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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
大蛇をさがして
32/255

【アリッサ】


あたしは神官に背中を押され、馬車に乗せられた。


「馬車から飛び降りるかもしれないから念のためだよ?」

神官はそういうと、あたしの右手を、馬車の背もたれの木枠にロープでくくりつけた。


「お願い、レンが心配だわ。

レンのところに返して」

震える声で頼んでも、男は冷たい目で微笑むだけだった。


馬車が走り出す。

ガタガタと揺れるので、舌を噛みそうになる。


レンは、たくさん血を流していた。

肩に剣が深く突き刺さっていた。


あぁ......どうしよう。

レンが死んじゃったら。

あたしは、あたしは.......。


「アリッサを失いたくなかった。

言っただろう、アリッサを失えば俺はおかしくなってしまうって」


そう言って笑ったレンの顔を思い出した。


違う。

違うよ。


おかしくなってしまうのは、あたしのほう。

レンのことが心配で気が狂いそう。

彼に会いたい。

彼の無事を確かめたい。


ふいに、頬に冷たさを感じてギョッとする。


いつのまにか神官があたしの頬に触れていたのだ。

「誕生日パーティで自己紹介したと思うけど......俺のことはフィリップと呼ぶんだ」


「......」

フィリップは、あたしの頬をしつこくなでる。

あたしは彼の冷たい手にゾッとして、身をよじって彼から遠ざかろうとした。

でも手を縛られていて、だめだった。


「可哀想に。こんなに薄汚れて」

フィリップがあたしの髪にも触れる。


「触らないで!!」

あたしは大きな声で叫んだ。


「フフフ」

フィリップは微笑むと、あたしのアゴをつかんで自分の方に向かせた。

彼の冷たい青い瞳と目が合う。


「アリッサ。

お前の瞳の奥にはレン・ウォーカーがいるな。

お前はあの男に恋い焦がれている」


「そうよ。

だから触らないで!!」

あたしは自由な方の手で、フィリップの手を振り払った。


「女は恋をするときれいになるんだ。

レン・ウォーカーのお陰で、最高に美しいものが手に入った」

フィリップは構わず、あたしの頬にまた触れた。


「触らないでと言ってるの」

あたしはフィリップの頬を平手で思い切り叩いた。


人を叩くのははじめてだったけど、躊躇しなかった。

この男のせいで、両親は捕らえられ、レンは危ない目にあった。

カノンの街の人々も略奪にあっている。

全部、この男のせいだ。


.......きっとスキをみて、殺してやる。


フィリップはあたしから視線を外さない。

彼に見つめられると、心の中をすべて読まれているように感じる。


「レン・ウォーカーは死んでるだろう。

あれだけの深手をうけているからな。

だが、お前の両親は生かしておいてやる。

お前が大人しく、俺の言う事を聞けば......という条件付きで」


「......っ。

レンは死んでないわ!」

あたしの目から涙がボロボロとこぼれる。


ママの声がして思わずミクモさんの小屋から飛び出してしまった。

レンの言う通り、裏口から逃げ出せばよかった。

そうすれば、いまごろレンは無事だったのに。


「可愛いな......。アリッサ」

フィリップは気味の悪い目で、あたしをじっと見続けていた。


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