表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
大蛇をさがして
29/255

【レン】


「一体どんな取引をしたの?」

アリッサは俺に詰め寄った。


「それは......」

俺は困ってアリッサから目をそらした。


アリッサはなぜか、静かに微笑んだ。


「なんで笑うんだよ?」

俺が聞くと

「そんなに困った顔のレン、初めて見るから。

なんだか、可愛い」

そう言った。


「可愛い!?

バカにするなよ。

俺はアリッサよりも、90歳ちかく年上なんだぞ」


アリッサは俺の言葉を聞いても首をすくめるだけだった。

「レンはあたしと同い年よ」


「なぜそんなことをいう。

実際に俺のほうが長く生きている。

たしかに見た目は同い年くらいだけど」


「見た目だけの話じゃないわ。

確かにレンはいろいろと経験を積んでいる。

でもあたしは、同い年だと思ってる。

だって、レンは精神的にも若いわ。

100歳を超えた老人のようには思えないし.......あたしはレンのことを父親のようには思えない」


アリッサはやけにきっぱりとそう言った。


「俺はアリッサを娘のように大事に思っている」

「それは分かってるけど」

アリッサはため息を付いた。


「とにかくどんな取引をしたのか、教えて欲しい

あたしに関わることなのよ。正直に話して」


アリッサはやけに落ち着いていて、論理的だった。

さっきまで、人買いに連れ去られそうになって、泣いていたくせに。


「俺が言いたいのはこうだ。

大蛇は人間に化けて、アリッサを狙っている」


「狙っているって?殺そうとしてるってこと?」

アリッサが首を傾げながら俺をじっとみる。


「違う。殺そうとしてはいない。

アリッサと......その.......子どもを作ろうとしている」


「子ども!?」

アリッサが大きな声をあげた。


「分かったわ。レン」

「なにが分かったんだ?」

驚いて顔を上げる。


「レンは、取引にあたしを差し出したのね。

あたしの命を永らえさせる代わりに、大蛇にあたしと結婚することを許したのね?」

「......っ。

そんなこと......そんな取り引き、俺がするわけがない」


「それ以外、考えられないじゃないの」

アリッサが呆れたように言う。


思わず椅子から立ち上がった。

「違う、断じて違う。

そんな取り引き、してない」


「じゃあ、どうして?

どうして大蛇はあたしを狙っているの?」


「俺は、大蛇との取り引きを完了させて、生き血を手にした。

大蛇は取り引きのあとに言い出したんだ。

アリッサのことが気に入った......アリッサと子どもをつくりたいって」


「そうなの!?」

「そうだ。ヤツは5年後に、アリッサをもらいに来るって言ってた。

だから俺は大蛇を殺そうと思って、大陸じゅうを探し回っていたんだ」


「だから、レンは闇の森にいなかったのね」

「そうだ」


「取引のことも教えて」

アリッサは追求を諦めなかった。

「なにを差し出したの」


「......」

「レン!!」


言うしか無いだろう。


「俺は、大蛇に自分の魔力を差し出したんだ」


そういうと、アリッサは、スッと息を呑んで、目を見開いた。

「レン......なんてことを」


「そうだ。俺はもう魔力を持ってない。

ただの人間なんだ」


「そんな。

どうしてそんなこと」


アリッサは口に手を当てて、驚いている。


「あたしのために?あたしを救うためにしたのね?

レン」

アリッサは椅子から立ち上がると、俺のそばに近づいてきた。

そしてギュッと抱きしめた。


「レンはバカよ。

どうしてそこまでしたの」

「アリッサを失いたくなかった。

言っただろう、アリッサを失えば俺はおかしくなってしまうって」


「レン」

アリッサはまた泣き出した。


「泣かないで。

俺が勝手にしたことだ」

涙を指でぬぐうと、アリッサはフルフルと頭を横に振った。


「魔力は取り戻せる......そうでしょう」


「えっ?......取り戻せる?」

びっくりして彼女の顔を見つめ返した。


「レン......書物を最後まで読んでないのね?」

「だって、アリッサが死の淵にいたんだ。

ゆっくり読書なんてしてられなかった」


「書物の最後の方に書いてあったわ。

大蛇を殺せば、失ったものを取り戻せるって。

大蛇を殺せばいいのよ」


そのときだった。

馬のいななき、ひづめの音が外から聞こえてきた。

それも複数。


「アリッサ、身を隠して」

俺はあわてて窓の外を見る。


外に視線を走らせる。

兵士がいた。

タダール兵が数十人、小屋を取り囲んでいたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ