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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【レン】リックを守るために


ユーシンが、街で馬車を調達してきてくれた。

俺たちは早速、馬車に乗りこみ帰路につくことにした。

早く帰ってリックを休ませてあげたい!


馬車に乗り込もうとすると、エレナが立ち止まった。

「どうした?エレナは乗らないのか」

「私はここでお別れです。

ディルさまとニナさまのもとへ戻ります」


「それなら、途中まで一緒に行こう」

と声を掛けたが

「街の厩舎に預けてある、自分の愛馬に乗って帰りますので」

とニッコリと笑った。


「エレナ、いろいろとありがとな。

ディルによろしく伝えてほしい」

ベルナルドにもまた遊びに来てくれ」


「そうよ、また会いに来てね。

そのときは、本来のあたしの姿をお見せできるはずよ」

アリッサがエレナにそう言った。


エレナは馬車に乗り込んだ俺たちにむかって、ずっと手を振っていた。


--------------------------------


(はやく、元のアリッサの姿に戻ってほしい......)

俺は、ヒゲの大男の顔をそっと盗み見た。


馬車の中で......アリッサは俺により掛かると、うたた寝し始めた。

リックも俺の腕のなかでスヤスヤと眠っている。


(あぁ、幸せだ......家族が全員、無事にそろった)


ふいに、肩に寄りかかって寝息を立てているアリッサの重みが「フッ」と軽くなった。

視線を向けると、ヒゲの大男は、アリッサの姿に戻っていた。

長いブロンドの髪に透き通るような白い肌。

まつ毛をふせて、スースーと寝息を立てている。


(よかった......。アリッサが大男のまま元に戻らなかったら、どうしようかと思っていた......)

俺はアリッサの髪をそっとなでると、安堵のため息を付いたのだった。


気がつくと、俺も......もとの「レン」の姿に戻っていた。


これでいつもどおりの生活に戻れる......?

幸せな生活が戻ってくる?


腕のなかでぐっすりと眠るリックをみる。


(いや......そうはいかないだろう。

リックが安全に生きられる道を探さないといけない。

そうしないと、安心できない)


------------------------------


数週間後。


ある晴れた日の午後......。


「リック!こっちにおいで」

「パーパ」


リックはよちよちと歩きながら、俺の方へと向かってくる。

だいぶ、長く歩けるようになってきた。

俺はリックを抱きしめようと両手を広げた。


「さぁ、ランチにしましょう」

アリッサが、バスケットからパンやフルーツを取り出すとそう言った。


無事にベルナルド領に戻ってきた俺たちは、2,3日は身体を休めてゆっくりと過ごした。

それから、徐々に元の生活に戻っていった。


俺は今までどおり……カノンの街の商人たちからの陳情を聞いたり、宗教行事に参加したり。

アリッサは、諸侯の奥さまとの交流に努めていた。


リックにはユーシンを初めとする3人の護衛を付けた。

どの護衛も信頼のできる人物だった。


その日......。


リックを連れて家族3人で、ベルナルド領のはずれ......「見晴らしの草原」にピクニックに来た。

「見晴らしの草原」というのは、俺とアリッサでつけた名前。

ここは俺たちのお気に入りの場所だった。


「パーパ。たべゆ」

リックはパンを齧りながら、俺にもパンを手渡した。

「ありがとう!リックは優しいんだな」

リックから手渡されたパンをモグモグと食べる。


太陽をたくさんあびて、遊び回ったリックはご飯を食べ終わったあと、ウトウトとしだした。


-----------------------------------


リックをカゴの中に寝かせると、アリッサは俺のほうをみた。

俺もアリッサに向かってうなずく。


「レン......。あたし、ずっと考えていたのだけど」

アリッサが口を開いた。


「このままでは、リックの安全が保証できない」

「そうだな……分かっている」


アリッサの言う通りだった。

屋敷には入れ替わり立ち替わり、来客が来る。


兵士に「スキ」が生まれれば、リックが再びさらわれることもあるだろう。


さらにいえば.......。


リックが大きくなったらどうする?


ずっと屋敷に閉じ込めておくわけにもいかない。

リックにだって、外に出ていろいろ経験する権利がある。


アリッサは不安そうに俺の顔を見ていた。



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