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【レン(ミナ)】


(このままでは、こいつらの好きにされてしまう)


俺はパニック状態になっていた。

ハァハァという興奮した男の臭い息が顔にかかる。

(くそっ!気持ちが悪い!!)


ミナに変身しているせいなのか、恐怖心が強くなってしまっていた。

涙がにじみ出て、体がガタガタと震える。


デブの方の男に上にのしかかられ、もうひとりに両手を押さえつけられる。

(こんな屈辱......ありえない!)

手足をバタバタさせたが、強く押さえつけられ全く動かなかった。


そのとき、俺の脳裏にアリッサの笑顔が浮かんだ。

(レン......レン......)

アリッサが俺を呼んでいる。

そんな気がした。

(レン......深呼吸して。

意識を”今”に集中するの......頭を空っぽにして......)


(そうだ......冷静になるんだ......冷静に......)

俺は深呼吸するとアリッサに教わった瞑想の極意を思い出した。

(今に集中する......)


体の力が抜ける。

手の力も抜けてきた。


俺の手を押さえつけていた男が、

「抵抗するのをあきらめたようだな」

と言うと、俺の手首から手を離した。

そして自分のズボンを下ろし始める。


(いまだ!!)


瞑想の極意を思い出し、「今」に集中した俺には、男たちの動きがスローモーションに見えた。

さらに集中力が高まったせいなのか、男二人の様子について細かい部分まで鮮やかに観察が可能となった。


この兵士二人は筋骨隆々で、鍛え上げられている男たちだった。

力ではとても叶わない。


だが女だと思って俺をみくびっているのか、落ち着いて観察してみればスキだらけだった。

しかも二人とも、俺を犯したくてたまらず興奮しきっている。


俺に反撃されることは、微塵も思っていないバカどもなのだ。


俺の上にのしかかっている男の腰についている短剣をすばやく抜き取ると、そいつのむき出しの弱点、首の動脈に突き刺してやった。


なさけをかける必要はない。

これは殺るか殺られるか。

躊躇すれば、あっという間にこちらが殺られる。


首に突き刺したナイフを抜き取ると、真っ赤な血が壁に飛び散った。

狙い通り動脈に刺さった。

この男の命は数分と持たないだろう。


俺は、噴き出る血を止めようと首を押さえる男の腹を蹴り飛ばした。

ゴロンと身体を一回転させて、床から素早く立ち上がる。


もう一人の男はバカみたいにズボンを足首までおろして突っ立っている。

何がおきたのか、まだ理解できていないようだ。


(ヤツが混乱しているうちに片付けないと、勝機をのがすことになる)

瞬時に判断した俺は、男の股ぐらに向かってスライディングした。

そして急所を拳で、下からえぐるように殴りつけたのだった。

自分も男だから、これがどれくらいの痛みを生じさせるか、知っている。


男は身体を二つ折りにすると悶えだした。


(こいつを生かしておけば、俺に未来はない)

か弱い女を寄ってたかって、犯しに来るような男だ。

今後も同じようなことをするだろうし、なさけは無用。


俺は股間を押さえて身悶えている男の首の動脈を素早く斬りつけた。


狭い牢獄は、血の海になった。

俺も半裸の身体にたくさんの血を浴びる。


深呼吸して息を整える。

血の匂いが充満していた。


(女体化する薬は馬小屋においてきてしまったんだ。

薬の効果が切れれば、俺はレン・ウォーカーに戻ってしまう。

どのみち、ミナ・マルケスのままでも、この城ではお尋ね者状態になってしまった......。

もう逃げ場はない。

いまから反逆の狼煙を上げるしか生き残る道はない)


そのとき、誰かが牢屋に近づいてくる足音がした。

(くそ!また誰かが来やがった)

俺は死んだ男から奪った短剣を顔の脇に構えると、扉の影に隠れた。



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