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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【レン】エレナとユーシンと


【レン(ミナ)】


リックの血液が体内に入ったとたん、鋭い痛みが体中をおそった。


「うぅ!!うぉおおおお!!」

俺は、痛みに叫び声をあげる。


「レン!!レン!!大丈夫!?

いやよ、死なないで」

なぜかヒゲの大男が泣き叫んでいる。


「だ、だいじょうぶ......だ」

ヒゲの大男がうるさいので、俺はヤツにそう言った。


俺はどうやら、死なないようだ。


この痛みは「死」を意味しているように思えない。

体中の細胞が目覚め、再び活性化している気がする。


急激な治癒力に目覚めた身体は、痛みを生じながら組織を修復している......。


「くっ......うぅう」

(大蛇の生き血......リックの血には、ほんとうに力があるんだな)


自分が死なずに済む......というのは、喜ばしいことだったが......。


リックの力が本物であれば、ますます周囲の悪辣な人間どもに、リックは狙われ続けるだろう。

目の前で、目をキラキラさせて俺をじっと見守る小さな子。

その行く末が心配でならなかった。


「リック」

血まみれの手で俺はリックのふわふわの銀髪をそっと撫でた。


「ウォーカー殿!?」

背後から叫び声。

「た、大変だ」

目線を動かすと、エレナが駆け寄ってくるのが見えた。


エレナはオークション会場で落札された俺と引き離されてしまっていた。

「エレナ……助けに来るのが遅いぞ」


「お前、何者!?」

エレナは大男に向かって剣をむける。

俺が大男に傷つけられたと思っているのだろう。


「ちょっと、今度はなに?あなたは誰?」

大男は剣を向けるエレナにギョッとして、のけぞった。


そこに

「奥さま!!」

と言う叫び声。


中年の男が、やはり遠くから駆け寄ってきた。

「探しましたぞ!!

オークション会場で火の手が上がったとか」


やってきた男の顔を見て、俺は驚いた。


(ユーシン!?)


ベルナルド家の兵士で隊長を務める「ユーシン」ではないか.......。

なぜユーシンがここに......。


混乱する中、エレナとユーシンが剣を向け合うのが見えた。


「おぬし!奥さまに剣を向けるな!

私と戦え」

とユーシン。


「お前こそ、何者だ。

わたしは、エレナ・サウスフィールドだ。

ディル・ブラウン様をあるじとしている!!

ディルさまは、ここにおられるレン•ウォーカー殿の義理の弟ぎみだ!」


「なんだと!?」

ユーシンはあんぐりと口を開ける。


「レン・ウォーカーさまは、私のあるじだ。

ウォーカーさまが何処にいるというのだ!?」

ユーシンが叫ぶ。


エレナは倒れている俺を指差す。

「あのお方だ!!」


「はぁ!?なんだと!?

そこに倒れているのは女子ではないか」


「もうやめて!!

戦いはうんざりよ。

早く、レンを連れてここから逃げましょう!?」


ヒゲの大男が叫んだ。


--------------------------------------


「あたしがレンを運ぶわ。

ユーシンは、リックを抱いて!!」

ヒゲの大男が言う。


「だめだ、ウォーカー殿は私が運ぶ」

エレナが叫んだ。

「あなたより、あたしのほうが力持ちよ?」


大男とエレナは言い争いをしていたが、やがてエレナが折れた。

「ウォーカー殿を傷つければ、お前の急所を切り落としてくれるわ」

エレナはヒゲの大男に向かって、そう怒鳴りつけた。


-------------------------------


俺はヒゲの大男に抱き上げられた。


そして、リックを抱くユーシン、それにエレナ。

そして俺を抱くヒゲの大男は、その場を急ぎ足で離れた。


アイヒンの仲間が押し寄せてきたら勝ち目はないので、その場から離れるのは、賢明な選択だった。


-----------------------------


人々が集まる広場付近で、どよめきが起こっていた。


「おぉ!!あの老人は!!」

「確かに、舞台の上で腹を切られていたはずなのに......」


フラフラで痩せていた病の老人......。

舞台の上で、腹を切られて半殺しにされていた老人が、人々の中心にいた。


老人を中心に人だかりができており、俺たちは目立たずに済んだ。


人々の声が聞こえてきた。

「やはり大蛇の子どもの生き血は、本物だったんだな!!」

「そう言えば、あの子どもは何処に行ったのだ?」

「火事のどさくさで、分からなくなった」

「オークションの運営者が、連れて逃げただろう」


などと口々に言い合っている。


ユーシンはリックをマントの下にスッと隠した。

いまや、リックを狙うものは、数え切れない状態になってしまったのだ。



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