼女を見捨てるしか無いんじゃないのか」

ディルが腕組みして俺に意見をする。


「見捨てる......?

ダメだ!!」

俺はディルをにらみつけると、そう言った。


しばらく沈黙したあと、ディルはうなずいた。

「......分かった。

アリッサお嬢さまを手に入れてから、反逆開始だな?」


「そうだ。

ハンス......。お前はウィリアム公爵にお会いするんだ。

彼は北の塔に幽閉されているのは知ってるか」


「知っている!

でも、すっかり気がふれて狂人になっていると聞いた」

「......彼は回復している。大丈夫だ」


「本当か!ウィリアムさまと話したい!!」

ハンスは目を輝かすと、勢いよく立ち上がった。


俺はハンスを押し留めた。


「ダメだ。勝手な行動は許さない。

俺がアリッサを連れ帰ってから、みんなで北の塔へ忍び込むんだ。

そこからウィリアム公爵の指揮のもと、反逆の狼煙を上げる。

北の塔には、ウィリアム公爵に従う兵士たちも幽閉されているから、力になるだろう」


「......分かったよ」

ハンスは不服そうだったが、うなずいた。

俺は気になっていることをハンスに尋ねた。


「聞くが......なぜ、お前だけは北の塔ではなく、あの牢獄に入れられていたんだ?」


「それは俺が、ウィリアム公爵の右腕と言われるほどの凄腕だったからだ。

俺は頭がキレる上に戦いも強い。

神官のフィリップは、俺を拷問にかけて、自分の側につかせようとしていた。

だが俺は絶対に、フィリップに寝返ったりしない」


胸を張って誇らしげにそう言う、ハンスをじっと眺めた。

こんなに長い間、拷問に耐え続けたのなら、たしかに相当な精神力の持ち主なんだろう。

しかし、まだ引っかかる部分が俺の中にあった。

ハンスを信頼しきれなかった。


「ディル、俺が戻るまでハンスのことを見張っていてくれ」

「レン!お前一人で城に忍び込むのか?ダメだよ。俺も行く」


「大丈夫だ」


ディルは反対したが、俺一人のほうが目立たないだろう。

俺はディルに、城の見取り図と、アリッサの部屋の位置.......。

それに兵士の配置や見回りの順序などを、こと細かく聞いた。


アリッサ、待っていてくれ。

もうすぐ、迎えに行く。




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