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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
大蛇をさがして
27/255

【レン】


翌朝。


「あたしも、レンと一緒にフレスコの街に行く」

出かけようとする俺を、アリッサが引き止めた。

「アリッサはここにいたほうが良い」


しまった。

彼女が寝ている間に出かけてしまうべきだった。

アリッサがついてくれば、情報収集に集中できない。


「レンの言うとおりだ。

アリッサ。

男の格好をしてるけど、胸は出てるし、尻は丸い。

お前は女だと丸わかりだ」

ミクモが冷たい声でアリッサに言う。


「街には男みたいな格好をしている女性もいるわ」

アリッサはミクモに反論した。


ミクモはアリッサに近づくと、彼女のアゴをくいっと持ち上げる。

「日に焼けてない、染みひとつない真っ白な肌。

生まれたときから厳しく躾けられた美しい身のこなし。

それにその均整の取れた体つき。

10分もたたないうちに、人買いの変態に目をつけられて、お前は売り飛ばされるぞ」


「ミクモ。

アリッサにさわるな」

アリッサに触れるミクモの手を振り払った。


「だがミクモの言っていることは、正しい。

アリッサは男の格好をしていても目立つ。

なんといったらいいか......街の人間とは気品が違うんだ。

街につれていけば、俺はアリッサを守りながら情報収集しなければならなくなる」


「でも」


「いい子で待っていて。

甘いものでも買ってきてあげるから」

アリッサの頭をぽんぽんと叩く。

「......子ども扱いしないで」

アリッサが頬を膨らました。


---------------------------



フレスコの街で酒を奢りながら、商人たちから話を聞き出す。

得た情報は、ミクモから聞かされていたのと似たりよったりだった。


どの商人も口をそろえて言うのは、

「数年前にとつぜん現れた神官がタダール城を事実上のっとっている」

というもの。


今回のベルナルド領への侵略も、おそらくその神官が押し進めているんじゃないか。

そう話す者が多かった。


(これ以上の情報は無さそうだな。

置いてきたアリッサが心配だし。

一旦、戻るか)

そう思って酒場から出たときだった。


酒場のそとに人だかりができていた。


「あんた、その子、嫌がってるじゃないの。

離してやんなよ」

老婆のしゃがれた声がする。

それに答えるのは、男のダミ声だった。

「いや、こいつは高く売れそうだ。

きっとタダールに侵略されたカノンの街から逃げてきた娘だ。

行くあてもない、そうだろ?」


「離して!レン、レンを探しに来たの」


俺はダッシュで人だかりの方へと走った。


男に腕をつかまれて、連れて行かれそうになっているのはアリッサだった。


「アリッサ!!なにしてる」

「レン。ごめんなさい」


「なんだ、お前の女か?」

大男はつかんでいたアリッサの腕を離す。


「よくもアリッサに乱暴したな」

俺は男につかつかと近づくと、顔面にパンチした。


男は後ろによろけて尻餅をつく。


「なんだよ......。殴ることねえじゃねえか。

カノンの街から来た難民かと思ったんだよ。

働く場所を斡旋してやろうと思ってよ」


「女の売り買いをする、クズ野郎が。失せろ」

俺は男を怒鳴りつけて、剣をぬく仕草をした。

ビール腹でブヨブヨに太った男は、慌てて走り去った。


アリッサが俺の方へと駆け寄ってきて抱きついた。

「ごめんなさい。......ほんとにごめんなさい」


「アリッサ!!

俺が街から立ち去ったあとだったら、お前は売り飛ばされていた。

もう二度と会えない可能性だってあった」

俺は思わずアリッサに向かって怒鳴ってしまう。


「......っ......」

アリッサは下唇を噛みしめると、涙を浮かべた。


「アリッサが大事なんだ。

失ったら俺はおかしくなってしまう」

彼女をぎゅっと抱きしめる。

「レン......」


危なかった。

売り飛ばされたりしたらアリッサはきっと、ひどい目に合う。

考えただけでゾッとする。


さっきのクズ野郎の息の根を止めておくべきだった。

だが街には、人身売買でメシをくってるような輩が大勢いる。

一人殺したくらいじゃ、けっして安心できない。


「アリッサ。

アリッサはもう子どもじゃない。

男にとっては......その......魅力的にうつるんだよ?」


「でも......でもレンにとっては子どもなんだよね?」

アリッサは涙をボロボロ流しながら俺を見上げていた。



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