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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【レン】はじめてパパと言ってくれる


それまでアイヒンの攻撃を怖がって腰を抜かし、怯えきっていたヒゲの大男。

その臆病なヒゲの大男が、豹変したようにアイヒンに飛びかかった。


アイヒンは、まさか大男が豹変するとは思ってもおらず、不意をつかれてしまったようだ。

ヤツはヒゲの大男に激しく体当りされ、地面に押し倒されてしまう。


カラン!!


アイヒンの持っていた剣が、ヤツの手から離れる。


ヒゲの大男は、アイヒンの上に馬乗りになると

「許せない!許せない!!」

と叫びながら、アイヒンの顔をめちゃくちゃに殴り始めた。


ヒゲの大男は涙をボロボロと流している。


俺は、地べたに横たわったままボンヤリとその様子を見ていた。


「まー。まー」

リックがよちよちと、ヒゲの大男の方へ近づいていくのが見えた。


「まーまー」

「リック!!!」


ヒゲの大男は叫ぶと、馬乗りになっていたアイヒンの上から降りた。

そしてリックを抱き上げる。


アイヒンの顔はぐちゃぐちゃで、ピクピクと痙攣している。

やつはもう、戦う気力はないだろう......。


大男の不思議な馬鹿力を眺めつつ、俺は最後の力を振り絞ってリックのほうへと手を伸ばした。


「リ.......リック」


ヒゲの大男はリックをしっかりと抱いたまま、俺の方へと駆け寄ってきた。


「レン!!レン、いやよ、死なないで」

「う......」


(レン......??こいつ俺の名を知ってる?)

出血がひどく、身体が寒くなってきているのを感じる。

あと数分で、意識を失うだろう......。


そのときだった。


「わぁああああん」

リックが大泣きして、ヒゲの大男の腕のなかで暴れ出した。


「ふええええん」

「リ、リック......」

あまりにも暴れるので、ヒゲの大男は思わずリックを地べたに下ろす。


リックは地べたに降りると、俺の目をじっと見た。


「リック」

リックの目線と俺の目線がしっかりと交わる。


リックは

「パ......パーパ」

と俺を見て言った。


「パーパ、パーパ」

そう言うと、俺の頬を小さな手で撫でる。


驚いた。

ベルナルドの屋敷で......。

あれだけ「パパ」だよ。

と教えても「パパ」って、言えなかったのに。


とうとう言えるようになったんだね。


「リック、そうだよ、パパだ。

分かるんだね......」

俺は嬉しくなった。


リックがはじめて俺のことを......パパと呼んでくれた。


「パーパ」

そのとき......驚くべきことが起こった。


リックが自分の腕の傷を引っ張った。

そして傷を広げると、血をしたたらせる。


「リック......」

ヒゲの大男も驚いてその様子を見ている。


リックは

「パーパ」

と言うと、自分の腕から流れ出る血を、俺の口もとへと持っていった。


(この子は、知ってるのか......自分の能力を......?)


リックの腕から落ちる血液が......俺の口の中に落ちた。


その瞬間、心臓がつよく波打ち、痛みが全身を襲い始めた。



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