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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【アリッサ】男の中の男


あぁ......。

一時はどうなるかと思ったけど。


よかった。

リックをぎゅっと抱きしめた。

あたしの大事な子!

もう二度と離さない!!


ルタナイトのペンダントは失ってしまったけど.......。

そんなのどうでもいい。


レンも......よかった。

敵の剣で深く傷つけられたレン。

あたしは、敵の顔をひどく殴りつけたけど.......まだ、怒りが収まらないわ。


あいつがリックを誘拐した黒幕のボスで、レンのことまで傷つけた!

許せない。

もっと殴ってやればよかった。


---------------------------


あたしと.......それにエレナ。

レンと、リック.....。

4人は、アクティスの町外れにある小さな宿に身を隠していた。

エレナはあたしが、レンの妻だということをなかなか信じてくれなかった。

でも、何度も説明して.......ようやく分かってくれたみたい。


ユーシンは、アクティスの街で馬車を買い取るために出かけている。

馬車と馬が手に入れば、あたしたちはベルナルド領へ一直線に戻るつもりだった。


--------------------------------


「さきほどは失礼を......。

どうかお許しを」


エレナがあたしの前でひれ伏していた。

「頭を上げて」

と何度言っても、エレナは姿勢を崩さない。


宿屋の古びた一室。

小さな窓にミシミシ言う木の床。


ベッドと書き物机だけの簡素な部屋だった。


大きな姿見が部屋にあった。

あたしは自分の姿を鏡に映す。


そこに映ったのは、男の中の男......。

濃いヒゲに覆われた顔。

がっしりした肩に腕。

それに丸太のような太もも。


(やだ......。あたしったら、男性化すると、こんな姿だったのね)

恥ずかしくなって身をくねらせた。

でもヒゲの大男の姿と、あたしのナヨナヨした動作がミスマッチで余計におかしい。


「エレナ。

こ、こんな見た目なんだもの、あなたが、あたしのことを敵だと勘違いしたのも無理はないわ」


「し、しかし......ウォーカー殿の奥さまに剣を向けるなど.......

あぁ、私は命を絶ってお詫びするしか........」


「やめてちょうだい!

もともと、あなたが王宮へむかうレンを引き止めてくださったおかげもあるのよ?」


あたしは、ベッドでスヤスヤと眠るリックに視線を移した。

たっぷりとミルクを与えたので、幸せそうに眠っている。


「あたし、隣の部屋のレンの様子をみてくるわ。

リックをしっかりと見張っていてね」


エレナにそう声をかけるとエレナは

「.....ハッ」と言って、敬礼した。


------------------------------------


眠っているかもしれない......そう思って、ノックをせずにドアを開ける。


思った通り、レンはベッドの上でぐっすり眠っていた。

(レンもまだ、女性化したまま......ミナの姿のままだわ)


サラサラの長い黒髪がベッドの上にきれいに広がっている。

目を閉じて、眠っている様子は愛らしかった。


(レン、本当に良かった)


ここに運び込んだときに、あたしはレンの身体を調べた。

敵に斬られた傷は、キレイに治っていた。

あんなに血が流れたのに......身体には切り傷ひとつ残っていなかったのだ。


大蛇の生き血......。

間違いなく、リックに受け継がれてしまったのだわ。


あたしもレンも、大蛇の生き血のお陰で一度、生き延びた。

一生に一度だけ使える力なので、もう、あたしもレンも今後は寿命を伸ばすことはできない。

もちろん、リックを傷つけてまで、寿命を伸ばそうなんて.....そもそも、思わないけれど。


でも......。


一生に一度だけだとしても。

その力を「欲しい」と思う人間はたくさんいるに違いない。

女王の妹のイリーナさまだって......。


「う......アリッサ......」

レンが寝返りをうちながら、あたしの名前を呼んだ。


「レン!」

あたしはレンの寝ているベッドサイドに駆け寄る。

「レン、あたしはここよ」


レンはぱちりと目を覚ました。

大きな黒い瞳がうつくしい。


「!?」

レンはベッドから上半身を起こすと、のけぞった。

「ヒゲの大男!?

何をしてる?俺を襲う気か!?」

そういうと、ベッドの上であとずさりした。



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