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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
240/255

【レン】リックを探して


【レン】


舞台の中央へゆっくりと歩いていく。

薄暗いバックステージから、光の強い表舞台へと急に出たため、目がくらんだ。


客席の富豪たちに見つめられながら、俺は心のなかで悪態をついていた。


(くそっ、運営のやつ、こんなスケスケの衣装を着せやがって)


「お前の格好だが。

薄汚いシャツにズボンでは買い手がつかないぞ。

この衣装を着ろ」

と言われ、娼婦のような衣装に着替えさせられた。


俺はこのオークション最終日のトップバッターとして選ばれた。


オークション運営の人間によると

「眠くなってきている大富豪たちを起こすのに、お前の魔術はちょうどいい」

ということだった。


客席には、毛皮や宝石を身にまとった金持ちの男たちが、俺のことをじっとみつめていた。

(ふん。皆、いやらしい目つきしてる)

女に変化しているせいか男たちの目を見ると、ゾッとして身の毛がよだった。


(俺もアリッサをあんな目で見てるんだろうか......いや、俺は違うぞ)

そんな事を考えながら、舞台の中央で片足を少し斜め前に出した。

深く切れ目の入ったスリットから、白い足をのぞかせて男たちの視線をわざと集める。


「おお......。もっと見せろ」

というヤジが客席から飛んできた。


だが

「可愛い女だが......なにか魔術が使えるのか?」

「美しい女ならいくらでも手に入るからな」

そんな下品なヤジも飛んできた。


舞台のスソにいる運営が、俺の方に「やれ」という合図を目線で送ってきた。


(やるか.....)


あらかじめ、舞台の床に敷かれていた鉄製の桶......。

俺はそのなかに、胸元から出した小瓶のオイルを一滴垂らした。

さらに火を起こす魔石をそのなかに投げ入れる。


魔石もオイルも、あらかじめ運営に渡されていたものだった。


やがて鉄製の桶の中で、激しく炎が燃え上がりはじめた。


「なんなんだ?」

客席がザワザワとする。


燃え盛る炎のなかに、司会者がクマのぬいぐるみを投げ入れた。

ぬいぐるみは炎の中であっけなく燃え尽きていく。


「御覧ください!

勢いのある炎です!!

布製のぬいぐるみはあっという間に焼け焦げてしまいました」

司会者が、鉄バサミで炎の中から焼け焦げたぬいぐるみの残骸を取り出す。


「だからどうした?」

観客たちは、また野次を飛ばす。


「この炎の中に、人間が入ったらどうなるでしょう?」

司会者が言った。


俺はゆっくりと炎の中へと足を踏み入れようとした。


「やめてぇ!」

突然、バックステージのほうから叫び声がした。


俺は驚いて目を向ける。


そこには、ヒゲ面の大男が涙目になって叫んでいた。

「死んじゃうわ、やめてぇ!」


(なんだ、あいつは……。気持ち悪い男だな)


俺は男の叫び声を無視して、炎が燃え盛る鉄製の桶の中へと足を踏み入れる。


「いやぁああ」

大男の叫び声。

客席からも、いくつかの悲鳴、それに息を呑むような音が聞こえてくる。


(俺は炎に燃やされることはない……。

そのことに気づいたのは、王宮でイリーナさまを救ったときのことだった……)


炎の熱さを一瞬、感じだがそれはすぐに収まった。


自分の体の周囲に見えないバリアが張られているような……そんな感覚。

桶の中からこっそりと、火を起こす魔石を拾い上げると胸元に隠す。

(後々、この魔石をつかって攻撃を仕掛けることができるからな......)


俺は炎の中で充分な時間をすごしたあと、外に出た。

体も衣服も燃えることなく無事だった。


観客たちは、

「おぉ」

「どうなっているんだ?」

「珍しい魔力だ。炎に耐性があるんだな?」

とどよめいたあと、激しく拍手を送った。


「客人を呼んでのパーティの見世物にいかがでしょうか」

「炎につつまれても火傷一つしない、秘術をもった女です」


「100セラから」

パラド王国の通貨単位が叫ばれた。


「100セラからはじまりだ。

ほかにいないか?」

オークション司会者が,客席に問いかける。

「200だ!」


(リックはどこにいるんだ)

俺は舞台の上から、会場内を隅々まで見渡していた。


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