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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【レン】アイヒンの登場


(なんなんだ、あのヒゲ面の大男は)


「許さないんだから」

と叫んで舞台の上にあがると、大暴れしだした!


俺はヤツの動きに度肝をぬかれていた。


(そうか.......!!

あいつもリックの能力を狙っているに違いない!!)


隣りにいるメガネ男は、あっけにとられてボーゼンと舞台を見つめている。


客席にいる人間は、ほとんど戦いを知らない貴族や金持ちばかりだ。

だが、異変に気づいた傭兵や富豪の護衛が、もうすぐ駆けつけるだろう。


手首をしばる縄を、懸命に椅子の角にこすりつけた。


(やった!!縄がほどけた!!!)


両手が自由になった俺は、メガネ男に気づかれないように胸元から魔石と可燃性オイルを取り出す。

そして素早く席を立って逃げ出した。

「ど、何処へ行く!?」

メガネ男の上ずった声が、背後から聞こえた。


-----------------------


オイルのビンを舞台の幕に投げつけ、魔石を放り投げる。

あっという間に舞台の幕から激しい炎がメラメラと燃え上がった。


俺は大声で叫んだ。

「火事だ!!逃げろ!!!」


客席の呆然としていた貴族たちが一斉に立ち上がる。


「わぁああああ」

「ひぃいいいい」


密閉された極秘オークション会場は、人の出入りを制限するために出入り口が二箇所しか無い。

貴族たちはそこに殺到し、渋滞がおきた。


出品者やオークションサイドの運営たちは、裏手にある出入り口に殺到する。


(リックは......)

慌てて視線を走らせると、舞台の上で大男がリックを抱きしめて座り込んでいる。


俺は、舞台の上に駆け足で上がる。

自分が女に変化していることも忘れ、俺はヒゲの大男にむかって叫んだ。


「てめえ!!リックを返せ。

リックは俺の子だ!!!」


「か、火事だわ!!逃げなきゃ。

この火は、あなたが起こしたの?」

大男は震えながらリックをあやしている。

リックはなぜか、「キャキャ」と笑いながら、嬉しそうに大男の顔を見上げていた。


「あ、あぶー」

リックは俺の方に手を伸ばす。


「とにかくリックをよこすんだ!」

俺は大男の胸ぐらをつかむと、なぐろうとした。


「ちょっと、乱暴は止めてよね。

いいわ。あなたはリックを抱いてちょうだい。

早くここから逃げましょう」


驚いたことに、大男はすんなりと俺の腕にリックを渡した。


(なんなんだ、この男は......)


出品者用の裏口に向かいながら、男を盗み見た。

馬鹿力の持ち主らしいが、動きはスキだらけで、ナヨナヨしている。

そこまで、警戒しなくても、こいつに殺られる心配はなさそうだな。


----------------------------------


はぁっ、はぁっ。


人混みに紛れ、なんとか魚市場パオラマの外に出た。

逃げおおせた人々が集まる魚市場の外の広場にはいかず、倉庫の影にかくれた。


「助かったわ、よかった!!リック。

腕の傷は大丈夫かしら」

ヒゲの大男が、俺が抱くリックの方に手を伸ばそうとする。

俺は慌ててリックを男から遠ざけた。


「お前はなんなんだ?」

男に聞く。

「えっ、ああそうよね、あたしは......」

男がなにかを言おうとしたとき、背後から野太い声がした。


「大蛇の子どもをよこせ!!

そいつぁ、俺のもんだ......」


俺とヒゲの大男は、声のしたほうへ振り返った。


「お前は......」

そこにいたのは、ノーザンスカイのリーダー......アイヒンだった。


首の側面から頬にかけて、古代語の呪文と蓮の描かれたノーザンスカイを表すタトゥー。

痩せているが筋肉質で、その眼光は鋭い。


「お前たち、見慣れないツラだな......」

アイヒンはハハハと笑う。


そして俺のことをじっと見つめると、指さした。


「驚いたことに、女!......お前は力は弱いが戦いに長けているようにみえる。

その目と身のこなしを見れば分かる。

お前は幾度もの死線を乗り越えてきた人間だ」


「ヒゲヅラの大男!!」

ヤツは、次に大男を指さした。


「お前は......なんなんだ......。

力自慢のようだが......まるで女のような身のこなしだ......ワケがわからん」


「どのみち、ふたりとも俺の敵ではないってことよ!!」

アイヒンはそう叫ぶと、剣を抜いて突進してきた。



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