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【レン(ミナ)】


「ミナ、この赤いリボン、あなたの髪にとってもよく似合うわ」

アリッサが俺の髪の毛に赤いリボンを巻き付けた。


「肌もつやつやで......見違えた!

ほんとにお人形さんみたい」

鏡越しにアリッサが嬉しそうにはしゃぐのが見えた。


「よかったら、ドレスもあげるわ。

せっかく可愛いのに、そんな格好していたらダメよ?」

アリッサが自分の衣装棚をあけた。


「いや。

服はこれがいいんだ。

ドレスを着たら、仕事にならない」

「そうだけど、あまりにも男の子みたいな格好だわ」


俺は男に戻ったときのために、ブカブカのシャツとズボンを身に着けていた。

ミナの身体のときは、シャツの袖をまくり、ズボンの裾も何重にも折っている。


ひらひらのスカートなんか穿いていたら、レン・ウォーカーに戻ったときに困ってしまう。


そろそろこの部屋から出よう。

これ以上ここにいたら、丸裸にされて着替えさせられそうだ。


「風呂に入れてくれてありがとう。

世話になった」

俺は鏡台の前の椅子から立ち上がった。


「もう行ってしまうの?

さっきの話......毒草のモルタナについても、もう少し話したいのに」


「いや、もう十分だ。

アリッサ、また明日会おう」

「そうね......明日もまた会えるわね」


アリッサとあまり毒草のことについて話すのは避けておきたかった。

万が一、大蛇にアリッサの頭の中をのぞかれたらマズイ。


「ミナ。お友達でいてね」

アリッサはまた俺を抱きしめた。

彼女の柔らかい胸が俺の体に当たる。

「......っ。

う、うん。友だちでいよう」


俺は、アリッサに抱きしめられてドキドキしていた。


------------------------------


「ご主人様ぁ」

「モリィか」


夜になり、寝床である馬小屋の干し草のうえにうずくまると、モリィがヒラヒラと飛んできた。


「モリィ。忙しくなるかもしれない。

北の塔の病人たちを治してやろうと思うんだ」

「治してあげてください。

彼らはとても苦しんでいます。見ていられない」

モリィは今にも泣きそうな顔をした。


「治すにはモリィの協力も必要なんだ。

もう少し、力を貸してくれる?」

「もちろんでございます。

モリィはご主人様の言うことは何でも聞きますよ」


モリィは俺の頭にキスをした。

「くすぐったいよ」

「このお城にはアリッサもいるんですね」

モリィが俺の頭の周りをクルクル回りながらそう言った。


「アリッサのこと、覚えていたか」

「覚えてますよ。

ご主人様はアリッサに夢中でしたから」


「えっ?

夢中って......俺が!?」

思わず、大きな声がでてしまう。

「そうですよ。

目に入れても痛くないほどの可愛がりかたで」


「そうだったかなぁ~」

俺は首を傾げて誤魔化した。

ふふふと笑いながらモリィはクルクルと身体を回転させた。


「それではモリィは城外の森で羽を休めます。

また明日、お会いしましょう」

モリィはそう言ってペコリとお辞儀すると飛んでいった。


(モリィは空を飛べるからいいよな)


干し草の上に寝転がった。

あぁ.......女の体は疲れやすい。

それに眠くなりやすい。


ウトウトすると、誰かが接近してくる気配がした。

ディルだった。


「ミナ......」

俺は前髪に触れようとしたディルの手をつかんだ。

「気安くさわるな」

そう言って、パッと上半身を起こした。


ランプの光に照らし出されたディルの顔をみる。

ヤツはじっと俺のことを見つめている。

今にも襲ってきそうだ。


「ミナ、なんだかいい香りがする。

それに肌がツヤツヤじゃないか」

ディルはそう言うと、俺の髪に触れた。


「ちょっ......やめろよ。

風呂に入ったからだ」

「風呂か。いいな。

だが、あまりキレイにすると、男たちに狙われるぞ。

北の塔に可愛い使用人がいるって、もう兵士たちの中で噂になってる」


「......そうなのか?」

大勢の男に襲われたら、確かに女の身体ではうまく戦えないだろう。

暴行をうけるなんて真っ平ごめんだ。


「襲われるのは困る。

お前が追い払え」

俺はディルに頼んだ。


「もちろんだ。

俺の大事なミナに指一本でも触れたら、そいつの目玉をくり抜く」

ディルはそういうと、俺の手の甲にキスをした。


「......そうだ。ディル。

お前に頼みたいことがあるんだけど......」

俺は思い切って、口を開いた。


「男たちを追い払うほかに、何かあるのか」


俺はディルに、城に野菜や果物を供給している業者と話をしたい......と言ってみた。

「いいけど、どいつと話したいんだ?

それこそ、数十人いるよ?」

「明日にでも、話したいヤツの名前をあぶり出す。

ディルはそいつを捕まえて、どこかに閉じ込めてほしいんだ」


モルタナを供給している業者の名前は、帳簿でも見れば、探り出せるだろう。

ディルにその人物を捕まえてもらって、供給を止めさせよう。


「どうしてそんなことしたいんだ?」

ディルは首を傾げている。

「ワケは言えない」


ディルに大蛇のフィリップに対して反乱を起こすことは、話せなかった。

ヤツはこの城の兵士なのだ。


「......いいよ」

ディルが言った。

俺はパッと顔を上げる。

「いいのか!?」


「その代わり、ミナ......。

抱かせてくれ」

ディルがそう言ったので、俺は目を丸くした。



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