【アリッサ】レンにあやまる
「襲うだなんて、人聞きが悪いわ」
大きな目でこちらを睨みつけるレン。
白い肌に、きれいな形の唇。
整った体つき。
(すごく、可愛い......)
レンはまだ身体が快復途中で、力が入らないみたいだった。
「おい!!リックはどこだ!?
てめぇ、リックになにかしたら......」
「リックは隣の部屋で寝ているわ。
レン......落ち着いて聞いてね」
あたしは自分がアリッサであることをレンに言わなければと思った。
正直、言いたくなかった。
だって......。
愛するレンに、知られるのが恥ずかしかった。
「お前はどうして俺の名前を知ってるんだ?!」
レンはややパニックに陥っていた。
「落ち着いてったら」
レンの細い肩に手をかけた。
「さ、さわるな」
レンはベッドから出ていこうとしている。
「だめよ!まだ寝てないと。何処へ行くつもり?」
「リックを連れて屋敷に帰るんだ!!」
「もう少し体を休めないと」
あたしは、レンの腕を引っ張ると、ベッドの上に押さえつけた。
レンの上に馬乗りになって、その瞳をじっと見つめる。
「お願いだから、暴れないで」
「お前は、誰なんだ.....。どうしてそんな女みたいな口調なんだよ?」
「あなただって、そんな可愛らしい見た目なのに、男みたいに喋ってるじゃない!」
あたしは、レンの言い草に呆れた。
(ヒゲ大男の中身が、アリッサだと知ったらレンはどんな顔をするだろう......)
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レンの両手を押さえつけて、ベッドに押し倒したまま、あたしは言った。
自分の正体を。
あたしがアリッサであることを。
レンは目を丸くすると、あたしをじっと見た。
そして
「.....プッ!!」
と吹き出した。
「アハハハ!!!」
大笑いする。
「ちょっと?笑うこと無いでしょ」
「下手な嘘を付くな。
お前がアリッサであるはずがない」
レンは、アハハハと涙を流して笑いながらそう言った。
「俺の上から降りろ!!
リックに会いたい」
「やだ。まだ信じないの?」
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ベルナルドの屋敷の、レンの執務室。
そこにあった革の鞄から「異性に変身できる錠剤」を見つけたこと。
それを飲んで、ユーシンと共にリックを探し回ったこと。
カノンの街で、ノーザンスカイにリックを売り渡した男を見つけたこと。
そんなことをレンに話した。
「.......」
レンは目を丸くして黙り込んでいる。
「う、うそだ」
「ほんとよ?
あたしがアリッサであることの、何よりの証拠はルタナイトのネックレスを持っていたことでしょう?」
「た、確かにそうだが」
レンは考え込んでいる。
「もうじきに、元の姿に戻るんじゃないかしら」
あたしはレンの......ぷっくりとふくらんだピンク色の唇にキスしたくてたまらなくなっていた。
(やだわ......。
レンがこんなに可愛いと思わなかった)
あたしは思わずレンの唇にそっとキスをする。
「な、なにすんだよ!!」
レンは、すぐに顔を背けると、またジタバタと暴れ出した。
「だって、あまりにも可愛いんだもの」
「ア、アリッサ......。
もとの性別に戻ってからにして欲しいんだけど」
レンが真っ赤な顔で言った。
ちょっと怒ってるみたいで、そこがまた、可愛い。
「なんだか変な気分なの。レンのこと......可愛くて」
「やめろ......んっ......」
あたしはまた、レンにキスをした。
「アリッサ、ほんとにやめろって。
なんだか、おかしいぞ」
「ねえ、レン.......」
あたしはレンの髪をなでながら、言った。
「あたしはあなたに謝らないといけないわ......。
ほんとうに、ごめんなさい」
「なんでだよ?無理やりキスしたからか?」
レンが少し不機嫌な顔でこちらをにらむ。
「うふふ、違うわ、好きなんだもの。
キスは良いでしょう?」
またレンの髪をなでた。
「あたしは、あなたのリックへの愛を疑っていた。
バカだったわ、後悔してる。
あなたはリックを心から愛してる。
リックを助けようとして、命まで投げ出したんだもの。
今まで……ほんとうにごめんなさい」
レンはあたしの目をじっと見ている。
「アリッサ......」
レンもあたしの顔に手を伸ばす。
「いいんだ。分かってくれれば」
そう言って、彼はあたしのヒゲを撫でた。




